フレイニャのブログ

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ローランの歌(9)

ガヌロンがカール大帝の書簡をマルシル王に読ませた「ローランの歌(8)」の続きです。

 

XL (40)

  Then says Marsile "Guenes, the truth to ken,
  Minded I am to love you very well.
  Of Charlemagne I wish to hear you tell,
  He's very old, his time is nearly spent,
  Two hundred years he's lived now, as 'tis said.
  Through many lands his armies he has led,
  So many blows his buckled shield has shed,
  And so rich kings he's brought to beg their bread;
  What time from war will he draw back instead?"
  And answers Guenes: "Not so was Charles bred.
  There is no man that sees and knows him well
  But will proclaim the Emperour's hardihead.
  Praise him as best I may, when all is said,
  Remain untold, honour and goodness yet.
  His great valour how can it be counted?
  Him with such grace hath God illumined,
  Better to die than leave his banneret."

それからマルシルは言う。「真実の見えるガヌロンよ。私はそなたと仲良くやりたいと思う。シャルルマーニュについてそなたが話すのを聞きたい。彼は大変高齢だ。彼の寿命は尽きかけている。もう200年も生きたなどと言われている。

彼はその軍を多くの国に派遣してきた。彼の曲がった盾は余りに多くの攻撃を弾いてきた。そしてまた豊かな王たちを物乞いにさせて来た。何時になったら戦を辞めるであろうか?」

そしてガヌロンは答える。「シャルルはそのような者ではありませぬ。彼を直接よく知る者で,かの皇帝の大胆さを褒め称えぬ者はいないでしょう。

何を言われても,確かに私は彼を大いに称賛します。あれほど勇敢で優れた者はおりませぬ。彼の勇敢さは計り知れませぬ。神はそのような祝福を彼に与えたのです。彼の旗を離れるくらいなら死んだ方が良いでしょう」

ken は「知る,見える」です。やや自信がないですが Guenes, the truth to ken は Guenes, to ken the truth「真実を知るガヌロン」と解しました。

be minded to-V は「V したい気持ちだ(be inclined to-V)」です。

There is no man but V は受験生にも有名な「V しない者はいない」ですね。更に no man にも関係代名詞がついており,There is no man that V1... but V2...「V1 する者の中で V2 しない者はいない」となっています。一つの先行詞に関係代名詞(今回は that と but)が続くものを《関係詞の二重限定》と言います。《関係詞の二重限定》の本質は絞り込みです。つまり先ず全ての人の中から「カール大帝を直接よく知る者」に限定し,その中で更に「彼の大胆さを褒め称えない者」に限定し,この二つの条件に合致する者はいない,というわけです。

hardihead は『ランダムハウス英和大辞典』に載っていませんでしたが,「hardy な head」と解しました。hardy は「逞しい,大胆な,向こう見ずの」です。この部分,もう一つのバージョンでは no man Alive who sees and knows him but will tell How our great Emperor is Baron true となっていました。Baron true = true Baron というのは,例えば「石油王」を an oil baron と言ったりするように「真の王」のことでしょう。「彼のことを直接よく知る者で,我々の偉大なる王が真の王であると言わない者はいないだろう」ですね。

Remain untold, honour and goodness yet のところはよく分かりませんでした。もう一つのバージョンでは I could not praise and honor him enough, For no man lives so valiant and so good. となっています。couldn't ... enough は「十分には……できない」→「幾ら……してもし足りない」です。「彼のことは幾ら褒めても褒めきれない。というのもあれほど勇敢で優秀な生き方をする者はいないから」となっています。

→それでもう一度調べてみると untold には「語られない」のほか「語り尽くせない」の意味があるようです。「彼の honor と goodness は語り尽くせない」ということでしょうか。

XLI

  The pagan says: "You make me marvel sore
  At Charlemagne, who is so old and hoar;
  Two hundred years, they say, he's lived and more.
  So many lands he's led his armies o'er,
  So many blows from spears and lances borne,
  And so rich kings brought down to beg and
sorn,
  When will time come that he draws back from war?"
  "Never," says Guenes, "so long as lives his nephew;
  No such vassal goes neath the dome of heaven;
  And proof also is Oliver his henchman;
  The dozen peers, whom Charl'es holds so precious,
  These are his guards, with other thousands twenty.
  Charles is secure, he holds no man in terror."
                      AOI.

