フレイニャのブログ

new!!→【ガチ英文法解説】カテゴリ創設! 元鉄緑会社員兼講師の英語・ゲームブログです。ツイッターの相互フォローと,英文法・英単語の質問を(ガチで)募集中です。質問・ミス指摘はコメント欄か,こちらにお願いします→ kfreynya@gmail.com

ローランの歌(19)

アンジェリエ,オテ,ベレンジェが敵将を討ちとり,ローラン,オリヴィエがもう一度敵将を討ち取った「ローランの歌(18)」の続きです。

CVII (107)

  Then Oliver has drawn his mighty sword
  As his comrade had bidden and implored,
  In knightly wise the blade to him has shewed;
  Justin he strikes, that Iron Valley's lord,
  All of his head has down the middle shorn,
  The carcass sliced, the broidered sark has torn,
  The good saddle that was with old adorned,
  And through the spine has sliced that pagan's horse;
  Dead in the field before his feet they fall.
  Says Rollant: "Now my brother I you call;
  He'll love us for such blows, our Emperor."
  On every side "Monjoie" you'ld hear them roar.
                      AOI.

それからオリヴィエは盟友ローランの頼みに応じ,自らの強力な剣を引き抜き,騎士らしくその刃を彼に見せた。彼は鉄の谷の王ジュスタンを攻撃する。彼の頭は斬られ,体は刈られ,刺繍の入ったシャツは引き裂かれ,装飾された鞍も,異教徒の馬の背骨も両断され,人馬もろともオリヴィエの足下に倒れる。

ローランは言う。「これからは兄弟と呼ばせてくれ。俺たちの皇帝はこの戦いぶりを気に入って下さるぞ」あらゆる方向から「モンジョワ」という喚声が沸く。

・ジュスタンの説明にある Iron Valley's lord はもう一つのバージョンでは (Justin) de Val-Ferrée です。val が「谷」,Ferrée が「鉄」なのでしょう。例えば Wiktionary によると gueule ferrée は iron stomach の意味です。

CVIII

  That count Gerins sate on his horse Sorel,
  On Passe-Cerf was Gerers there, his friend;
  They've loosed their reins, together spurred and sped,
  And go to strike a pagan Timozel;
  One on the shield, on hauberk the other fell;
  And their two spears went through the carcass well,
  A fallow field amidst they've thrown him dead.
  I do not know, I never heard it said
  Which of the two was nimbler as they went.
  Esperveris was there, son of Borel,
  And him there slew Engelers of Burdel.
  And the Archbishop, he slew them Siglorel,
  The enchanter, who before had been in hell,
  Where Jupiter bore him by a magic spell.
  Then Turpin says "To us he's forfeited."
  Answers Rollanz: "The culvert is bested.
  Such blows, brother Olivier, I like well."

ジェラン伯爵はソレルという馬に跨る。彼の盟友ジェリエはパッセールに跨る。二人は手綱を緩め,共に拍車を当てて速度を増し,異教徒ティモゼルに当たる。一方は盾を,もう一方は鎖帷子を撃つ。そして二人の槍は体を見事に貫き,遺体を灰褐色の戦場に投げ落とす。どちらがより素早く仕留めたかは分からないし聞いたこともない。

ボレルの息子エスペルヴェリスはガスコーニュのアンジェリエが討ち取った。そして大司教はシグロレルを討ち取った。かつて地獄に行ったことのあった魔法使いはユーピテルの魔法によって地獄へ連れ戻された。それからテュルパンは言った。「罪は贖われた」ローランは答える。「悪人破れたり。いい攻撃だな,兄弟オリヴィエよ,気に入った」

・ジェランの馬名 Passe-Cerf ですが,少なくとも cerf はフランス語で「鹿」です。例えばヒッポセルフという架空の動物(FF14 などに登場)がいますが,hippo- は「馬」なのでヒッポセルフは「ウマシカ」という意味です。ヒッポグリフは「馬グリフィン」ですね。

dic.pixiv.net

loose は「緩める」ということでしょうが,普通は loosen です。

fallow は「休閑地(の)」という意味と「淡黄色,淡褐色・灰褐色(dun)」という意味がありますが,色の方と取りました。

↓ファロージカとも呼ばれるダマジカ

ja.wikipedia.org

nimble は「敏捷な」です。numb「麻痺した,かじかんだ」に似ており,敏捷のイメージが湧きにくいので注意です。nimble はドイツ語の nehmen「取る」と関係しているそうです(取るのが早い→素早い)。ところがなんと,numb も「取る」から来ているのです(取られた→掴まれたということ?)

