英語を教えるとき数学っぽい言い方を(わざとらしく)すると面白いです。論理という意味で数学に共通する部分もあるし,公式っぽく教えたら数学好きの人は喜んで覚えるだろうと思うからです。
今回は「誰によってその窓は割られたか」を英語に直すという中学生レベルの問題を「予選決勝法」で解きたいと思います。「予選決勝法」というのはうろ覚えですが,2つの変数を同時に動かすのが難しいので,まず1つの変数は固定しもう1つの変数を動かしきった後で,最初の変数を動かすというやり方です。もちろん2つの作業を完全に切り分けてやれることが条件です。
「誰によってその窓は割られたか」がなぜ難しいかというと,(1)特別疑問文(疑問詞を使った疑問文)と(2)受動態(受け身)を両方処理する必要があるからです。そこで
最初は特別疑問文は諦めて受動態だけ作ってから,あとで特別疑問文に変える
という方法で解きます。作業を2つに分けたことで手順は増えるものの,それぞれの作業の難度は低下するはずです。
特別疑問文を諦めるということは「特別疑問文(今回はwhoを使った疑問文)にしない」ということです。意味も「誰によってその窓は割られたか?」ではなく「誰か(someone)によってその窓は割られた」とします。ぶっちゃけ「トム(Tom)によってその窓は割られた」でいいでしょう。それは
The window was broken by Tom. です。
次に,Tomは勝手に決めた値(あたい)なので,これを本来のwho?に戻します。
The window was broken by whom?
※whoは前置詞(by)の直後では目的格のwhomになります。
クイズの出題などでは上記の形や,
The window was broken by ... ?
でも良いようですが,普通は疑問詞を文頭にします。その場合,(i)whoが1人で前に行く方法と(ii)whoがbyを道連れにして前に行く方法のどちらでもOKです。疑問文ではthe windowとwasは倒置する(You are→Are you)ので気をつけましょう。
(i)Whom was the window broken by? ──(答)
(ii)By whom was the window broken? ──(答)
もう少し補足すると,(i)のWhomは前置詞の直後ではなくなったのでWhoでもOKになります。
(iii)Who was the window broken by? ──(答)
ということで,いきなり(i)(ii)(iii)の形を作るのが難しいと考える小中学生は,まず簡単なThe window was broken by Tom. を作ってからこれを変化させる形で作っていきましょう。
さいごに
「誰によってその窓は割られたか」を英訳する問題は,
Who broke the window?
でも正解とすべきです。受動態と能動態は実質的な意味が同じだからです。
She loved him. と He was loved by her. は実質的に同じ意味なのです。
受動態の単元の期末テストで「誰によってその窓は割られたか」=Who broke the window?を丸にしてくれというのは虫がよすぎるかもしれません(そのため問題用紙には「受動態を用いて答えよ」と注記することが多いでしょう)が,会話のようにテスト以外の場面では,受動態にはこだわらず能動態で言ってしまいましょう。
なお受動態を敢えて使うメリットの1つに「動作主を曖昧にする」というものがあります。うっかり窓を割った日本人でも,「すみません,窓を割ってしまいました」より「すみません,窓が割れてしまいました」と報告する人の方が多いでしょう。