異教徒は言う。「そなたの話を聞いて,シャルルマーニュには実に恐れ入った。それほど高齢で白髪であるというのに。

二百年,いやそれ以上も生きていると言われるのだ。非常に多くの国に彼は軍を送った。非常に多くの槍やランスからの攻撃を耐えてきた。そして非常に豊かな王たちを物乞いの地位に落としてきた。

何時になったら彼は戦から手を引くだろうか?」

「引かないでしょうな」とガヌロンは言う。「彼の甥が生きている限りはです。この天の下にあのような家臣はおりませぬ。そして彼の腹心オリヴィエもまた屈強です。

シャルルがとても大事にしている十二人の同輩たち。これらはローランの護衛であり,更に二万人の兵がいます。シャルルは安泰です。誰も恐れません」

sorn「たかる」は beg とほぼ同じ意味です。o'er (over) や borne 等との韻のためにこのようなマイナー語を使っています。

vassal は「封臣」,neath は beneath (=under) です。

proof は「(形容詞)耐える,強い」という意味があります。fire-proof「耐火性の」,water-proof「防水の」などの元ですね。child-proof「子どもが触っても壊れない」なんて語もあります。

XLII

  Says Sarrazin: "My wonder yet is grand
  At Charlemagne, who hoary is and blanched.
  Two hundred years and more, I understand,
  He has gone forth and conquered many a land,
  Such blows hath borne from many a trenchant lance,
  Vanquished and slain of kings so rich a band,
  When will time come that he from war draws back?"
  "Never," says Guene, "so long as lives Rollanz,
  From hence to the East there is no such vassal;
  And proof also, Oliver his comrade;
  The dozen peers he cherishes at hand,
  These are his guard, with twenty thousand Franks.
  Charles is secure, he fears no living man."
                      AOI.

イスラム教徒は言う。「シャルルマーニュには本当に驚きだ。白髪の老人であるのに。二百年以上も生きている。数多くの国に進軍し征服した。数多くの鋭い槍からの攻撃を耐えてきた。豊かな王たちを破り,殺してきた。

何時になったら戦から手を引くだろう?」

「決して」ガヌロンは言う。「ローランが生きている間は。ここから東方に至るまで,あのような家臣はおりませぬ。彼の盟友オリヴィエもまた強力です。

彼には十二名の大切な仲間がいます。彼の護衛であり,二万人のフランク人がいます。シャルルは安全です。この世の者を恐れません」

・面白いことに前節の内容を繰り返しています。それほど重要な内容だということでしょう。それは,ローランが生きている限りシャルルは戦を辞めない。だからローランを共に除こう,ということです。

XLIII

  "Fair Master Guenes," says Marsilies the King,
  "Such men are mine, fairer than tongue can sing,
  Of knights I can four hundred thousand bring
  So I may fight with Franks and with their King."
  Answers him Guenes: "Not on this journeying
  Save of pagans a great loss suffering.
  Leave you the fools, wise counsel following;
  To the Emperour such wealth of treasure give
  That every Frank at once is marvelling.
  For twenty men that you shall now send in
  To France the Douce he will
repair, that King;
  In the rereward will follow after him
  Both his nephew, count Rollant, as I think,
  And Oliver, that courteous paladin;
  Dead are the counts, believe me if you will.
  Charles will behold his great pride perishing,
  For battle then he'll have no more the skill.
                      AOI.

