フレイニャのブログ

new!!→【ガチ英文法解説】カテゴリ創設! 元鉄緑会社員兼講師の英語・ゲームブログです。ツイッターの相互フォローと,英文法・英単語の質問を(ガチで)募集中です。質問・ミス指摘はコメント欄か,こちらにお願いします→ kfreynya@gmail.com

安倍首相上下両院演説(2015年)英語書き取り:その1

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安倍首相が2020年8月に辞意を表明したのを機にツイッターでこの演説が話題になっていました。私も視聴して感銘を覚えたので,英語ブログを書く者としてこの英語を書き起こし,解説することに挑戦してみたいと思います。スクリプトはネットに上がっていますが,それではやり甲斐がないので自力で書き取ってみたいと思います。

聞き取り能力の訓練として書き取りは有効です。聞き取れているなら書き取れるはずであり,書き取れていれば聞き取れていることになるからです。綴りのミスを除けば,聞き取れていることと書き取れていることは同値のはずです。

何回か繰り返し聞いて「これ以上聞いても分からない」レベルまで行ったらスクリプトを見ましょう。書き取れなかった箇所が自分が知らなかった表現,あるいは身についていない音です。そこでその表現を覚えたり「この語句はこう発音されるのだ」と覚えましょう。今回の演説は45分のようです。全部やるのに5時間はかかるでしょうから,5分ずつ9回に分けてやりたいと思います。今回書き取れなかったり,書き漏らしたり,書き取れていたつもりが間違っていた箇所は斜体にしています。がついている所は説があります

Mr. Speaker, Mr. vice-President, distinguished members of the Sanate, and the House, distinguished guests, ladies and gentlemen

議長,副大統領,優れた上院・下院の議員の皆さん,優れたゲスト,紳士淑女の皆さん,

viceが「副」の意を持つことは2020/4/10の記事で解説しました。

distinguishedは「高名な,傑出した,優れた」ですね。

・複数形のgentlemenが「ジェントルメン」ではなく「ジェントルマン」でいいことは2020/4/27の記事で解説しました。

 

Back in June, 1957, Nobusuke Kishi, my grandfather, standing RIGHT HERE as Prime Minister of Japan, began his address by saying, and I quote,

振り返ること1957年,私の祖父岸信介は,まさにここに立って,日本の首相として,演説をこう言って始めました。引用します。

I quoteは聞き取れませんでした。

 

"It is because of our strong belief in democratic principles and ideas that Japan associates herself with the free nations of the WORLD."

「日本が世界の自由主義諸国と連帯するのは,私達が民主主義的原則と思想の正しさを強く信じているからです」と。

it is ... that 〜の強調構文になっています。後ろから前に戻って「〜であるのは……だ」と訳すか,英語の順番にしたければ「……こそ〜だ」とします。「Japanがassociatesするのはbecause以下だから」「bacause以下だからこそJapanはassociateするのだ」というわけです。

belief in ... はbelieve in ...の名詞化ですが,believe in ... は(i)「……の存在を信じる」,(ii)「……を信用する」,(iii)「……の価値・正しさを信じる,……を信条とする」の3択です。今回はdemocratic principles and ideasが続くので(iii)です。

associate oneself with ... は「……と連帯する」です。herselfとあるのは,国名を女性で受けることがあるからです。「国」の発想です。

 

58 years have passed. Today I'm honored to stand here as the first Japanese Prime Minister ever to address your joint session. I extend my heartfelt gratitude to you for inviting me.

58年が経ちました。本日,日本の首相としてここに立ち,初めて両院合同議会に演説することを光栄に思います。私を招待してくれたことに心からの感謝を述べます。

the first ... (ever) to-Vで「最初にVする……」です。

address ... は「……に対して演説する」の意があります。

extendは「延ばす」ですが「(気持ちを)述べる」の意があります。「のばす」と「のべる」。日本語でも音が似ていますね。

heartfelt「心からの」は単語として知りませんでした。

 

I have lots of things to tell you, but I'm here with no ability, nor the intention, to filibuster. As I stand in front of you today, the names of your distinguished colleagues that Japan welcomed as your ambassadors come back to me.

皆さんには言いたいことがたくさんあります(笑いが起こる)が,私は長々と演説して議事妨害する能力も,意図もありません(笑い)。本日皆さんの前に立つと,日本が皆さんの大使として受け入れた,皆さんの優れた同僚たちの名前が思い出されます。

filibusterは「長々演説して議事妨害する」という意味のようです。filibusterという単語の所で笑いが起こっていますね。

 

The honorable Mike Mansfield, Walter Mondale, Tom Foley, and Howard Baker. On behalf of Japanese people, thank you so very very much for sending us such shining champions of DEMOCRACY.

