フレイニャのブログ

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ローランの歌(7)

ガヌロンがブランカンドランと交渉を始めた「ローランの歌(6)」の続きです。

 

XXIX

  Says Blancandrins "Gentle the Franks are found;
  Yet a great wrong these dukes do and these counts
  Unto their lord, being in counsel proud;
  Him and themselves they harry and confound."
  Guenes replies: "There is none such, without
  Only Rollanz, whom shame will yet find out.
  Once in the shade the King had sate him down;
  His nephew came, in sark of iron brown,
  Spoils he had won, beyond by
Carcasoune,
  Held in his hand an apple red and round.
  "Behold, fair Sire," said Rollanz as he bowed,
  "Of all earth's kings I bring you here the crowns."
  His cruel pride must shortly him confound,
  Each day t'wards death he goes a little down,
  When he be slain, shall peace once more abound."
                      AOI.

ブランカンドランは言う「フランク人たちは紳士だ。しかしこの公爵たちや伯爵たちは誇らしげに大きな間違いを,彼らの君主に助言している。君主と自らを惑わし,困らせているのだ」

ガヌロンは答える。「ローランを除き,そんな恥ずかしい者はおりませんよ。いつか木陰に王が腰を下ろしていた時,茶色い鉄のシャツを着た甥のローランがやって来た。カルカソンヌから略奪品を奪って来た。

手には赤くて丸いリンゴを握り,『見ていて下さい陛下』とローランはお辞儀をして言ったのだ。『私は陛下のもとに,地上全ての王の冠を持ってきます』と。

彼の法外な高慢は,間もなく奴を苦しめましょう。奴は日に日に少しずつ,死に向かっているのです。奴が殺された時,平和が再び満ち溢れるでしょう」

カルカソンヌはフランス南部のスペイン寄りの都市です。「カール大帝がこの都市の攻略を諦めた」とあり,また「カルカソンヌ」というボードゲームがあるようです。

ja.wikipedia.org

fr.wikipedia.org

www.famitsu.com

Of all earth's kings I bring you here the crowns について,Of all... で文が始まっていると「全ての……の中で〜が一番」と読みたくなりますが,今回は I bring you here the crowns of all earth's kings「私はあなたの下に,地上の全ての王の冠を持ってくる(私はあなたのために世界中の王を征服して見せる)」です。尊大な言葉だとしてガヌロンの非難が続いています。

XXX

  Says Blancandrins: "A cruel man, Rollant,
  That would bring down to bondage every man,
  And
challenges the peace of every land.
  With what people takes he this task in hand?"
  And answers Guene: "The people of the Franks;
  They love him so, for men he'll never want.
  Silver and gold he
show'rs upon his band,
  Chargers and mules, garments and silken mats.
  The King himself holds all by his command;
  From hence to the East he'll conquer sea and land."
                      AOI.

ブランカンドランは言う。「愚かな者だな,ローランという男は。あらゆる者を束縛しようとするとは。あらゆる国の平和を乱すとは。そんな仕事をどのような人が支持しているのだ?」

ガヌロンは答える。「フランク人の民衆です。彼らは彼をとても気に入っています。彼が人に困ることはありません。彼は金銀を部隊にばら撒きます。軍馬や騾馬,衣服や絹のマットを。

王自身が全てを彼の思うがままにさせているのです。ここから東国まで,ローランは海も陸も征服するでしょう」

challenge the peace とは「平和を目指す」という意味ではなく「平和に異議を唱える」「平和に対し戦いを挑む」という意味です。「平和に対する挑戦」とはそういう意味ですよね。

show'rs は show のナニカではなく shower「驟雨のように降らせる」の三単現です。

The King himself holds all by his command では his が王(カール大帝)ではなくローランを指していることに気づく必要があります。by his command,at his command は「彼が自由に使えて」です。「全ての物をローランが自由に使えるように,王自身がしている」です。

・交渉をすると言うより,2人してローランの悪口大会になっていますね。

XXXI

  Cantered so far then Blancandrins and Guene
  Till each by each a covenant had made
  And sought a plan, how Rollant might be slain.
  Cantered so far by valley and by plain
  
To Sarraguce beneath a cliff they came.
  There a fald-stool stood in a pine-tree's shade,
  Enveloped all in Alexandrin veils;
  There was the King that held the whole of Espain,
  Twenty thousand of Sarrazins his train;
  Nor was there one but did his speech contain,
  Eager for news, till they might hear the tale.
  Haste into sight then Blancandrins and Guene.

