フレイニャのブログ

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アルスターの猟犬(17)

「アルスターの猟犬(16)」の続きです。第8章に入ります! タイトルのwooは「せがむ,求愛する」です。

 

CHAPTER VIII

How Cuchulain Wooed his Wife

It was on a day of the days of summer that Emer, daughter of Forgall the Wily, sat on a bench before her father’s door, at his fort that is called Lusk to-day, but which in olden days men spoke of as the Gardens of the Sun-god Lugh, so sunny and so fair and fertile was that plain, with waving meadow-grass and buttercups, and the sweet may-blossom girdling the fields. Close all about the fort the gardens lay, with apple-trees shedding their pink and white upon the playing fields of brilliant green; and all the air was noisy with the buzz of bees, and with the happy piping of the thrush and soft low cooing of the doves.

狡猾なフォルガルの娘エメルが,こんにちラスクと呼ばれるが,かつては太陽神ルーの庭と呼ばれていた父の砦で,父の部屋の戸の前のベンチに座っていたのは夏のある日のことだった。その野はとても陽当りがよく,美しく,肥沃で,牧草の草や金鳳花(キンポウゲ)が風になびき,甘い香りの山査子(サンザシ)が野原を取り巻いていた。砦の周囲近くに庭が配置され,林檎の樹はピンクや白の花びらを遊び場や素敵な芝生に振りまいた。そして辺りの空中は蜜蜂がブンブン言う音で騒がしく,(ツグミ)が楽しそうに甲高く鳴き,鳩が穏やかな低い声でクークーと鳴いていた。

エメル(エヴェル,エウェル)はクー・フーリンの妻,フォルガルはエメルの父です。フォルガルはFF14に出てきます。wilyは「狡猾な」という意味ですが,Forgall Monach [Manach]の斜体部に当たり,wilyのほかdexterous「巧みな,抜け目ない」という意味もあるらしいです。

the Sun-god Lughはクー・フーリンの〈神の父〉である長腕のルーです。

may-blossomはサンザシ(hawthorn)だそうです。hawthornにeが付くと作家のホーソーンHawthorneです。ウィキペディアによるとサンザシの花は「独特な爽快な甘い香りがする」そうです。

 

And Emer sat, a fair and noble maid, among her young companions, foster-sisters of her own, who came from all the farms and forts around to grow up with the daughters of the house, and learn from them high-bred and gentle ways, to fashion rich embroideries such as Irish women used to practise as an art, and weaving, and fine needlework, and all the ways of managing a house.

そしてエメル,美しく気高い少女は若い仲間たち,つまり自らの義姉妹達と共に座っていた。彼女達はあらゆる農場や砦からその家の娘達と共に成長し,彼女達から育ちの良い,気品のある振る舞い,アイルランドの女性が技芸として練習する豪華な刺繍を作るだとか,機織りだとか,美しい針仕事だとか,あらゆる家事仕事のこつを学ぶためにやってくる者たちだった。

embroidery(インブロイダリ)は刺繍です。

 

And as they sat round Emer, a bright comely group of busy girls, they sang in undertones the crooning tender melodies of ancient Erin; or one would tell a tale of early wars, and warrior feasts or happenings of the gods, and one would tell a tale of lover’s joys or of the sorrows of a blighted love, and they would sigh and laugh and dream that they too loved, were wooed, and lost their loves.

そして彼女達,華やかで美しい賑やかな少女達はエメルの周りに座りながら,古代エリンの囁くような優しいメロディーを小声で歌った。あるいは1人が昔の戦いや戦士の偉業,神々の出来事の話をし,また1人が愛する者の喜びや挫かれた愛の悲しみの話をし,彼女達は溜息を付いたり笑ったり,私達も恋をしたり,求愛されたり,失恋をしてみたいわと夢見たりしたものだった。

croonは「小声・低い声で甘く囁くように歌う」です。よってundertoneは「底流(潜んでいる性質)」の方ではなく「小声」と解釈できます。

・このwouldは「……したものだった」という〈回想のwould〉です。would always「いつも……したものだった」,would often「よく……したものだった」,would sometimes「時々……したものだった」というパターンがあります。

blight「枯れさせる,挫く」はbright「明るい」(この段落最初にありますね)と混同注意です。

・would dreamの中が過去形(loved,were wooed,lost)なのが気になります。もちろん過去の話なので全体は過去時制なのですが,「これから……してみたいと夢見る」場合はwouldがほしいです。もしかしたらwishの意味でdreamを使っているのかもしれませんね。wishなら仮定法過去を続けるので,

He wished (that) he were young.「自分が若ければなあと彼は思った」

となります。

 

And Emer moved about among the girls, directing them; and of all maids in Erin, Emer was the best, for hers were the six gifts of womanhood, the gift of loveliness, the gift of song, the gift of sweet and pleasant speech, the gift of handiwork, the gifts of wisdom and of modesty. And in his distant home in Ulster, Cuchulain heard of her. For he was young and brave, and women loved him for his nobleness, and all men wished that he should take a wife. But for awhile he would not, for among the women whom he saw, not one of them came up to his desires.

