フレイニャのブログ

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アルスターの猟犬(16)

「アルスターの猟犬(15)」の続き,第7章の最後です。

全訳を始める前にちょっと蘊蓄話を。以前FF14黒魔道士の「コラプス」は英語版では「スケイズ(scathe)」と言い,「傷つける,害をなす」という意味で北欧神話の「スカディ(スカジ,スカージ)」と同根であるという話をしましたが,「スカディ」はまた「影,闇」の意味もあり,「影(shadow)」を意味する「スカアハ(スカー)」とも同根なんです。「酩酊」を意味する「メイヴ」と「マダ(インド神話」(とおそらく蜂蜜酒の「ミード」)が同根というのも面白かったですが,「スカディ」と「スカアハ」は関係しているんですね。

 

For a year and a day he remained with Scáth, and learned all that she could teach him, and he became the most renowned warrior of his time, or of any other time; and because Shadow loved his skill and his strength and comeliness, she taught him the feat of the Body Spear, which she had never taught to any before. And she gave the spear into his own keeping. When Ferdia saw the spear, he said, “O Scáth, teach me also this feat, for the day will come when I shall have need of it.” But she would not, for she wished to make Cuchulain invincible, and that he should have one feat that was not known to any but himself.

1年と1日の間,彼はスカアハの許に留まり,彼女が彼に教え得る全てを学んだ。そして彼は当代,いや他のどの時代でも最も有名な戦士になった。そしてシャドウは彼の技能と膂力と美しさを大変気に入ったので,彼にゲイボルグの技を授けた。それまで誰にも授けなかったものだった。そして彼女は槍も彼に保管させた。フェルディアが槍を見ると,言った。「スカアハよ,私にもこの技をお教え下さい。それが必要となる日が来るからです」 しかし彼女は教えようとはしなかった。というのも彼女はクー・フーリンを不敗無敵にしたかったからで,彼しか知らない技を1つ,彼に持たせたかったからだ。

renownは「名声」,renownedは「有名な」です。恐らくnoun /naʊn/「名詞」と関係があり,「繰り返し(re)名前(noun)を言われる」ということでしょう。なお,renounceは「放棄する,捨てる」で,announce「発表する,表明する」の逆と理解して下さい。

・このorは「いやむしろ」と言い直すものです。「当代の,いやむしろどの時代でも」です。

Shadow「影」はスカー,スカアハのことです。

comelinessはcomely「魅力的な,美しい」の名詞形です。

the Body Spearは前回言いましたがゲイボルグのことです。スカアハがクー・フーリンだけに授けたという事実から間違いないでしょう。

the day will come when S will V「SがVする日が来るでしょう」という教科書的な表現が出てきて嬉しいです。I shallとなっていますが,1人称主語ならshall=willです(I shall return. = I will return. 2〜3人称の場合はshall≠will)

invincibleは「無敵の,不屈の」です。×vincibleは特に無いようですね。

 

And she gave him the Helmet of Invisibility, which Manannan mac Lir, the ocean god, brought out of Fairy-land; and the mantle of Invisibility made of the precious fleeces from the land of the Immortals, even from the Kingdom of Clear Shining; and she gave him his glorious shield, with knobs of gold, and chased all round with carvings of animals, and the combats of fighting men, and the sea-wars of the gods. And he became companion and arms-bearer to Ferdia, because he was the younger and because they loved each other, and all the time he was with Scáth they went together into every danger, and every peril, and they took journeys together, and saw strange sights. And because the twain loved each other, they swore that never in life would either hurt or wound the other, or do combat or quarrel with the other, but that                                       [65] for ever and for ever they twain would aid and support each other in war and in combat, and in all the pleasant loving ways of peace.

またシャドウは彼に透明の兜を与えた。それは海神マナナーン・マク・リルが妖精の国から持ち出したものだ。また不死者の国や,快晴の王国のようなところで取れる貴重なフリースでできた透明のマントも与えた。また彼女は彼に輝く盾も与えた。金のこぶがたくさんついており,一周に渡って動物達や戦士の戦い,神々の海戦の浮き彫りが施されていた。そして彼は勇者となりフェルディアの槍持になった。彼のほうが年下で,2人は敬愛しあっていたからだ。そして彼がスカアハと共にいる時はいつも2人は共に行動し,あらゆる危険,あらゆる危機に飛び込んだ。そして2人は共に旅をし,不思議な光景を見物した。そして2人は共に敬愛しあっていたので,生涯において決して互いを傷つけず,負傷させず,互いに戦わず,喧嘩せず,いつまでもいつまでも2人は戦争や戦闘で互いを助け,あらゆる気持ちの良い,優しく平和的な方法でそれを行うことを誓い合った。

