vice は「悪徳」と「副」という意味を持ちます。不思議に思えますが,たまたま綴りが同じなだけで「悪だから副」「副だから悪」ということではありません。
「悪徳」の vice はラテン語の vitium「犯罪・悪」から,「副・代理」の vice はラテン語の vicis・vice「交代・位置」から来ているようです。「位置」と言えば例えば place がありますが,in place of N は「N の代わりに」という意味ですから「代理・副」の意味になりえますね。
(1)vice「悪,悪徳,悪行」→vicious「悪意ある,残忍な,猛烈な」
→vicious circle, vicious cycle「悪循環」
※シド・ヴィシャスのヴィシャスは vicious ですが,本名ではありません。
反意:virtue「美徳,長所」→virtuous「徳の高い」
→virtuous circle, virtuous cycle「好循環」
類義:malice「悪意」→malicious「悪意ある」
(2)vice-「副−,代理」
vice-president「副大統領,副社長,副総裁」(VP, veep と略されることも)
vicar「司教代理,教皇代理,教区牧師」
vicarious「代理の,身代わりの,他人を通じて自分のことのように感じる」
→vicarious pleasure「他人の喜びが自分の喜びに感じられること」
(3)vise or vice「万力」
vise は米語,vice は英英語
(4)最後に,英語でも使われるラテン語の vice versa「逆もまた真なり」に触れます。「逆の (versa)+位置 (vice)」ということのようですが,
... and vice versa.「……であるし,かつ逆も真なり」
... or vice versa.「……であるか,または逆が正しい」
and vice versa の場合は「...」も正しいし逆も正しいが,or vice versa の場合は「…」か逆のどちらか一方だけが正しいということですね。
なお余談ですが,「両方が言える(and)」か,「片方だけが言える(or)」のうちの,どちらかが言えると言いたい場合は,and/or と書くことができます。A and/or Bで,「A と B の両方かどちらか一方」という意味です。
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