フレイニャのブログ

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アルスターの猟犬(1)

北欧神話のAsgard Storiesに続くものとしてアルスター伝説の『クー・フーリン──アルスターの猟犬』を訳していきます。まだAsgard Storiesは終わっていませんが,たまに混ぜていきます。

冒頭は2020/8/9の記事でチラ見せしましたが,それもここに再掲しつつ,続きを加えたものが今回です。「==========」より上が2020/8/9で既に紹介した部分,それより下が今回新たに訳す部分です。

 

CHAPTER I

 

How Conor became King of Ulster

There was a great war between Connaught and Ulster, that is, between Conor, King of Ulster, and Meave, the proud and mighty Queen of Connaught. This was the cause of the war between them.
かつてコナハトとアルスターとの間,即ちアルスター王コノールと,コナハトの誇り高く力強き女王メーヴとの間には大戦争があった。両者の戦争の原因はこうである。

Connaught「コナハト,コノート」アイルランド島の中西部です。リンク先のウィキペディアに地図があるのでご参考に。

Ulster「アルスター」アイルランド北部です。現在の州の数にして3分の2が英国の「北アイルランド」です。

・アルスター王Conor「コノール」は「コンホヴァル・マク・ネサ」です(コノールは英国風の言い方らしい)。「マク・ネサ」の意味はすぐ分かります。

・コナハト女王Meaveは「メイヴ」(英語読み)「メーヴ」(アイルランド語読み)です。ウィッチャー3の「リヴィアの女王メーヴ」はこれに由来していそうですね。ウィッチャー3に合わせて「メーヴ」と訳しておきます。

・2つの国,2人の王・女王が出てきました。ここまではいいですね。

 

When Conor was but a lad, his mother was a widow, and there was no thought that Conor would be king. For the King of Ulster at that time was Fergus mac Roy, a powerful and noble king, whom his people loved; and though Conor was of high rank and dignity, he stood not near the throne.
コノールがほんの若者だった頃,母親は未亡人で,コノールが王になるなどとは考えられなかった。というのも当時のアルスター王はフェルグス・マク・ロイヒという,力強く高貴な王で,人民からも好かれていたからだ。だからコノールの位は高く威厳があったけれども,王座には程遠かった。

butは単体で「only」の意味があります。2020/2/12の記事の(3)で解説しています。

widowは「未亡人」,その男性版「男やもめ」はwidowerです。witcherもwitchの男性形と考えられます(wizardもあります)

・「フェルグス・マク・ロイヒ」は「コンホヴァル・マク・ネサ」の前のアルスター王ということですね。英語読みすると「ファーガス・マク・ロイ」なのでしょう。

・peopleは「人々」ですがthe peopleは「人民,民衆,庶民」の意味があります。hisはtheの意味を含みます。

・3人めの登場人物,アルスター王「フェルグス・マク・ロイヒ」です。まだ大丈夫ですね。

But his mother, Ness, was ambitious for him, and she used all her arts to bring it about that he should be called to the throne of Ulster. Ness was a handsome woman, and a woman of spirit, and in her youth she had been a warrior; and Fergus admired her, and she wrought upon him so that in the end he asked her to be his wife.
しかし彼の母親ネスは息子の将来に野心を抱いており,息子がアルスター王になるということを実現させるためにあらゆる手練手管を用いた。ネスは顔立ちの良い女性で,気骨もあり,若い頃は兵士だった。それでフェルグスは彼女に好意を持ったので,彼女は彼の心を操ってついには自分に求婚させた。

・コンホヴァル・マク・ネサの母ネスの登場です。4人目ですね。ネス湖エリオット・ネス(ジ・アンタッチャブルに出てくる,アル・カポネと戦った人)にも見られ,北欧系に多い名のようですね。なおmacは「の(子)」という意味で,父が無名なので母の名を取って「コンホヴァル・マク・ネサ」なのでしょう。

・「人が成功して欲しいと野望を持つ」ことをambitious for 人と言うんですね。

bring it about that... は面白く重要ですね。bring N aboutは「Nをその辺に持ってくる」ということで「引き起こす,もたらす」です。文を含むthat...節をNの位置に入れるのは窮屈すぎるので,仮目的語(形式目的語)itをNに入れ,その真の内容(真の目的語)は後ろに回すのです。それでbring it about that...「……であることをもたらす」が生まれます。take it for granted that...「……であることを当然と考える」が有名ですね。depend on it that...,see to it that... のようにitとthat節が連続することもあります。

handsomeは「顔立ちが良い」という意味で女性にも使います。なぜ「顔」なのにhandか不思議ですが,元はhandy「扱いやすい」といった意味で,そこから「ふさわしい」とかいった褒め言葉を経て現在の意味に変わっていったようです。

wrought uponはworked uponの古い形でwork on Nは「Nに取り組む,働きかける,影響を及ぼす」といった意味です。

・野心家ネスは前王フェルグス・マク・ロイヒに求婚させたということですね。

 