海神マナナーン・マク・リルクー・フーリンの神の父である長腕のルーの養父で,ルーフラガラッハや馬のエンバール(アンヴァル)を授けたとされています。

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gloriousは「栄えある,栄光の」が有名ですが「素晴らしく晴れた」とか「輝いた」の意味もあります。

knobは「こぶ」で,ドアの「ノブ」の意味もあります。打撃でダメージを与えるために盾にこぶが付いていたのでしょうか。

・このchaseは難しいですが「追跡する」とは別に「浮き彫りを施す」という意味があります。

arms-bearerは将に付き従ってその人の槍などを運ぶ従者のことでしょう。ここでは兄貴分,弟分みたいな感じでしょうか。

・このall the time he was with Scáthは単体ならば「いつも彼はスカサハと共にいた」ですが,今回はthey went togetherに接続しているので,接続詞として「彼がスカサハと共にいる時はいつでも」です。例えばevery time S Vで「SVするときはいつでも」と言えます。all the time S Vで「SVするときはいつでも」です。

twainは「2」です。マーク・トゥエインの由来ですね。

 

But Scáth knew that other days were coming, for she was a seer, and when Cuchulain bade her farewell, to return to Ireland, she spoke to him these words out of her prophet’s shining ken: “Blessing and health go with thee! Victorious Hero, Champion of the Kine of Bray! Chariot Chief of the two-horsed chariot! Beloved Hero of the gods! Perils await thee; alone before the foe I see thee stand, fighting against a multitude, fighting thy own companion and friend. Red from many conflicts are thy warrior weapons; by thee men and champions will fall; the warriors of Connaught and of Meave, the hosts of Ailill and of Fergus scatter before thy sword. The Hound of Ulster will be renowned. At his death will the glory of Ulster fail, the glory of Erin will depart from her.... Farewell, farewell, Cuchulain.”

しかしスカアハは予言師だったので,そうではなくなる日が来ることを知っていた。それでクー・フーリンが彼女にサヨナラを言ってアイルランドへ帰ろうとする時,彼女は以下の言葉を予言師の輝かしい知識から呼び起こして彼に言った。「祝福と健康が汝と共にあらんことを。常勝の英雄よ。カイン・オブ・ブレイの勇者よ。2頭戦車の戦車長よ。神々に愛されし英雄よ。危難が汝を待ち受けておる。敵を前に汝が独り立ちはだかり,幾多の戦士と戦い,汝自身の仲間や友とも戦うのが見える。数多くの戦いで汝の武器は赤く染まり,汝によって戦士も勇者も斃れる。コナハトそしてメーヴの戦士達,アリルそしてフェルグスの軍勢は汝の剣に散る。アルスターの猟犬の名は轟く。汝の死とともにアルスターの栄光は失墜する。エリンの栄光はエリンから去る。さらば,さらばクー・フーリンよ」

・なんか,スカアハから完全にネタバレを食らった気分ですが……笑 でもメーヴを襲った預言師フェデルムも似たような事を言っていましたね。

Kine of Brayの定訳が分かりませんが,これは予言なので,将来にクー・フーリンが名を成す戦いの場でしょう。いずれ語られる回が来るのを待ちましょう。Brayは「丘」,Kineは「牛」のようです。クーリーの牛争いと関係しているんでしょうかね。

・このherはどの女性かと言うと,国名をsheで受けることがあるんですね(「母国」の発想)。ということでErinアイルランド)を指しています。「Erinの栄光は,Erinから去る」と言っているわけです。

 

Then Cuchulain parted from her, and turned to go back to Erin, and a magic mist overtook him so that he knew not how he went, or by what road he came to the borders of the white-flecked, green-waved ocean, but he found Manannan’s horses of the white sea-foam awaiting him near the shore upon the surface of the mighty main, and he caught their tossing white-tipped manes and they bore him out across the waves, and so he came to Ireland again.

