「フレイニャの好きな音楽(2)」に続いて,3曲めはRainbowの『シンス・ユー・ビー・ゴーン(Since You Been Gone)』(1979年,アルバム『ダウン・トゥ・アース』)の紹介です。
元々レインボーの曲ではなく,ラス・バラード(Russ Ballard)が1976年に流行らせたヒット曲のカバーです。ハードロックらしからぬ曲ですが,ヒット曲を入れてまずは売上を稼ぐという目論見があったそうで,となるとリーダーのリッチー・ブラックモアは不満だったのではないかと思うかもしれませんが,むしろリッチーの方針であり,コージー・パウエル(ドラム)の方が文句を言ったみたいですね。1981年の『アイ・サレンダー』もラス・バラードのカバーだというのを知って意外でした。
『キル・ザ・キング』のようなレインボーらしい曲ではなくこの曲を挙げた理由は,ボーカルのグラハム・ボネットが良いからです。レインボーのボーカルと言えばロニー・ジェイムス・ディオ,そしてジョー・リン・ターナーでしょうが,短髪で時にオールバックというHR/HMらしからぬ面構えはなかなかパンチの効いたものでありました。リッチーと衝突して1年半ほどで辞めました。
今回は更に,元々カバーであるレインボーの『シンス・ユー・ビー・ゴーン』のカバーを紹介します。The Classic Rock Showの『シンス・ユー・ビー・ゴーン』です。カバーバンドと言うか,コピーバンド?だと思うのですが,ボーカルのオーラが只者ではないですね。こっちもレインボー版に負けないほど見ごたえがあります。
英語に関してはまたbe goneが出てきました。狙ったわけではないのですが,「フレイニャの好きな音楽(1)」のTake on meにもbe gone「いなくなる」がありました(I'll be gone in a day or two)。北欧神話の「Asgard Stories 15」でも登場しています。
このbe goneはhave goneの別形と説明できるのですが(He has gone. → He is gone.)面白いことにこのbe goneが更に現在完了,過去完了になってhave been gone,had been goneになるんですね。『シンス・ユー・ビー・ゴーン(Since You Been Gone)』はSince you have been goneです(Since you've been gone. → Since you been gone.)
ここで更に興味深いのがSince節内が現在完了になっていることですね。学校などで現在完了を習う時,主節が現在完了,since節内は過去時制と習います。例を見ましょう。
I've been watching TV for eight hours since he went out.
彼が出かけてから私はテレビを8時間見続けている。
Five years have passed since he died.
彼が死んでから5年が経つ。
このように主節を現在完了で書いてsince節内を過去時制で書くのです。というのも現在完了は過去の一点から現在までをカバーする複合時制であり,過去の一点は過去だけを表す過去時制にすべきだからですね。
だから例えば
Since you left me, I have been lonely.
あなたが私の許を去って以来,私は(ずっと)寂しい。
みたいに書けば教科書的なのでしょうが,「いなくなる」にbe goneを使う場合はSince you have been goneなのでしょう。have been goneは「いなくなって,今もいない」という意味なのですが,そういう意味の場合はsinceの中を現在完了にするのもOKなのだそうです。『ウィズダム英和辞典』を引くと,
“主節が現在(完了)形のとき,since節中の動詞は通例過去形だが,その状態が現在も続いている場合は現在完了形が用いられる”
とあります。
またこの曲の後半にはtelegram「電報」という単語が登場するのでtelegram「テレグラム」とtelegraph「テレグラフ」の違いを確認しておきましょう。 これはざっくりいうと可算か不可算かです。
a telegram「[可算](一本の)電報,電信」
telegraph「[不可算](制度・仕組みとしての)電報,電信;[可算]電信機」
このように意味は基本的に同じで,可算[C]か不可算[U]かの違いがある組として
[C] a machine / [U] machinery
[C] a scene / [U] scenery
[C] a poem / [U] poetry 注:[C] a poetは「詩人」
は押さえておきましょう([C]は
更にこのtelegramの前のyour poison letterですが,「毒入りの手紙」ではなく「毒舌的な手紙,嫌な内容の手紙」です。形容詞poisonにそういう意味があります。「毒舌的な批評」と言う意味でpoison criticismと言うのも一興ですね。