She made it a condition that for one year Fergus would leave the sovereignty, and that Conor should take his place; “for,” said she, “I should like to have it said that my son had been a king, and that his children should be called the descendants of a king.”
彼女は条件として,1年間フェルグスが君主の座を離れ,コノールが彼の地位に就くことを求めた。「だって」彼女は言った。「私は自分の息子がかつて王だっただなんて言われてみたいし,息子の子どもたちが王の子孫だなんて言われてみたいんですもの」

conditionは「状態,体調(コンディション)」の他「条件」が重要です。on no condition,under no conditionは「いかなる条件のもとでも……ない」で「決して……ない」という意味です。

should like toはイギリス英語の特徴で,would like to「……したいのだけれど」のことです。イギリス英語では1人称の時にwouldをshouldと言えます。

have it said that... もおもしろ重要表現ですね。have O 過去分詞は「Oを……させる・される・してもらう」という意味です。直訳で理解すると「Oを……された状態で持つ」ということですね。have my hair cutは「髪を切らせる・切ってもらう」です。これにit is said that...「……と言われる」が組み合わさったような形で,have it said that...は「……と言わせる・言われる・言ってもらう」です。例えばI won't have it said that... で「……とは言わせない」です。今回はI should like to have it said that... なので「……と言われてみたい」ですね。

Fergus and the people of Ulster liked not her request, but she was firm, and Fergus all the more desired to marry her, because he found it not easy to get her; so, at the last, he gave way to her, and he resigned the kingdom for one year into the hands of Conor.
フェルグスとアルスターの民衆は彼女の要求を嫌ったが,彼女の意志は固く,フェルグスは彼女を手に入れるのが難しそうに思えた分,いっそう彼女と結婚したくなった。それでついに彼は折れ,1年だけ王位を辞し,コノールの手に譲った。

liked notは現代英語ではdidn't likeが普通ですね。don't haveをhaven'tと言うのはhaven't the slightest idea「ちっとも分からない」に残っています。

all the more+because... は高校英文法(大学受験)レベルで習う重要表現です。theに指示性がありbecause以下を指します。つまり「because以下の分だけより一層……」→「……であるがゆえに一層[なおさら,かえって]」です。

give way to N「Nに屈する」は,give in to N,yield to Nとも言います。

resign「諦める,辞職する」はsが濁るので気をつけて下さい。design,resort,resolveなどにも言え,むしろ原則的なことで珍しいことではありません。

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But, as soon as Conor was king, Ness set about to win away the hearts of the people of Ulster from Fergus, and to transfer them in their allegiance to Conor. She supplied her son with wealth, which he distributed secretly among the people, buying them over to his side; and she taught him how to act, so that he won over the nobles and the great men of the province.
しかしコノールが王位についた途端,ネスはアルスターの民衆の心をフェルグスから離し,コノールへの忠誠心に変えさせようと取り掛かった。彼女は息子に財産を与え,それをコノールは密かに民衆に配って自分の側に寝返らせた。また彼女は息子に振る舞い方を教え,領国の貴族や有力人物の心を掴むようにさせた。

kingも可算名詞なのでa king,the kingとなる筈ですが,文脈上唯一の役職(ここではアルスターの王であることが明白)の場合は無冠詞が可能です。例えばTrump was elected President.「トランプが大統領に選出された」(Presidentが無冠詞)

winにはwin her heartのように「(気持ち・愛情を)勝ち取る」の意がありますね。しかしwin away「勝ち取って奪い去る」は面白いです。

allegianceは「忠誠」という意味だそうです。難しいですね。allegedly「本人の申し立てによると」は割と聞きますけどね。

supply A with Bで「AにBを与える・供給する」です。pを重ねるので注意です。

distributeは「分配する,配布する」です。またbe distributed「分布している」も重要です。

 

And when, the year being out, Fergus demanded back the sovereignty, he found that the league formed against him was so strong that he could do nothing. The chiefs said that they liked Conor well, and that he was their friend, and they were not disposed to part with him; they said, too, that Fergus having abandoned the kingdom for a year, only to gain a wife, cared little for it, and had, in fact, resigned it. And they agreed that Fergus should keep his wife, if he wished, but that the kingdom should pass to Conor.
それで約束の1年間が過ぎ,フェルグスが王権を返すよう要求した時,彼に敵対する同盟が余りに強固に作られていたのでどうすることもできなかった。長たちはコノールを敬っていて,コノールは自分たちの友であり,コノールの下にいたいと言った。彼らはまた,フェルグスが1人の女を妻にするためだけに1年も王国を手放した,王国のことを少しも気にかけておらず,王位を捨てたに等しいとも言った。そして彼らはフェルグスが望めば妻を自分の元に置いていいが,王国はコノールの手に渡るべきだということで意見が一致していた。

leagueは「連盟,同盟」といった意味ですが,具体的に「反フェルグス連盟」といった名のあるものが結成されていたわけではないでしょう。

disposedは重要多義語なので今度1回分の記事にしたいと思います。今回はbe disposed to-Vで「Vしたい気分だ」です。

part wirh Nは「N(物)を手放す」,part from Nは「N(人)と別れる」ですが,今回のようにpart with Nで「N(人)と別れる」となることもあります。