そしてクー・フーリンはスカアハの許を去り,エリンに向かって帰還し始めた。すると魔法のような靄が彼を囚え,どのように進むべきか,どの道を辿って白い水玉の,蒼い波が立つ海辺に出るのかが分からなくなったが,彼は白い海の泡でできたマナナーンの馬が数匹,大海原の表面上,岸の近くで待っているのを発見した。そして彼は馬達の激しく揺れる,先端が白いたてがみを掴み,馬達は彼に波を渡らせ,それでアイルランドに帰ってきた。

マナナーンの馬とはエンバールのことでしょうか!? でも複数いるみたいですね。海の泡でできている精獣のようです。

・waitはwait for Nとする必要がありますがawaitはforを介さず,await N(他動詞)です。

the mainには「大海原」の意味があります。もっと重要な名詞mainはin the main「主に」ですね。

 

It was on the night of his return that he found and caught his two chariot horses, the Grey of Macha, and the Black Steed of the Glen, and this is how he caught them. He was passing along the borders of the Grey Lake that is near the Mountain of Slieve Fuad, pondering on the fate that was before him, and the work that he would do. Slowly he walked        [66] along the reedy, marshy ground that lay along the lake, till he saw a mist rise slowly from the mere and cover all the plain. Then, as he stood to watch, he saw the form of a mighty steed, grey and weird and phantom-like, rise slowly from the centre of the lake, and draw near to the shore, until it stood with its back to him among the rushes of the water’s edge. Softly Cuchulain crept down behind the steed; but it seemed not to hear him come, for it was looking out towards the centre of the lake.

彼が2頭の軍馬,マハの灰色とグレンの黒馬を見つけて捕らえたのは帰還する夜のことだった。以下のようにして彼らを捕らえたのである。彼はスリーヴ・フアドの山の近くの灰色の湖の湖畔を,自らを待ち受ける運命や自らが成すことになる働きについて考えに耽りながら通っていた。ゆっくりと彼は,湖に沿って広がる,葦の生い茂った,ぬかるんだ地を歩いていた。すると靄がゆっくりと湖から立ち昇り野を覆った。それから,彼が立ち止まって観察していると,灰色で奇妙な亡霊のような,力強い軍馬の影がゆっくりと湖の中央から立ち昇り,岸辺に近づいて来るのが見えて,それは湖の端のイグサの間で背中を彼に向けて立ち止まった。穏やかにクー・フーリンは軍馬の後ろに忍び寄ったが,馬には彼が近づくのが聞こえていないようだった。というのも馬は湖の中央に向かって視線を向けていたからだ。

It is ... that 〜の強調構文によって前置詞句が強調される形,It is 前置詞句 that 〜は典型です。今回はIt was on the night of his return that ですので,「〜だったのは,帰還の夜のことであった」です。

Grey of Macha(マハの灰色,リアト・マハ)the Black Steed of the Glen(グレンの黒馬,ドゥヴ・サングレン)クー・フーリンの馬として有名です。実際は2頭戦車の馬であり,御者はロイグです。ロイグもいずれ出てくるでしょう。

this is why「こういうわけで」は原因・理由を,this is how「このようにして,こういう経緯で」は方法・経緯を述べます。thisはこれから言うものを指すことができます。that is whythat is howとすれば既に言ったものを指します。

・このmereは「ほんの」という語とは別の,「湖」という語です。フランス語で「海」をmerと言うのと関係ありそうです。

draw near「近づく」は重要熟語です。原形のまま使われていますが前方にhe sawがあり,see O 原形「Oが〜するのが見える」の知覚動詞構文です。この段落の最後の行のhear him comeもhear O 原形「Oが〜するのが聞こえる」の知覚動詞構文です。

 

Then with a sudden leap, Cuchulain was on its neck, his two arms clasped upon its mane. When it felt the rider on its back, the noble animal shuddered from head to foot, and started back and tried to throw Cuchulain, but with all his might he clung and would not be thrown. Then began a struggle of champions between those two heroes, the King of the Heroes of Erin and the King of Erin’s Steeds. All night they wrestled, and the prancing of the steed was heard at Emain Macha, so that the warriors said it thundered, and that a great storm of wind had arisen without. But when it could by no means throw Cuchulain from its back, the horse began to career and course round the island, and that night they fled with the swiftness of the wind three times round all the provinces of Ireland. With a bound the wild steed leaped the mountains, and the sound of its coursing over the plains was as the break of the tempestuous surf upon the shore.