それはマイク・マンスフィールドウォルター・モンデール,トム・フォーリー,そしてハワード・ベイカーの諸氏です。日本人を代表して,このような輝かしい民主主義の擁護者を送ってくださって本当に,本当に感謝しています。

・歴代駐日アメリカ大使を列挙しています。マンスフィールド大使は1977-1988,モンデール大使は1993-1996,フォーリー大使は1998-2001,ベイカー大使は2001-2005です。

Ambassador Caroline Kennedy also embodies the tradition of American democracy. Thank you, thank you for, Ambassador Kennedy,  for all the dynamic work you have done for all of us.

キャロライン・ケネディ大使もアメリカの民主主義の伝統を体現しています。ケネディ大使,あなたが私達みなのために行ってくれた精力的な活動に大変感謝申し上げます。

embodyは「具体化する,具現する,具体的に示す」です。

 

We all miss Senator Daniel Inouye, who symbolized the honor and achievements of Japanese Americans.

私達は皆,ダニエル・イノウエ上院議員がここにいないことを寂しく思います。日系アメリカ人の名誉を業績を象徴した人物でした。

ダニエル・イノウエ(1924-2012)はハワイ生まれの日系アメリカ人。アメリカ軍に志願し欧州戦線で戦いました。死傷率が30%を超えた第442連隊戦闘団で,イノウエ自身も右腕の下腕部を失う重傷を負いました。1959年,アメリカ初の日系アメリカ人の国会議員となりました。なおInoueでなくInouyeと綴るのはoueだと「ウー」のように読まれてしまうからかもしれません。

achievementは「達成,成就」が有名ですが,複数形では「業績」が重要です。「達成した色々な事」→「業績」です。

 

Ladies and gentlemen, my first encounter with America goes back to my days as a student when I spent a spell in California. A lady named Catherine Del Francia let me live in her house. She was a widow, and always spoke of her late husband, saying, "You know, he was much more handsome than Gary Cooper." She meant it. She really did.

皆さん,私の初めてのアメリカとの出会いはカリフォルニア州で学生としてある時期を過ごした日々に遡ります。キャサリン・デル・フランシアという女性が私を住まわせてくれました。彼女は未亡人で,いつも亡き旦那さんのことを「ねえ,彼はゲイリー・クーパーよりずっとかっこよかったのよ」と言っていました。本気で言っていました。

a spellは「ひと続きの間」です。他に「綴る」「呪文」があります。「綴り」は×spellではなくspellingなので注意しましょう。

spoke of her late husbandのところ,安倍さんはspoke for of her late husbandと言ってるかも知れませんね。

 

In the gallery you see my wife, Akie is there. I don't dare ask what she says about me. Mrs. Del Francia's Italian cooking was simply out of this world. She was cheerful and so kind as to let lots and lots of people stop by at her house. They were so diverse. I was amazed and said to myself, "America is an awesome country!"

傍聴席には私の妻,昭恵がいます。彼女が私のことをどう言っているかは敢えて聞きません。デル・フランシア夫人のイタリア料理は経験したことのないような素晴らしいものでした。彼女は明るく,とても親切なので,実に多くの人が彼女の家に立ち寄りました。彼らは非常に多種多様で,私は驚嘆し「アメリカはすごい国だなぁ」と思いました。

out of this worldは表現として知りませんでした。「経験したことのない,極めて良い」という意味だそうです。直前のsimplyは強調です。「ただ……と言うほかない」「ただひたすら……」という風に,「単に」が強調となるのです。実体験としてビューティフル・マインドジョン・ナッシュの伝記的映画)を見ていた時に,ナッシュをスカウトする政府のエージェント(演:エド・ハリス)が「お前はとにかく天才的な暗号破り(コードブレイカー)だ」と言う時にsimplyを使っていたのが印象に残っています。またインターネットミームになっている“You don't simply walk into Mordor”にも使われています(とても歩いて行くような場所じゃないという意味でしょうか)

・as to letは聞き取れませんでした。so ... as to-Vで「Vするほどに……」「非常に……なのでVする」です。so ... that 〜構文のthat 〜部分をto-Vで済ませたような形ですが,so ... to-Vではなくso ... as to-Vとなります。

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これで6分以上のところまで来たので一旦切りたいと思います(2時間以上掛かったかも……)

少しでも皆さんの英語への興味に繋がれば幸いです。

 


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