フレイニャのブログ

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Asgard Stories 15:トールのハンマー(2)

Asgard Stories

Asgard Stories 14の続きです。ブロック&シンドリ兄弟とロキが首をかけて争っています。

Brock thought this an easy task, but his brother had not long been gone when a huge fly came in and buzzed about his face, and bothered him so that he could hardly keep on blowing; still he was able to finish his work, so that when Sindri came back, they took out of the fire an enormous wild boar, which gave out light, and could travel through the air with wonderful speed. On the second day Sindri threw another lump of gold into the fire, and left his brother to blow the bellows. Again the buzzing, stinging fly came, and was even more troublesome than before; but Brock tried very hard to be patient, and was able to bear it without stopping his work until Sindri returned. Then they took from the fire a magic ring of gold, from which eight new rings fell off every week.

こんな仕事は簡単なことだとブロックは思いましたが,兄弟が出かけて間もないうちに巨大なハエが入ってきてブンブンとブロックの鼻の周りを飛び回り,邪魔をしたのでブロックはふいごを吹き続けるのが困難になりました。それでも彼は仕事をやり遂げたので,シンドリが帰ってくると,彼らは炉の中から巨大な猪を取り出しました。これは光を放ち,空中を素晴らしいスピードで移動するものでした。2日目,シンドリはまた別の金塊を炉に投げ入れ,ふいごを吹く仕事をブロックに任せました。またもやブンブン言って刺すハエが入ってきて,前よりも一層鬱陶しくなりました。しかしブロックは懸命にこらえて,シンドリが戻るまで仕事を中断させることなく耐えることができました。それから兄弟は炉から魔法の金の環を取り出しました。そこから毎週8つの新しい環がこぼれ落ちるというものでした。

hadn’t long... when~は「~とき,長くは……していなかった」わけですから,「……すると間もなく~だった」ということです。なお,been goneって変では?と思った人は流石です。goは普通 have [has] goneですから。ただ古めかしい英語でbe gone,be comeといった表現が可能です。Spring has come. をSpring is come. とも言えるのです。現代ドイツ語・フランス語では,これは普通に起こります(Der Mai ist gekommen.=May is come.)。現代英語でもBe gone.は「消えちまいな,失せろ」という意味です。私の好きなジェシカ・アルバ主演『ダンス・レボリューション』で主人公がライバルから言われるセリフです。

・they took an enormous wild boar out of the fireを,they took out of the fire an enormous wild boarと語順変更していますね。 「何を取り出したか」という大事なことを後ろで言いたいのと,wild boarにwhich以下の説明が続いて長くなるためですね。兄弟が作ったこの金の猪はグリンブルスティです。フレイの乗獣になります。

give outは「(光)を放つ」という意味です。give offとも言います。

travelは「旅行(する)」の他に「移動(する)」と訳せます。

・try to-Vは基本ですがそれを応用したtry hard to-Vは便利な表現です。

・2日目に取り出したリングはドラウプニルです。ネットを色々見ると「腕輪」となっていたり「指輪」となっていたりしますので「環」にしておきました。この本ではevery weekとなっていますがWikipediaによるとevery ninth night「9夜ごと」です。ただこの神話の時代に1 week = 9 daysだったらevery weekで正しいですね。そこでWikipediaでweekを調べると古代ギリシアでは1週8日が見られ,バルト海諸国やウェールズでは1週9日もあったそうです。

 

The third day a lump of iron was put into the fire, and Brock was again left alone. In came the cruel fly,—have you guessed that it was really that mischief-maker Loki? He bit the poor little dwarf so hard on the forehead that the blood ran down into his eyes, and blinded him so that he could no longer see to do his work. Poor Brock had to stop just before Sindri came home, but not before the hammer which they were making in the fire was nearly finished, only the handle came out rather too short. This magic hammer was named Miölnir. It had the power of never missing its mark, and would always return to the hand which threw it.

