フレイニャのブログ

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ローランの歌(4)

ミュルグレス

ミュルグレスはガヌロンの剣だ

マルシル王からの降伏の使者を受けて,カール大帝が側近たちを集めた「ローランの歌(3)」の続きです。

 

XIII

  "My Lords Barons," says the Emperour then, Charles,
  "King Marsilies hath sent me his messages;
  Out of his wealth he'll give me weighty masses.
  Greyhounds on leash and bears and lions also,
  Thousand mewed hawks and seven hundred camels,
  Four hundred mules with gold Arabian charged,
  Fifty wagons,
yea more than fifty drawing.
  But into France demands he my departure;
  He'll follow me to Aix, where is my Castle;
  There he'll receive the law of our Salvation:
  Christian he'll be, and hold from me his marches.
  But I know not what purpose in his heart is."
  Then say the Franks: "
Beseems us act with caution!"
                      AOI.

「我が諸卿たちよ」それでシャルル大帝は言う。「マルシル王が使者を送って来た。その富からかなりの部分を余に贈るらしい。

紐に繋がれた猟犬や,熊に獅子,籠に入った千羽の鷹に七百の駱駝,アラビアの金を積んだ四百の騾馬,五十の馬車,いや五十を越える数の馬車を。

しかし彼は余がフランスへ発つことを要求しておる。彼は余の城があるアーヘンまで付いて来るらしい。そこで我らが救済の法を受け入れる,つまりキリスト教徒となり,余の封臣となる。しかし彼の本心はどこにあるか分からぬ」

するとフランク人たちは言う「用心して行動するのが宜しいかと!」

yea more than fifty drawing はよく分かりませんでした。気になるのは fifty の後の drawing が複数形になっていないことです。drawing more than fifty なのかも知れませんが,いずれにせよ分かりませんでした。マルシル王からの贈り物を列挙しているだけなので,大意に影響ないと判断して無視しました。

→もう1つの英語版で分かりました。こちらには素直に

And more than fifty chariots loaded full

とあります。これを参考に和訳を修正しました。

it beseems 人 to-V で「V するのが相応しい」です。

 

XIV

  That Emperour hath ended now his speech.
  The Count Rollanz, he never will agree,
  Quick to reply, he springs upon his feet;
  And to the King, "Believe not Marsilie.
  Seven years since, when into Spain came we,
  I conquer'd you
Noples also Commibles,
  And took
Valterne, and all the land of Pine,
  And
Balaguet, and Tuele, and Sezilie.
  Traitor in all his ways was Marsilies;
  Of his pagans he sent you then fifteen,
  Bearing in hand their olive-branches green:
  Who, ev'n as now, these very words did speak.
  You of your Franks a Council did decree,
  Praised they your words that foolish were in deed.
  Two of your Counts did to the pagan speed,
  
Basan was one, and the other Basilie:
  Their heads he took on th' hill by
Haltilie.
  War have you waged, so on to war proceed,
  To Sarraguce lead forth your great army.
  All your life long, if need be, lie in siege,
  
Vengeance for those the felon slew to wreak."
                      AOI.

かの皇帝は演説を終えた。ローラン伯爵は決して同意しない。パッと立ち上がり,素早く返答する。

王に対し言う「マルシルを信じなさるな。私達がスペイン入りして七年になりますが,私は陛下の為にノプレ,コミブレ,ヴァルターネ,パインの土地の全て,バラゲー,トゥエレ,セジリーを攻略しました。

マルシルはあらゆる面で裏切り者でした。異教徒の中から15人を遣わして来ました。手に緑のオリーヴの枝を持たせながら。

彼らは正に先程のような言葉を言いました。陛下はフランク人を集め会議を催しました。彼らは陛下の言葉を称えましたが,実際愚かなことでした。

伯爵の二人が異教徒の下へ赴きました。バサンとバジーレです。二人の首を彼はハルティレ近くの丘で取りました。陛下は戦を起こしました。大軍勢をサラゴサに向けました。陛下は一生,包囲に費やされるでしょう。あの悪党が殺した者たちの復讐を成すために」

Noples は凄くナポリ(Naples)っぽいですが,カール大帝軍がスペイン入りしてからローランが奪取した地名ですから,スペインの町でしょう。もう1つの英語版では Noplés and Commiblés です。

ヴァルターネは「イアペトゥスの地形一覧」にありました。

・バラゲーは以下の記事があります。

ja.wikipedia.org

・人名のバサンとバジーは「イアペトゥスの地形一覧」にありました。地名の Haltilie は同ページにハルティレ(ハルティレロ)として載っていました。

Vengeance for those the felon slew to wreak は to wreak vengeance  for those (whom) the felon slew「その悪党が殺した者たちの復讐をするために」ですね。wreak は「なす,加える」で wreak vengeance「復讐をなす」,wreak havoc on...「……に破滅をもたらす」などの表現があります。

・ローランが言っているのは,以前にもマルシルが降伏すると見せかけてバサンとバジーレを騙し討ちにしたということですね。

 

XV

  That Emperour he sits with lowering front,
  He clasps his chin, his beard his fingers tug,
  Good word nor bad,
his nephew not one.
  Franks hold their peace, but only
Guenelun
  Springs to his feet, and comes before Carlun;
  Right haughtily his reason he's begun,
  And to the King: "Believe not any one,
  My word nor theirs, save whence your good shall come.
  Since he sends word, that King Marsiliun,
  Homage he'll do, by finger and by thumb;
  Throughout all Spain your writ alone shall run
  Next he'll receive our rule of Christendom
  Who shall advise, this bidding be not done,
  Deserves not death, since all to death must come.
  Counsel of pride is wrong: we've fought enough.
  Leave we the fools, and with the wise be one."
                      AOI.