・he agreedの時は,必ず「彼が彼以外の人と同意した」でしょう。しかしthey agreedの時は(1)「彼らが彼ら以外の人と同意した」のか(2)「彼らが彼ら同士で意見が一致していた」のかの選択があります。今回は(2)です。

 

And Fergus was so wrath at this, that he forsook his wife, and went with a great host of his own followers into Connaught, to take refuge with Queen Meave and with Ailill, her spouse. But he swore to be revenged upon Conor, and he waited only an opportunity to incite Meave to gather her army together that he might try to win back the sovereignty, or at least to revenge the insult put upon him by Conor and by Ness.
これにフェルグスは激怒したので,妻を捨て,自分に従う大家臣団と共にコナハトに向かい,メーヴとその配偶者アリルの下に身を寄せた。しかしフェルグスはコノールに復讐することを誓い,メーヴを唆して軍を集めさせ,あわよくば王権を奪還するか少なくともコノールとネスに与えられた屈辱を晴らす機会をひたすら待った。

wrathは「憤怒,憤激」という名詞のはずですが,ここは形容詞用法ですね。

foresake - foresook - foresakenは「見捨てる」です。しかしsakeは「ため」という意味なのに(for the sake of),「見捨てる」とは不思議ですね。実は接頭辞のfor-にはoppositeとかawayみたいな意味もあるのです。forgetだってgetなのに「忘れる」ですね!

hostには「大勢」とか「軍勢」という意味があったようです。

take refugeは「避難する,亡命する」です。

spouseは「配偶者」です。sibling「(性別を考慮せず)きょうだい」と共に覚えておきましょう。/spoʊs, spoʊz/ではなく/spaʊs, spaʊz/です。

・不思議ですがbe revengedで「復讐する」となります。「復讐される」じゃないんですね。2020/6/17の記事で解説しました。

 

Now Fergus mac Roy was of great stature, a mighty man and a famous warrior, and his strength was that of a hundred heroes. And all men spoke of the sword of Fergus, which was so great and long that men said that it stretched like a rainbow or like a weaver’s beam.
ところでフェルグス・マク・ロイヒは大男で,力も強く名高い戦士であり,100人の英雄に匹敵する力を持っていた。そして男は皆フェルグスの剣の話をした。それはとても大きく長かったので虹のように長いとか機織り機の巻棒のように大きいとか言われていた。

Wikipediaによるとフェルグスは並外れた大男(enormous size)だったそうです。またここに叙述される剣はカラドボルグと思われます。

 

And at the head of his hosts was Cormac, the Champion of the White Cairn of Watching, a son of Conor, who liked not the deed of his father; for he was young, and he had been one of the bodyguard of Fergus, and went with Fergus into exile to Connaught. And that was called the Black Exile of Fergus mac Roy.
そしてフェルグスの軍の長にはコルマクがいた。The White Cairn of Watchingの勇者であり,コノールの息子であったが,父の行いを嫌っていた。というのも彼は若かったということもあり,またフェルグスの護衛の1人でもあった。それでフェルグスと共にコナハトに亡命したのだ。そしてこれはフェルグス・マク・ロイヒの暗黒の亡命と呼ばれた。

・5人目の登場人物,コルマク・コン・ロンガスです。コン・ロンガスはExlied Prince「亡命王子」といった意味です。

・残念ながらthe Champion of the White Cairn of Watchingの定訳が分かりませんでした。the White Cairn of WatchingはWikipediaのNaoise(ノイシュ)の項目にあり,"they went to the White Cairn of Watching on Slaib Fuad"「彼らはSlaib Fuadのthe White Cairn of Watchingに行った」とあるので地名でしょう。更にchampionには「戦士」の意味があるのでここで戦いが行われたと思われます。よってthe Champion of the White Cairn of Watchingは「the White Cairn of Watchingで行われた戦いで活躍した勇者」の意味だと思います。

・複雑ですが,フェルグスを王座から追い出したコノール(コンホヴァル)の息子コルマクは,フェルグスの側について亡命しました。父子対立です。しかも彼は一説によるとある出生の秘密を持っています。これは機会があれば触れます。

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以上がChapter I: How Conor became King of Ulsterの内容でした。

アルスター側:コノール(コンホヴァル)新王とその母ネス

コナハト側:メーヴ女王+亡命軍フェルグス(旧アルスター王),コルマク(コノールの子)

という図式になっているわけですね。

次回Chapter II: Queen Meave and the Woman-Seerに入ります。

 

↓次回アップしました。

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