それからブランカンドランとガヌロンは駈歩で駆け,それぞれが誓約をし,計画を練る。どうやってローランの命を取るかの計画を。

谷と平野を駈歩で抜け,2人は崖下のサラゴサにやって来た。松の木陰に腰掛けがあり,腰掛はアレクサンドリア産の垂れ布で全て覆われていた。

スペイン全土を支配している王がおり,2万人のサラセンがお供として侍っていた。

誰もが発言を控えており,話を聞くまで,知らせを熱心に待っていた。そしてブランカンドランとガヌロンが颯爽と現れる。

canter は「駈歩(かけあし)で駆ける」です。全速力の gallop「襲歩」より遅い駆け方です。

covenant は「約束,契約,誓約」です。

・「崖下のサラゴサ」が引っかかりました。サラゴサって崖下にあるの? ウィキペディアで「サラゴサ」を引くと “完全に山に囲まれた広い盆地に位置している” とあります。正しそうですね。

ja.wikipedia.org

fald-stool (faldstool) は以下のような腰掛けです。

en.wikipedia.org

train は「列車のように長く続く」というイメージで(というより長く続くイメージから列車の意味が生まれたのでしょうが),「お供」という意味です。

 

XXXII

  Blancandrin comes before Marsiliun,
  Holding the hand of
county Guenelun;
  Says to the King "Lord save you, Sire, Mahum
  And Apollin, whose holy laws here run!
  Your message we delivered to Charlun,
  Both his two hands he raised against the sun,
  Praising his God, but answer made he none.
  He sends you here his noblest born barun,
  Greatest in wealth, that out of France is come;
  From him you'll hear if peace shall be, or none."
  "Speak," said Marsile: "We'll hear him, every one."
                      AOI.

ブランカンドランはマルシル王の前にやって来る。ガヌロン伯爵の手を取りながら。

王に言う。「神よ陛下を救い給え。その聖なる法がこの地を支配するマホメットよ,アポリンよ。

陛下の伝言をシャルルマーニュに届けました。彼は両手を太陽に向かって掲げ,彼の神に祈り,しかし回答はしませんでした。

彼は陛下の下へ,最も高貴な生まれの家臣を派遣しました。フランス最大の富を有します。彼から陛下は平和が成るか否かをお聞きするでしょう」

「話すが良い」マルシルは言った。「我々はみな彼の言葉を聴こう」

county は古語では count「伯爵」を意味しました。今は「郡」ですが,「郡」が伯爵領ほどの規模感なのでしょう。

・この barun は baron でしょう。「男爵」と訳すと「伯爵」と矛盾するので,baron の広義である「家臣」と訳しています。

XXXIII

  But the count Guenes did deeply meditate;
  Cunning and keen began at length, and spake
  Even as one that knoweth well the way;
  And to the King: "May God preserve you safe,
  The All Glorious, to whom we're bound to pray
  Proud Charlemagne this message bids me say:
  You must receive the holy Christian Faith,
  And yield in fee one half the lands of Spain.
  If to accord this tribute you disdain,
  Taken by force and bound in iron chain
  You will be brought before his throne at Aix;
  Judged and condemned you'll be, and shortly slain,
  Yes, you will die in misery and shame."
  King Marsilies was very sore afraid,
  Snatching a dart, with golden feathers gay,
  He made to strike: they turned aside his aim.
                      AOI.

しかしガヌロン伯爵は深く瞑想した。やがてようやく巧妙に,抜け目なく,話し始めた。まるで物事を見通している者であるかのように。

そして王にこう言った。「神が陛下をお護りせんことを。私たちが祈らざるを得ない栄えある神が。誇り高きシャルルマーニュは以下の伝言を私に託しました。

殿は聖なるキリスト教の教えを受け入れねばなりませんと。そしてスペインの土地の半分を差し出さねばなりませんと。

もし陛下がこの貢物を出すのを拒んだら,鉄の鎖で捕えられ,縛められて,アーヘンにある大帝の玉座の前に連行されましょう。

裁判を受けさせられ,罪を言い渡され,間もなく殺されましょう。そうです,殿は惨めと恥辱のうちに死ぬのです」

マルシル王はひどく怯えた。明るい金の羽のついたダートを引っ掴み,一撃しようと振りかざした。一同は彼の狙いを避けようと身を躱した。

・mediate は「調停する,仲裁する」ですが meditate は「瞑想する」です。区別が難しい人は “media(媒介)” を含む方が「調停する」と覚えましょう。

at length は「詳細に」「ようやく」ですが,今回は began「始めた」があるので「ようやく」でしょう。

disdain は何となくディスっているような綴りで「軽蔑する」です。そして disdain to-V,disdain Ving は「V することを軽蔑する」→「V するような恥ずかしいことはしない」という意味です。今回は If you disdain to accord this tribute ですが,この accord は give の意味です。

condemn は罵りの damn っぽい綴りを含んでおり「非難する,有罪にする,悪い状態に運命付ける」です。

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マルシルはダートを持って何をしようというのでしょうか。次回をお楽しみに!

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 Twitter告知用あらすじ:ガヌロンはブランカンドランに案内されてサラゴサのマルシル王の下へ。ガヌロンはマルシルに,キリスト教に改宗すること,スペインの半分の領土を差し出すことというカール大帝の条件を伝える。それを聞いて青ざめたマルシル王はダートを振り上げ……