かの皇帝はうつむいて座っている。顎先を握り,顎髭を指で引っ張る。甥の助言は良いとも悪いとも言えぬ。

フランク人たちは静寂を保っているが,ガヌロンだけがパッと立ち上がり,カール大帝の前に来る。

高慢に彼は説得を始める。そして王に言う「誰も信じなさるな。私の言葉も彼らの言葉も。ただどこから陛下の利点が来るかだけを考えなされ。

かのマルシル王は使者を遣わしました。彼は臣従をするつもりです。陛下の権限がスペイン中に及ぶということです。

次に彼はキリスト教の法を受け入れます。この要請に乗らないよう助言する者が死に値したりはしません。誰でも死ぬのですから。

誇りを勧めるのは間違いです。もう十分戦いました。愚か者は放っておいて,賢き者につきましょう。

・彼(カール大帝)の甥とはローランのことです。

Guenelun は流石にガヌロンでしょう。

Throughout all Spain your writ alone shall run は「陛下の令状(your writ)のみがスペイン中を駆け巡る」ということで「陛下の権限がスペイン中に及ぶ」です。

・かなり自信がないですがガヌロンは降伏を飲みましょうという意見ですね。

 

XVI

  And after him came Neimes out, the third,
  Better vassal there was not in the world;
  And to the King: "Now rightly have you heard
  Guenes the Count, what answer he returned.
  Wisdom was there, but let it well be heard.
  King Marsilies in war is overturned,
  His castles all in ruin have you hurled,
  With catapults his ramparts have you burst,
  Vanquished his men, and all his cities burned;
  
Him who entreats your pity do not spurn,
  Sinners were they that would to war return;
  With hostages his faith he would secure;
  Let this great war no longer now endure."
  "Well said the Duke." Franks utter in their turn.
                      AOI.

そして彼の後に三人目のネームが立つ。これ以上の家臣はいないほどの人物だ。

そして彼は王に言う「今まさに陛下はガヌロン伯爵の言葉を聞きました。彼の言葉には賢明さがあります。よく耳を傾けましょう。

マルシル王は戦いで打ち負かされました。彼の城を陛下は全て廃墟に変えました。彼の城壁は弩で破壊しました。彼の配下を打ち負かし,彼の街は全て焼きました。

陛下の慈悲を請う者を撥ねつけてはなりません。再び戦争をしようとする者がいればそれは罪人なのです。

彼は人質で忠義を保証しようとしています。この大戦争を今こそ終わらせましょう」

「公爵よ良くぞ申した」フランク人達は言う。

Neimes は以下のページによると Naimon の別形の一つのようです(他に Naime, Namo, Namus)そこで初め「ナイモン」と訳したのですが,ウィキペディアを見ると「ネーム」と書かれていましたので,日本ではこちらの方で定着していると判断し「ネーム」に直しました。バイエルンバヴァリア)公だそうです。更に “Charlemagne's wisest and most trusted advisor”(シャルルマーニュの最も賢明で最も信頼された助言者)とあります。

en.wikipedia.org

Him who entreats your pity do not spurn は分かりやすく書き直すと Do not spurn those who entreat your pity「陛下の慈悲を乞う(entreat)者をはねつける(spurn)な」です。he who... は堅いので anyone who... とか those who... とすると柔らかいです。

・三人目だからローランとガヌロンの意見を折衷するかと思いきや,ガヌロンの意見に同意でしたね。

 

XVII

  "My lords barons, say whom shall we send up
  To Sarraguce, to King Marsiliun?"
  Answers Duke Neimes: "I'll go there for your love;
  Give me therefore the wand, also the glove."
  Answers the King: "
Old man of wisdom pruff;
  By this white beard, and as these cheeks are
rough,
  You'll not this year so far from me remove;
  Go sit you down, for none hath called you up."

「諸卿たちよ,誰がサラゴサへ,マルシル王の下へ行くべきと思うかね?」

ネーム公が言う「私が陛下のために参りましょう」それゆえ身分を示す杖と手袋をお貸し下さい。

王は答える。「そなたは相談役の賢人じゃ。この白髭にかけて,そしてこの毛むくじゃらの頬にかけて,そなたは今年の間,余のもとを離れてはならぬ。そなたは座るが良い。誰もそなたを呼んではおらぬ」

Old man of wisdom pruff は pruff の意味が分からないためカットしました。『ランダムハウス英和大辞典』にも Wiktionary にも載っていないって,相当ですよ。

→もう1つの英語版では A sage you are in council, well I know でした。相談役だから行かせないということでしょうね。

rough には「毛や髭を剃っていない」の意味があります。

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Wikipedia によるとネームはカール大帝が最も信頼した助言者です。だから常に側に置いておきたかったのでしょう。誰がマルシル王の下に赴くのでしょうか。次回をお楽しみに!

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Twitter 告知用あらすじ:マルシル王の降伏の申し出に対し,ローランは拒絶と討伐を主張。しかし大帝の義弟ガヌロンとバイエルン公ネームは降伏を受け入れることを進言。誰が返答使になるかという話に。