★2020年度東京医科歯科大学の長文にthe same number of calories「同数のカロリー」という表現が登場します。a number,the number というのは可算名詞の「数」に使われる語です。しかし「カロリー」は「熱量」を表す単位ですから「量」を表す語であり,不可算名詞では? と思うかもしれませんね。水(water)もお金(money)も,塩(salt)も砂糖(sugar)も不可算名詞であり,many で数えることはできません。ところが熱量であるはずの calorie [calory] は可算名詞であり,many calories でよいのです。例えば「カロリーを摂りすぎる」は take too many calories です。不可算名詞の「砂糖を摂りすぎる」は take too much sugar ですよね。不思議ですね! calorie が特殊なのでしょうか?
でもこれ,考えてみたら不思議ではないんです。time「時間」というのは不可算ですよね。確かに楽しい「ひととき」や「時代」という意味では have a good time や times と言えますが,いわゆる「時間」というものは不可算名詞の time です。でも「時間」の単位の hour は可算名詞ですよね(three hours)。また砂糖は不可算名詞ですが,測る単位では three grams of sugar とか three spoonfuls [spoonsful] of sugar です。つまり数えられないものであっても,それを測る単位は可算名詞たり得るのです。「カロリー」というのは「熱量」ですが,正確には「熱量を表す単位」ですから,meters や kilograms と同じように,calories と複数形になるんですね。
ということで仮に試験で(出るか分かりませんが)
(a) too much calorie
(b) too many calories
のどちらが自然かと聞かれれば,(b) と答えましょう。
ところで,一連の語句・表現が使われやすいか使われにくいかを調べるにはカッコを付けて Google 先生に聞くのが良いです。今この記事を書いた時点で Google 検索窓に打ってみたところ “too much calorie” は 35 万件,“too many calories” は 87 万件でした。なんだ,“too much calorie” も結構あるじゃんと思うかもしれませんが,良く見てみると
too much calorie intake
too much calorie restriction
のように,much は calorie ではなく intake「摂取」や restriction「制限」に掛かっていることが分かります。calorie intake「カロリー摂取(=カロリーの摂取)」は school gate「校門(=学校の門)」と同構造で,これらの calorie や school は形容詞化した名詞ですね。形容詞化した名詞は基本的に裸名詞(無冠詞単数)になります。
最後に calorie の綴りを確認します。というのも l と r が1つずつ登場する単語でどっちがどっちだったかなとなりやすいからです。覚え方としては
(1)l と r がアルファベット順:library,vocabulary,calorie は l が先,r があと
(2)最初が calcium と同じ:calcium,calorie
calcium の “calc” は「小石」といった意味で calculate「計算する」と同根です。