ガスコーニュのアンジェリエには of Burdel(e) が付いていることがあるのですが,よく分からない(調べると「女郎屋」になってしまう)ので「ガスコーニュのアンジェリエ」としています。ガスコーニュにあるボルドー(Bordeaux)のことでしょうか。

・ユーピテルはギリシアのゼウスに相当するローマの神ですね。しかし魔術師とはシグロレルのことなのでしょうか,よく分かりません。

ja.wikipedia.org

CIX

  The battle grows more hard and harder yet,
  Franks and pagans, with marvellous onset,
  Each other strike and each himself defends.
  So many shafts bloodstained and shattered,
  So many flags and ensigns tattered;
  So many Franks lose their young lustihead,
  Who'll see no more their mothers nor their friends,
  Nor hosts of France, that in the pass attend.
  Charles the Great weeps therefor with regret.
  What profits that? No succour shall they get.
  Evil service, that day, Guenes rendered them,
  To Sarraguce going, his own to sell.
  After he lost his members and his head,
  In court, at Aix, to gallows-tree condemned;
  And thirty more with him, of his kindred,
  Were hanged, a thing they never did expect.
                      AOI.

戦闘は依然として益々激しくなり,フランク軍も異教軍も物凄い攻撃を繰り出す。互いに攻撃し,互いに守り合う。余りに多くの槍が折れて血に染まり,余りに多くの軍旗がぼろきれとなり,余りに多くのフランク兵が若く強壮な者を失い,彼らはもはや母や友人と見えることもなく,峠で待つフランク軍に会うこともない。

カール大帝はそのことを悔やみ涙を流す。しかし泣いて何の益があろう。彼らは援けを得られないのだ。その日ガヌロンは彼らに害をなした。サラゴサへ赴き,自らを売った。後に手足と首を失い,アーヘンの法廷で絞首台へ送られた。そして彼と共に血族三十名以上が絞首されたが,決して予期せぬことであった。

・さらりとガヌロンのネタバレ止めてくれ笑

more hard and harder は面白いですが,普通は harder and harder です。

his members はあとで「血族」も出てくるので「一族のメンバー達」と誤読しやすいですが,ここは「手足」です。その証拠にもう一つのバージョンでは limbs「手足」となっています。例えば dismember は「ばらばらにする」です。

CX

  Now marvellous and weighty the combat,
  Right well they strike, Olivier and Rollant,
  A thousand blows come from the Archbishop's hand,
  The dozen peers are nothing short of that,
  With one accord join battle all the Franks.
  Pagans are slain by hundred, by thousand,
  Who flies not then, from death has no warrant,
  Will he or nill, foregoes the allotted span.
  The Franks have lost the foremost of their band,
  They'll see no more their fathers nor their clans,
  Nor Charlemagne, where in the pass he stands.
  Torment arose, right marvellous, in France,
  Tempest there was, of wind and thunder black,
  With rain and hail, so much could not be spanned;
  Fell thunderbolts often on every hand,
  And verily the earth quaked in answer back
  From Saint Michael of Peril unto Sanz,
  From Besencun to the harbour of Guitsand;
  No house stood there but straight its walls must crack:
  In full mid-day the darkness was so grand,
  Save the sky split, no light was in the land.
  Beheld these things with terror every man,
  And many said: "We in the Judgement stand;
  The end of time is presently at hand."
  They spake no truth; they did not understand;
  'Twas the great day of mourning for Rollant.

今や戦いは驚嘆すべき,重大なものとなった。オリヴィエとローランは見事に戦い,大司教の手からは一千もの攻撃が繰り出され,十二の将たちの戦いは申し分なく,フランク兵たちも一揆団結して戦った。百単位,千単位もの異教徒が討ち取られ,逃げなかった者は死を逃れ得ず,望むと望むまいと,その寿命を終える。フランク軍もその主要な部隊を失い,父親にも一族にも,峠で待つシャルルマーニュにも会うことはない。

フランスではとてつもない苦しみが起こり,風と黒雷の嵐が起こり,雨に霰,稲妻が至る所に落ち,これに正に応えるように,聖ミカエル聖堂からサントまで,ブザンソンからギュイツァンの港まで地面が揺れた。壁にひびが入らず立っていた家はなく,昼間に暗闇が襲い,雷鳴が空をつんざく以外に光は差さない。あらゆる者がこれらの事象を恐怖をもって眺め,多くの者が言った。「最後の審判がやって来た。この世の終わりが近い」 彼らは真実を語っていなかった。彼らは知らなかったのだ。これはローラン伯爵への哀悼なのだ。