そしてエメルは少女達の間を歩き回り彼女達を指導した。そしてエリンの全ての少女の中で,エメルが一番だった。というのも彼女が持っているものと言えば,女性の6つの徳,可愛さ,歌,甘く心地よい言葉,手芸,知恵,そして謙遜という徳であったからだ。そしてクー・フーリンは遠く離れたアルスターの本拠でも,エメルのことを耳にしていた。というのも彼は若く意気軒昂で,女達も彼の気品を理由に彼を愛し,全ての男は彼が妻を持てば良いのにと思っていたのだ。しかししばらくの間彼はそうしなかった。というのも彼が目にする女達の中で,彼の願望に叶う者がいなかったからだ。

hersは「彼女のもの」です。倒置と取れば,the six gifts of womanhood were hers「女性の6つの徳が彼女のものだった」となります。gift(s)は「天賦の才」ですが「徳」と訳しておきました。

speechは「演説」だけでなく「言葉」も忘れないでおきましょう。the freedom of speechは「演説の自由」ではなく「言論の自由」です。

come up toは「(目標・期待など)に沿う」という意味です。live up to「(主義など)に沿った生き方をする」というのもあります。

・男達がクー・フーリンの妻帯を願っていた理由について,ウィキペディアはこう説明しています:

“クー・フランはウラドの女たちや娘たちのあこがれの的だったが,妻を娶っていなかったため,男たちは自分たちの妻や娘が奪われはしないかと危惧した。そこで人々は彼のために妻を見つけようと,コンホヴァル・マク・ネサに相談をした。コンホヴァルはアイルランド中に物見を送ったが,ふさわしい女性を見つけることができなかった。”

・上記の「ウラド」については,「昔のアルスターの民」「昔のアイルランドの民」「アルスターにあった王国」の3つの意味があります。

en.wikipedia.org

 

And when they urged him, wilfully he said: “Well, find for me a woman I could love, and I will marry her.” Then sent the King his heralds out through every part of Ulster and the south to seek a wife whom Cuchulain would care to woo. But still he said the same, “This one, and this, has some bad temper or some want of grace, or she is vain or she is weak, not fitted as a mate to such as I.

そして皆が彼に結婚するよう言うと,我儘に言ったものだ。「そうだね,僕が愛せる女を見つけて欲しいな。そうすれば結婚するよ」 そこで王はアルスターと南アイルランドじゅうに使者を派遣してクー・フーリンが求婚したくなる女性を探させた。しかしそれでも彼は同じことを言った。「この子とこの子は気性が荒かったり気品に欠けるとこがあるね。この子はうぬぼれ屋だし,この子は弱虫で,僕みたいのには合わないなあ」

wilful,willfulは「わがままな,強情な」です。1つめのエルが1個だったり2個だったりするのはskilful,skillfulに同じです。1つめのエルが1個なのはイギリス英語の傾向です。なお語尾のエルは形容詞では必ず1つです。副詞では+lyとなるため2つになります。beautifulだってそうです。

find for me a womanは面白いですね。なぜならfind me a womanとも言えるからです。find me a womanfind a woman for meとも言え,これをわざわざ語順変更してfind for me a womanとしているのですね。これに何の意味があるのでしょうか。一般に言われるのは,find me a womanでは後のa womanに力点があり,「女を」探してくれと言っています。これに対しfind a woman for meでは後のfor meに力点があり,「僕のために」探してくれと言っています。「クー・フーリンに見合った女」の話題は既に挙がっているので,「とにかく僕は探さないから,僕の代わりにお前たちが探してよ」と言いたいのでしょう。確かにわがまま(wilful)な子です笑 いずれにせよfind me a womanとfind a woman for meは意味というよりニュアンス・力点の違いですね。

 

She must be brave, for she must suffer much; she must be gentle, lest I anger her; she must be fair and noble, not alone to give me pleasure as her spouse, but that all men may think of her with pride, saying, ‘As Cuchulain is the first of Ulster’s braves, the hero of her many fighting-fields, so is his wife the noblest and the first of Erin’s women, a worthy mate for him.’”