「ガヌロン殿」マルシル王は言う。「そのような部下は私にもいる。口で讃えられぬ程のな。四十万の騎士を連れて来ることができる。だから私はフランク人と彼らの王と戦うことができるのだ」

ガヌロンは答える。「この遠征ではどうですかな。異教徒に大きな損害が出るでしょう。愚か者は捨て置き,賢明な助言に従いましょう。豊かな富を与えるのです。フランク人が一斉に驚くような富を。

貴方が差し出させられる二十名の人質と引き換えに,かの王は甘美なフランスに還るでしょう。彼を追って殿軍には,思うに彼の甥,ローラン伯爵と,あの礼儀正しい騎士,オリヴィエが続くでしょう。

もし私を信じて下されば,二人の伯爵を死に追いやることができます。シャルルはその尊大な気持ちが失せるのを見るでしょう。二人がいなくなれば彼は戦う術を失うのですから。

repair には「修理する」のほか「赴く」の意味があるのに注意して下さい。『ジーニアス英和辞典』には(やや古正式)とあります。

rereward は rearward「後尾,殿軍(しんがり)」です。

・この then「そうなれば」は「あの二人がいなくなれば」と解しました。

XLIV

  Fair Master Guene," says then King Marsilie,
  "Shew the device, how Rollant slain may be."
  Answers him Guenes: "That will I soon make clear
  The King will cross by the good
pass of Size,
  A guard he'll set behind him, in the rear;
  His nephew there, count Rollant, that rich peer,
  And Oliver, in whom he well believes;
  Twenty thousand Franks in their company
  Five score thousand pagans upon them lead,
  Franks unawares in battle you shall meet,
  Bruised and bled white the race of Franks shall be;
  I do not say, but yours shall also bleed.
  Battle again deliver, and with speed.
  So, first or last, from Rollant you'll be freed.
  You will have wrought a high chivalrous deed,
  Nor all your life know war again, but peace.
                      AOI.

「ガヌロン殿」マルシル王は言う。「どういった手段で,ローランを討ち取るのかね」

ガヌロンは彼に答える。「直ぐにお示しします。かの王はシズレの峠を越えるでしょう。彼は後尾に護衛を置くでしょう。彼の甥,あの豊かな貴族,ローランを。そして彼が良く信頼しているオリヴィエを。

二万人のフランク人が二人に従います。十万人の異教徒を率い,二人を襲いましょう。フランク人たちに不意打ちをかけるのです。フランク族は傷つき,血を流して青ざめるでしょう。

貴方の兵に被害が出ないとは言いません。再び戦を,迅速に起こすのです。それで遅かれ早かれ,ローランから解放されるでしょう。貴方は大きな勲を成し遂げるのです。貴方は一生,戦から解放され,平穏に暮らせるでしょう。

Size はもう一つのバージョンでは Sizre となっています。pass は「峠,峠道」です。フランスとスペインの国境にあるピレネー山脈のどこかの峠でしょう。

ja.wikipedia.org

en.wikipedia.org

XLV

  "Could one achieve that Rollant's life was lost,
  Charle's right arm were from his body torn;
  Though there remained his marvellous great host,
  He'ld not again assemble in such force;
  
Terra Major would languish in repose."
  Marsile has heard, he's kissed him on the throat;
  Next he begins to undo his treasure-store.
                      AOI.

「ローランの命が失われれば,シャルルの右腕がもがれたも同然です。彼にはまだ驚くべき大軍が残っていますが,以前のような強力な力を集めることはないでしょう。大国は平和になるでしょう」

マルシルはそれを聞き,彼の首元にキスをした。次に王はしまっていた宝物を出し始めた。

Terra Major に白目になりましたが,もう一つのバージョンでは Great Land となっておりホッとしました。しかし油断できないのがこの Terra Major がどこを指すかです。もう一つのバージョンでは And the Great Land at last would rest in peace「そして Great Land は遂に平和に休むでしょう」となっており,スペインを指しているように思えます。ところがこちらのバージョンの languish は「衰弱する,しおれる」といった悪い意味なのです。そこで Terra Major はフランク王国を指していると解釈しました。

→次の「ローランの歌(10)」を訳している時,the great land of Spain という表現が出てきたので,やっぱりスペインと取ります笑

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とにもかくにも,マルシルは宝物を出し始めたので,シャルルに見せかけの降伏をするというガヌロンの策を容れたわけですね。次回をお楽しみに!

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Twitter告知用あらすじ:マルシル王はガヌロンにシャルルマーニュのことを尋ねる。何時になったらシャルルは戦を止めるかという問いに対して,ローランが生きている限りは止めないと答える。ガヌロンは二万のフランク軍殿軍に対し十万の兵で襲い掛かれと教える。