するとクー・フーリンは突然跳躍して,2本の手でたてがみを掴んで馬の首に取り付いた。何者かが背中に乗ったのを感じると,その高貴な馬は頭から足まで身震いし,バックしてクー・フーリンを振り落とそうとした。しかし彼は全力でしがみつき,振り落とされまいとした。それからこの2人の英雄,エリンの英雄の王とエリンの軍馬の王との激闘が始まった。一晩中彼らは取っ組み合い,馬が暴れまわる音はエヴァン・マハにも聞こえて,戦士達は雷が鳴ってるぞだとか,外では暴風雨が起こっているなあとか言った。しかし馬がどうしてもクー・フーリンを背中から振り落とせなくなると,馬は疾走して島を周り始めた。そしてその晩彼らは風の如き速さでアイルランドの全州を3周した。一跳びで野生の軍馬は山脈を超え,馬が平野を走り回る音は嵐のような寄せ波が岸辺に打ち付けるが如くであった。

shudder /ʃʌ́dər/ は恐怖・嫌悪感・寒さ・喜びで「身震いする」という意味です。私は恐怖と嫌悪感しか覚えてませんでしたが,寒さや喜びもあるんですね。寒さではshiver /ʃɪ́vər/ なんかもあります。

・このwithoutは一度出てきましたが,ここは「……なしで」ではなく「外では」という意味です。within「内部で」の逆と考えると自然です。

 with N「Nを伴って」 ≠ without N「Nを伴わずに」

 within「中では」 ≠ without「外では」

・このcareerは「履歴,経歴」と同じ単語ですが「疾走する」という意味です。語源的に関係しているようで辞書では項目が分かれていません。

・私も大好きな『アバタールチューナー』というゲームの主人公がサーフ(surf)というのですが,「打ち寄せる波」という意味です。サーフィンのサーフです。

 

Once only did they halt in their career, and that was in the wild and lonely glen in Donegal that is called the Black Glen, where the ocean waves roll inward to the land. From out the waters arose another steed, as black as night, and it whinneyed to the Grey of Macha, so that the Grey of Macha stopped, and the Black Steed of the Glen came up beside it, and trotted by its side. Then the fury of the Grey of Macha ceased, and Cuchulain could feel beneath his hand that the two horses were obedient to his will. And he brought them home to Emain and harnessed them to his chariot, and all the men of Ulster marvelled at the splendour of those steeds, which were like night and day, the dark steed and the light, and one of them they called the Grey of Macha, because Macha was the goddess of war and combat, and the other they called the Black Steed of the Glen.

1度だけ彼らは疾走の途中で止まり,それはドネガルにある荒涼とした寂しい谷で,黒の谷と呼ばれている所だった。そこでは海の波が内陸に向かって押し寄せていた。波からもう1頭の軍馬が現れた。夜のように黒く,マハの灰色に対していなないたので,マハの灰色は立ち止まり,(グレン)の黒の軍馬も横にやってきて,並んで駆けた。するとマハの灰色の怒りは静まり,クー・フーリンはたてがみを掴む両手の下で,2頭の馬が自分の意志に従うようになったのを感じた。そして彼は2頭の馬をエヴァンまで連れて帰り,自分の戦車に繋いだ。するとアルスターの男達は皆それらの軍馬の壮麗さに驚いた。まるで夜と昼のような,暗黒の軍馬と光の軍馬で,一方をマハの灰色(リアト・マハ)と呼び,というのもマハは戦と闘いの女神だったからであり,もう一方をグレンの黒馬(ドゥヴ・サングレン)と呼んだ。

・以前も解説しましたが,Once only「1回だけ(Only once)」という〈Onlyの付く準否定語〉が文頭に立ったため,did they halt倒置しています。ここから分かるのは,否定語文頭倒置は単純な転倒(halted they)ではなく,疑問文を作る倒置(did they halt)だということです。

marvel at Nは珍しく,受け身にしなくて良い「驚く」です。大抵はbe surprised [amazed,astonished] at... のように受け身にします。

Macha「マハ,マッハ,ヴァハ」は三相女神(the three Morrigna)の一柱で,他にモリガンネヴァン(バズヴ,バイヴ)がいます。マハは魔眼のバロールに殺されますが,バロールを討ったのがその孫の長腕のルー,即ちクー・フーリンの神の父です。

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以上で第7章が終わりました。次回から第8章「クー・フーリンが妻に求婚した経緯」に入ります。妻となるエメルや,その父フォルガルが登場します。フォルガルはFF14をやっている方はご存知ですね!

 

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