「僕の妻は勇敢じゃなきゃ。とても苦労するだろうからね。また穏やかでもなくっちゃ。僕が何しても怒らないようにね。また公正で気品もなきゃ。その妻の夫で良かったと思わせるだけじゃなく,全ての男が僕の妻のことを誇らしげに思って『クー・フーリンがアルスターの勇士達の筆頭であり,アルスターの多くの戦場の英雄であるように,その妻もまたエリンの女性の中で最も気品があり,最も優れた女性だ。彼に値する伴侶だ』と言うくらいでなきゃ」

・神の血を引いているだけあってなかなか尊大な男の子ですね(・ω・)

lest S (should) Vは「SがVしないように」です。shouldは米語は勿論のことイギリス英語でも省略されやすいとのことです。「僕が彼女を怒らせないように,僕は気をつけなきゃ」ではなく,「僕が彼女を怒らせないように,彼女が温和でなきゃ」というわけです。我儘ですね笑

(Just) as ..., so 〜は「(ちょうど)……であるように,〜もまた〜である」です。soはなくてもasだけで接続しますが,soがあると読みやすくなります。If S V, S V. が,If S V, then S V. だと読みやすくなるのと同じです(特にIf節が長い時)

・このher many fighting-filedsherを「彼女」つまり「クー・フーリンの妻となる人」と解してはいけません。これは国名(Ulster)を受けるherです。「彼女の多くの戦場」ではなく「アルスターの多くの戦場」です。

 

So when the princely messengers returned, their search was vain; among the daughters of the chiefs and noble lords not one was found whom Cuchulain cared to woo. But one who loved him told him of a night he spent in Forgall’s fort, and of the loveliness and noble spirit of Forgall’s second girl Emer, the maiden of the waving hair, but just grown up to womanhood. He told him of her noble mien and stately step, the soft and liquid brightness of her eyes, the colour of her hair, that like to ruddy gold fresh from the burnishing, was rolled around her head. Her graceful form he praised, her skilfulness in song and handiwork, her courage with her father, a harsh and wily man, whom all within the house hated and feared but she.

それで王の使者が帰還した時,彼らの捜索は徒労に終わった。首長や貴族の領主の娘達の中で,クー・フーリンが求婚したいと思う者は1人もいなかった。しかしクー・フーリンを敬愛する男が彼に,フォルガルの砦で過ごした夜のこと,フォルガルの次女エメルの愛らしさと気品について,ウェーヴのかかった髪の少女だが,大人の女になったばかりの彼女について話した。彼はクー・フーリンに彼女の気品ある物腰と堂々とした足取り,穏やかで透明感のある明るい瞳,つや出しをして新鮮で健康的な金髪が彼女の頭に巻かれていることを話した。彼女の優美なスタイル,彼女の歌と手芸の才能,苛烈で狡猾な男であり,エメルを除いて家中の皆が嫌い,恐れていた父親に物怖じしない態度を彼は褒めた。

・「国家,状態;述べる」といった意味があるstateには「威厳」という意味もあり,形容詞statelyは「堂々とした」です。

liquidは「液体」ですが「透明感のある,淀みない」という意味もあります。

 

He told him also that for any man to win the maiden for his wife would be a troublesome and dangerous thing, for out of all the world, her father Forgall loved and prized but her, and he had made it known that none beneath a king or ruling prince should marry her, and any man who dared to win her love, but such as these, should meet a cruel death; and this he laid upon his sons and made them swear to him upon their swords, that any who should come to woo the girl should never leave the fort alive again.

その男はまた彼に,どんな男でもその少女を妻に得ることは厄介で危険なことだとも話した。なぜなら世の中の全ての中で,父親のフォルガルは彼女だけを愛し,重んじており,王や支配者の下にいる何人でも彼女と結婚しようとしたり,彼女の愛を勝ち取ろうとしたりした者は,そのようなことだけで無残な死を迎えるであろうことを知らしめていたからだ。そしてこのことを彼は息子達にも通知しており,その剣にかけて,エメルに求婚しに来た者は2度と生きて砦を出ることはないと誓わせていたのだ。

but such as theseに苦戦しました。とりあえずこの4語は前後の間に挿入されており,取り去るとany man who dared to win her love should meet a cruel death「彼女の愛を勝ち取りに来た者は誰でも無残な死を迎えるであろう」と繋がります。後は挿入部分but such as theseですが,butの解釈が鍵だと思います。butは(1)単体でonly「〜だけ」,(2)前置詞「〜以外」が要注意です。色々やってみると,(1)と解釈して「このようなものだけ」と解せます。「このようなもの(these)」がまた謎なのですが,前方にある複数のものとして「彼女と結婚する」「彼女の愛を勝ち取る」と取りました。「彼女と結婚しようとするだとか,彼女の愛と勝ち取ろうとするような(such as)ことだけ(but)で,無残な死を迎えることになる」と読みました。

 
All that they said but made Cuchulain yet the more desire to see the maid and talk with her. “This girl, so brave, so wise, so fair of face and form,” he pondered with himself, “would be a fitting mate for any chief. I think she is the fitting mate for me.”

