フレイニャのブログ

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ローランの歌(3)

マルシル王の使者たちがカール大帝のもとに到着した「ローランの歌(2)」の続きです。

 

IX

  The foremost word of all Blancandrin spake,
  And to the King: "May God preserve you safe,
  The All Glorious, to Whom ye're bound to pray!
  Proud Marsilies this message bids me say:
  Much hath he sought to find salvation's way;
  Out of his wealth
meet presents would he make,
  Lions and bears, and greyhounds leashed on chain,
  Thousand mewed hawks, sev'n hundred dromedrays,
  Four hundred mules his silver shall convey,
  Fifty wagons you'll need to bear away
  Golden besants, such store of proved assay,
  Wherewith
full tale your soldiers you can pay.
  Now in this land you've been too long a day
  Hie you to France, return again to
Aix;
  Thus
saith my Lord, he'll follow too that way."
  That Emperour t'wards God his arms he raised
  Lowered his head, began to meditate.
                      AOI.

最初にブランカンドランが王にこう言った。「神のご加護が王にあらんことを。王が祈りを捧げる,栄光ある神のご加護が!

誇り高きマルシルは,この伝言を私に託しました。我が王は救済の道を探しています。その富から然るべき贈り物をするつもりです。

獅子に熊,鎖に繋がれた猟犬,籠に入った千羽の鷹,七百のヒトコブラクダ,我が王の銀を運ぶ四百の騾馬,陛下が勝ち取る必要のある五十の馬車,検査済のビザンチン金貨,これらで陛下は全ての兵を賄えましょう。

さて陛下はこの土地に長くいすぎました。急ぎフランスへ,アーヘンへ帰還されよ。このように我が王は言っています。彼も同行すると」

かの皇帝は神に向けて両腕を掲げた。こうべを垂れ,熟慮を始めた。

meet presents は,meet が形容詞「相応しい」として働いています。It is meet (not) to-V「V する(しない)のが相応しい」なんて言い方もあります。

full tale your soldiers は,tale に「総数」という意味があるようです。

アーヘンは現在ドイツ(ノルトライン=ヴェストファーレン州)にありますが,当時はカール大帝治下のフランク王国にありました。

saith は says です。

 

X

  That Emperour inclined his head full low;
  Hasty in speech he never was, but slow:
  His custom was, at his leisure he spoke.
  When he looks up, his face is very bold,
  He says to them: "Good
tidings have you told.
  King Marsilies hath ever been my foe.
  These very words you have before me told,
  
In what measure of faith am I to hold?"
  That Sarrazin says, "Hostages he'll show;
  Ten shall you take, or fifteen or a
score.
  Though he be slain, a son of mine shall go,
  Any there be you'll have more nobly born.
  To your palace seigneurial when you go,
  At Michael's Feast,
called in periculo;
  My Lord hath said, thither will he follow
  Ev'n to your baths, that God for you hath wrought;
  There is he fain the Christian faith to know."
  Answers him Charles: "Still may he heal his soul."
                      AOI.

かの皇帝は頭を完全に垂れた。決して発言を急がず,ゆっくりだった。彼の習慣は,時間を取って話すことだった。

顔を上げると,彼の顔はとても大胆な表情である。彼は使者たちに言う。「良き知らせだ。マルシル王はずっと余の敵であった。余の前でそなたが語った正にこれらの言葉,どの程度信じられるか?」

イスラム教徒は言う。「王は人質を連れてきます。十人お預かり下さい。いや十五人,二十人でも。たとえ人質が殺されても,私自身の息子が参りましょう。身分の高い者を誰でも差し出しましょう。

我が君は言いました。危機に現れる聖ミカエルのお祭りの際,陛下が領主の宮殿に行かれる時には,そちらへ着いて行くと。神が陛下のために作った陛下の浴場までも着いて行くと。そこで我が君はキリストの教えを喜んで知りたいと言っています」

