昨日のビリー・ジョエルの「アップタウンガール」の記事で
“as long as anyone with hot blood can”
というのが出てきましたね。
高校のとき習った表現ですが,
as long as...「……である限り(は)」(if に近い)
as far as...「……である限り(では)」
の2つを区別する時,if に近いのが as long as ということで無理やり “long=if”(ロングイフ)と覚えていました。こういう無理やりな覚え方も有効です(丸竹えびす……だって結局無理やり覚えている)
しかし as long as... がそういう意味になる理由は簡単です。
(1)long「(時間的に)長く」
How long...? は時間・期間の長さを問う疑問文です。
(2)as long as...「……と同じだけ長く,……ものあいだ」
原級比較です。I waited (for) as long as three hours. は,「3時間と同じだけ長く待った」→「3時間も待った」と,強調表現になります。
(3)as long as S V「SVするのと同じだけ長く」→「SVする間は」→「SVである限りは」
as long as の後に文(S V... )が続けられます。
You may stay here as long as you keep quiet.「あなたが静かにしているのと同じ長さの時間,あなたはここにいて良い」→「あなたが静かにしている間は,あなたはここにいて良い」→「あなたが静かにしている限り,あなたはここにいて良い」
つまり「あなたが30分間静かにしているなら30分,2時間静かにしているなら2時間,ここにいて良い」というわけです。うるさくした瞬間,出ていけということですね。ということで〈時間の長さ〉を表す long が while...「……である間は」の意味を生み,これが〈条件〉を表す「……である限り(は)」となったのですね。
では,as far as...「……である限り(では)」の成り立ちはどうでしょう?
(4)far「遠くまで」
(5)as far as...「……くらい遠くまで」
We went as far as Kamakura.「鎌倉(くんだり)まで行った」
鎌倉が遠いという含意を持ちつつ,そんなところまで行ったということです。この表現において to は要らないようですね。go as far as to-V(go so far as to-V)という言い方もあります。「Vするようなところまで行ってしまう」→「Vしさえする」です。「敢えてそういうところまでやる」という含意です。
(6)as far as S V「SVである限り」
as far as の後に文(S V... )が続けられます。〈距離〉の far が〈範囲〉〈限界〉を含意し,
as far as I know「私の知る限り(では)」
as far as I'm concerned「私に関する限り(では)」
のように,責任の範囲を明確にする言い方です。「知らない所までは責任は取れないが」という含意があります。この as far as については具体例である as far as I know,as far as I'm concerned を覚えてしまったほうが早いです。
「私が知る限りでは」は「知らない所までは責任を取らない」という含意なので,「知らんけど」というのは as far as I know(直訳ではないが)で訳すのも一興ですかね。
このような原級比較を使った重要表現としては他に as soon as...「……するや否や」や,
(7)not so much A as B「AというよりもむしろB」(=B rather than A = more B than A)
があります。私もこれは無理やり覚えていて,なぜそうなるかは余り考えておらず,とりあえず言いたいものが後ろに来る!!ということだけ注意していました。この成り立ちが氷解したのは好きな映画である『アメリカン・ギャングスター』です。ライバルギャングスターのニッキー・バーンズ(演:キューバ・グッディングJr)が「『……』みたいな言い方よりも,『〜〜』みたいな言い方を聞きたいね」と言う時に,
not "......", as much as "〜〜"
とわざわざカンマで切って言ってくれていたのです。その時 not so much A as B というのが not A as much as B つまり原級比較の否定にすぎないことに気づいたのでした。つまり「B ほどは A ではない」→「A よりもむしろ B」というわけです。
I don't want wine as much as beer.「私はビールほどにはワインは欲しくはない」→「ワインよりもむしろビールが欲しい(I want beer rather than wine.)」
この映画は主人公のロバーツ刑事(ラッセル・クロウ)よりも,また「アメリカン・ギャングスター」ことフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)よりも,他のギャングたち(ニッキー・バーンズ,アーマンド・アサンテが演じたドン・カッターノら)がかっこよかったですね。アーマンド・アサンテのファンになったきっかけの作品です。
なお so much as,as much as は「同じだけ(対等)」ということですから even(イーブンな関係)に交換できることがあり,without so much as Ving は without even Ving「Vすることすらしないで」です。
She left without so much as saying a word.「彼女は一言も言わず去った」
なお英語の gang と gangster の違いについて触れます。gang は日本語の「ギャング団」に相当し,その中の1人1人の「ギャング(団員)」が gangster(×gangstar)です。つまり gang は集合名詞です。同様に間違いやすいものに staff があります。これも集合名詞で,「職員(スタッフ)達の集まり」という意味です。その1人1人は a staff member,a member of staff ですね。『ウィズダム英和辞典』によると前者が「主に米」,後者が「主に英」だそうです。