彼らが言ったことはただクー・フーリンに,その少女と会って話をしてみたいという気持ちを却って一層かき立てただけだった。「そんな女性,そんなにも度胸があって,そんなに賢くて,そんなに顔やスタイルが美しい女性は」と彼は考えに耽った。「どんな首長にも相応しい妻だろうな。彼女は僕に相応しい妻だと思う」

・このbutもやはりonlyですよね(All that they said only made Cuchulain yet the more desire)。この著者はonlyの代わりにbutを使うのが好きなのではないでしょうか。

the moreは「その分だけ一層;かえって」という意味です。yetも「一層」という意味があります。I like him all the better for his faults.「彼には欠点があるから,一層(or却って)彼が好きだ」としてよく受験でも習うthe+比較級です。

 

So on the very day when Emer sat upon her playing-fields, Cuchulain in the early morn set forth in all his festal garb in his chariot with his prancing steeds, with Laeg before him as his charioteer, and took the shortest route towards the plain of Bray, where lie the Gardens of the Sun-god Lugh. The way they went from Emain lay between the Mountains of the Wood, and thence along the High-road of the Plain, where once the sea had passed; across the marsh that bore the name the Whisper of the Secret of the Gods. Then driving on towards the River Boyne they passed the Ridge of the Great Sow, where not far off is seen the fairy haunt of Angus, God of Beauty and of Youth; and so they reached the ford of Washing of the Horses of the Gods, and the fair, flowering plains of Lugh, called Lusk to-day.

そこでエメルが遊び場のベンチに座ったその日,クー・フーリンは早朝に,祝祭用の衣装を全部戦車に乗せて,疾走する軍馬と共に出発した。彼の前には御者としてロイグが乗り,太陽神ルーの庭がある,ブレイの野に向けて最短の進路を取った。エヴァンから彼らが進んだ道は森の山の間にあり,それから平野の大きな道で,かつて海が広がっていた場所だった。神々の秘密の囁きという名を持つ沼地を横切った。それからボイン川目指して戦車を走らせ,大鋳型の溝という所を通った。そこから遠くない所に美と若さの神アングス・オーグの妖精の里が見える。それで彼らは神々の馬を洗う瀬,そしてこんにちラスクと呼ばれる,ルーの美しい,花咲く平野に到達した。

mornはmorningの詩的表現です。

・何の前触れもなく御者のロイグロイグ・マク・リアンガヴラ)が登場しました。クー・フーリンの戦車の御者として有名な人物です。これに因んでいるか分かりませんが,「ドラゴンズドグマオンライン」にロイグが登場します。

high roadとは大きな町と町を繋ぐ,荒野を横切る大きな道(highway)です。私の大好きなU2A sort of Homecomingという曲に“A high road out of here”「ここから離れた大きな道路」という歌詞が登場します。「アルスターの猟犬(8)」でもこの表現は登場しており,U2アイルランドのグループですから同じ表現が出てきて嬉しいわけです。

sow /soʊ, səʊ/ と言えば「種を蒔く」ですが,ここは同綴で /saʊ/ と発音し「大鋳型;メスの熊・豚」とかいった意味に思われます。傍証としてgreat「大」が付いていることと,ridge「分水嶺,尾根,畝,刻み目」が付いていることです。

・「美と若さの神アングス・オーグ」は「アルスターの猟犬(11)」でも登場しています。妖精の里を持っているのでフレイに似ているという話をその時しました。

Luskというのは現在ダブリンにあるようですが,フォルガルと娘エメルは現在のダブリンの辺りにいたんですかね。ボイン川を通っていることもヒントになります(ボイン川はダブリンの北方にあり,アルスターからダブリンに進むとボイン川と出会う)

 

Now all the girls were busied with their work, when on the high-road leading to the fort they heard a sound like thunder from the north, that made them pause and listen in surprise.

さて少女達はみな用事で忙しかったが,その時砦につながる大きな道で,彼女達は北の方角から雷のような音を聞き,立ち止まって驚きながら耳を澄ませた。

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遂に少女達の前に,戦車に乗ったクー・フーリンが登場しました。エメルはクー・フーリンにどう対処するのでしょうか? 次回をご期待下さい!

 

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