3日目は鉄の塊が炉に入れられ,またブロックが1人残されました。意地悪なハエが入ってきました──本当はいたずら者のロキだと思いましたか? ハエは可哀相なドワーフの額をあまりにも強く刺したので,血が彼の両目に入ってしまい,目が見えなくなってこれ以上仕事が続けられなくなりました。可哀相なブロックはシンドリが帰ってくる直前に中断するしかありませんでしたが,炉の中で作っていたハンマーが完成したギリギリ後でした。ただし柄の部分がかなり短くなってしまいましたが。この魔法のハンマーはミョルニルと名付けられました。それは決して的を外さない力を持ち,投げた手に必ず戻ってきました。

・最後のミョルニルは金ではなかったようですね。「狙いを外さない」「手元に戻る」のはグングニルと同じですね。

・「人の腕を掴む」とか「人の顔を殴る」とか言う時,take one’s armやhit one’s faceよりもtake one by the arm,hit one in the faceを使う傾向があります。前2者も正しいですが,前2者は「腕」「顔」といった〈人間ではない物〉を掴んだり殴ったことになるのに対し,後2者は「人間」を掴んだり殴ったりしたと言う効果があります。まず「あいつは俺を殴った」he hit meと言い,どこを殴ったかをin the faceと続けるわけです。細かいですが×he hit me in my faceではなくhe hit me in the faceと言います。というわけで,He bit the dwarf’s foreheadではなくHe bit the dwarf on the foreheadと言っているわけです。

 

When Loki appeared at last before the Æsir, with the two dwarf brothers and their gifts, it was declared that they had made the finest things, for the hammer, which was given to Thor, would surely be most useful in keeping the giants out of Asgard. When Loki found that the judgment was against him, he started to run away; but Thor soon made him turn back by threatening to throw his hammer after him. Then Loki had to collect his wits, and think of some way to escape losing his head, instead of making the dwarfs pay the forfeit, as he had expected. At last he told Brock and Sindri that they could have his head, according to the agreement, but as nothing had been said about his neck, they could not, of course, touch that. Thus the wily Loki, by his wit, saved his life.

ついにロキが2人のドワーフと彼らからの贈り物を伴ってエーシル達の前に現れた時,彼らは最も優れた物を作ったという宣言がなされました。というのもトールに贈られたハンマーが,巨人たちをアースガルズから追い出すために非常に有益となるに違いなかったからです。ロキは判決が自分に不利だと気づくと逃げ出しました。しかしすぐにトールがハンマーを投げるぞと脅してロキを戻らせました。それでロキは知恵を絞って,ドワーフに犠牲を払わせるという期待に反して頭を失うという事態を避ける方法を思いつかねばなりませんでした。ついに彼はブロックとシンドリに,取り決め通り頭をもらっていいが,首については何も言っていないので,当然首には触れられないと言いました。こうして狡猾なロキは自分の命を救ったのでした。

ミョルニルが特に評価された理由が納得ですね。

threaten to-Vは「Vするぞと脅す」で,threaten that S will Vとも言えます。threaten to-Vの方は「Vするおそれがある」の意にもなります。

・throwはatやto,towardを使うのですが,afterを使っているところが面白いです。恐らく魔法の力でどこまでも追いかけるイメージでafterを使ったのでしょう。

・勇気や知恵を振り絞る時collectが使えます。

think ofは(1)(通例進行形で)「…のことを考える」,(2)(think of A as Bで)「AをBとみなす」,(3)「思いつく」があります。

forfeitは「罰金」「罰ゲームで取り上げられるもの」です。「フォーファイト」ではなく「フォーファト」/fɔ́ːrfət/ です。

wily(ワイリー)は「狡猾な」で,wile「悪だくみ,騙す」から来ているようです。

・ロキの言い訳,ちょっと子どもじみています。

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ブロックとシンドリも,その前のシヴの髪,船,グングニルを作ったドワーフイーヴァルディの息子たち)もすごいですね。次回はトールが旅に出る話になります。

↓次回です

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