シャルルは彼に答える。「彼がその魂を癒さんことを」

tidings は文語で「便り,報せ」です。

in what measure は「どの程度(まで)」という意味です。to what degree,to what extent などとも言います。To what extent can we trust him?「どの程度まで彼を信頼できるか?」

score は「二十」です。リンカンのゲティスバーグ演説の “Four score and seven years ago...”「87年前……」が有名ですね。

called in periculo は正直分かりませんでした。in periculo が in danger の意味であることは分かったのですが……

数日後,分かりました! 実はもう1つ『ローランの歌』を英訳したものがプロジェクト・グーテンベルグで見つかりまして,読むと違う英語で書かれているんです(英訳者が違うので当然ですね)。だから意味が分からなかった場合,もう1つの方を見るという方法論が確立しました。で,見てみますと該当箇所は

when comes Saint Michael del Peril, His feast

と書かれていました。del Peril は聖ミカエルの渾名であるかのように書かれていますね。つまり「危機の聖ミカエル」です。でも聖ミカエルは危機をもたらす存在ではなく,『コトバンク(ブリタニカ国際大百科事典)』には「戦争や災難のときに出現して」とあります。つまり called in periculo は「危機の時に呼ばれる(→聖ミカエル)」ですね! ということで和訳を修正しました。

 

XI

  Clear shone the sun in a fair even-tide;
  Those ten men's mules in stall he bade them tie.
  Also a tent in the orchard
raise on high,
  Those messengers had lodging for the night;
  Dozen serjeants served after them aright.
  
Darkling they lie till comes the clear daylight.
  That Emperour does with the morning rise;
  Matins and Mass are said then in his sight.
  Forth goes that King, and stays beneath a pine;
  Barons he calls, good counsel to define,
  For with his Franks he's ever of a mind.
                      AOI.

美しい夕方に太陽が明るく輝く。その十名の騾馬を馬屋に繋ぐよう大帝は言う。果樹園の中にテントが高く張られ,その使者たちはその晩を過ごす。

十二名の下士官が正しく彼らに仕える。暗がりの中で彼らは明るい日差しがやって来るまで横たわる。

かの皇帝は朝と共に起きる。それから朝課とミサが彼の見えるところで唱えられる。かの王は前に進み,松の下に留まる。

王は相談するために諸侯を呼ぶ。その心は絶えずフランク人と共にあるからだ。

・rise は自動詞「上がる」,raise は他動詞「上げる」なのは基本ですが,この raise は目的語がなく,自動詞です。しかも意味は「上げられる」という受動態的意味です。この手のもので有名なのは sell「売れる」でしょう。日本語でも「その本は十万部を売った」などと言ったりします。気になるのは a tent が単数なのに raises と三単現活用していない点ですね。前の文で he bade them tie「大帝は繋ぐよう命令した」とあるので,he bade a tent to raise なのかなと解しました。

darkling は「暗がり;暗がりの;暗がりで」です。同じ形で名詞・形容詞・副詞になります。

 

XII

  That Emperour, beneath a pine he sits,
  Calls his barons, his council to begin:
  
Oger the Duke, that Archbishop Turpin,
  Richard the old, and his nephew Henry,
  From Gascony the proof Count
Acolin,
  
Tedbald of Reims and Milun his cousin:
  With him there were Gerers, also
Gerin,
  And among them the Count Rollant came in,
  And Oliver, so proof and so gentil.
  Franks out of France, a thousand chivalry;
  
Guenes came there, that wrought the treachery.
  The Council then began, which ended ill.
                      AOI.

かの皇帝は松の下に座り,相談を始めるために諸侯を呼ぶ。

オジェ公爵,テュルパン大司教,老リシャールとその甥アンリ,ガスコーニュからは強きアスリン伯爵,ランスのティボールドとその従兄弟ミロン。

さらにジェリエとジェラン,そして彼らの中にローラン伯爵が入って来た。そして強く優しきオリヴィエも。

フランスからやって来たフランク人たち。千名の騎士。

ガヌロンがやって来た。裏切りを為した人物だ。会議は始まった。不首尾に終わる会議が。

Oger は「イアペトゥスの地形一覧」にあったオジェ(Ogier)と取りました。テュルパンは主要人物で,アルマスの持ち主です。

fr.wikipedia.org

Acolin は上記ページのアスリン(アスリーヌ・オブ・ガスコーニュ),Tedbald of Reims はティボールド・オブ・ランスのことでしょう。

ja.wikipedia.org

Milun は同ページの「ミロン(Milon)」と判断しました。Gerin は同綴で載っていました。

Guenes が誰か分からなかったのですが,この後を読み進めていくとガヌロンを指していると判明しました。

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次回,不首尾に終わるという会議が始まります。マルシル王は降伏の使者を出して来ているので,降伏をはねつけるのでしょうか。取り敢えず次回をお楽しみに!

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Twitter 告知用あらすじ:マルシル王からの降伏の使者ブランカンドランがシャルルマーニュに貢物・人質・改宗を申し出る。大帝はローラン,オリヴィエ,テュルパン,ガヌロンら12名の臣下を呼び出す。