・「重さ」を表す名詞 weight に y を付けて weighty「重い,重苦しい,重大な」(weightier - weightiest)なんて形容詞があるんですね。heavy がある以上間違いなく堅い語・文語でしょう。

with one accord は「一致団結して」という意味でしょうが,呉座勇一先生が「一揆とは一致団結のことだ」と仰っていたので「一揆団結」にしてみました。

www.youtube.com

Will he or nill の nill「嫌である,好まない」は will の否定語に当たります。「否が応でも」は Will he, nill he とも言うようです。

Saint Michael of Peril「(危難の時に現れる)聖ミカエル」はここでは場所として言っているので「聖ミカエル聖堂」のことと思われますが,モンサンミシェルのことでしょうか?

ja.wikipedia.org

Sanz はもう一つのバージョンでは Saints となっていますが,これに一番綴りが近いサント Saintes を指すと取りましたが,間違っているかもしれません。

ja.wikipedia.org

Besencun(Besançon)はブザンソンです。

↓この記事のアイキャッチ画像は以下にあります

ja.wikipedia.org

the harbour of Guitsand(Guitzand)は残念ながらどこか分かりませんでした。読みも適当です。

split には「劈(つんざ)く」という意味があるようです。

CXI

  The Franks strike on; their hearts are good and stout.
  Pagans are slain, a thousandfold, in crowds,
  Left of five score are not two thousands now.
  Says the Archbishop: "Our men are very proud,
  No man on earth has more nor better found.
  In Chronicles of Franks is written down,
  What vassalage he had, our Emperour."
  Then through the field they go, their friends seek out,
  And their eyes weep with grief and pain profound
  For kinsmen dear, by hearty friendship bound.
  King Marsilies and his great host draw round.
                      AOI.

フランク兵たちは攻撃を続ける。彼らは勇敢で決意は固い。異教徒たちは何千何万と討たれ,十万のうち二千も残っていない。大司教は言う。「我々の軍は誇らしい。地上でこれほどの軍はない。フランク人の年代記に記されるだろう。我らの皇帝がいかなる家臣を有していたかを」それから彼らは戦場を駈け,友軍を探す。そして彼らの目は堅い友情で結ばれた同志たちへの深い悲しみと苦しみで涙を流す。

マルシル王の大軍が迫る。

thousandfold(もう一つのバージョンでは by thousands)は「千単位で」ということかと思われますが,訳す時に気を付けるべきは,英語では million「百万」に達するまでは「千単位」であるということです。5 thousand なら「5千」ですが,50 thousand なら「5万」なのです。2万のフランク軍殿軍に10万のマルシル軍が襲い掛かったので,数万が討たれたならば thousandfold を「数千」ではなく「数千数万」と訳さねばならぬわけです。

www.freynya.com

Left of five score are not two thousands now Of five score (thousands), two thousands are not left now「十万のうち,二千が残されていなかった」でしょう。score は「20」ですが,five score「100」の後ろに thousands が隠れており,100×1000で10万です。なぜそれが分かったかというと,ガヌロンが「2万のローラン軍を10万で襲え」とアドバイスしていたからですね。そうでなければ「100人てどういうこと?」と苦しんでいたでしょう。なお細かいですが,2千は普通 two thousand と言い,×two thousands とは言いません。古語では two thousands と言えるのでしょうか。

・「近づく」は draw near [come near] と言いますが,ここの draw round は「ぐるりと向きを変えてまたやって来る」というニュアンスと思われます。もちろん新たな援軍を得てのことだと思います。

==

第一次攻撃は撃退したわけですが,また新たな敵が現れるわけですね。次回をお楽しみに!

↓次回はこちら

www.freynya.com

www.freynya.com

www.freynya.com

Twitter告知用あらすじ:オリヴィエはローランの求めに応じオートクレールを抜き,ジュスタンを討つ。ジェランはソレル,ジェリエはパッセールに跨りティモゼルを討つ。アンジェリエ,テュルパンも敵将を討つ。戦いは激しさを増しフランク兵も多くが討たれるが異教軍10万のうち9万8千を討ち取った。しかしマルシルの更なる大軍が迫っていた。