日本語を英語に直す(和文英訳する)時,事実関係をよく考えずに字面だけで訳してしまうと,日本語と英語の微妙な違い故に誤解してしまうことがあります。今回は「AしないでBする」をとりあげます。
「Vしないで」には2つの訳し方があります。
(1)without Ving「Vしないで,Vすることなしに」
(2)instead of Ving「Vするのではなく,Vする代わりに」
どういう時に(1),どういう時に(2)を使えばいいかが分かればば今回の話は終わりです。
「AしないでBする」は2通りあります。
(A)「Aする」か「Bする」かの選択で,「Bする」の方を選ぶ→→→instead ofです。
「家にいないで外出する」→家にいるか外出するかの選択→go out instead of staying home
排他的な選択の場合は (2) instead ofですね。
(B)「Aする」か「Bする」かの選択ではない→→→withoutです。
「お金を払わないでバスに乗る」→→→お金を払うか,バスに乗るかの選択ではない→take a bus without payng money
2つの行為を同時にする(金を払いつつバスに乗る)ことをせずに,片方だけをやる(金を払わずにバスに乗る)場合,withoutを使うのです。
ということで「AせずにBする」を訳す場合,「Aするのか?それともBするのか?」と言い換えて違和感ない場合はinstead of,それではおかしくなってしまう場合withoutを使いましょう。
(練習)
「傘をささずに家を出る」
「傘をさすのか?家を出るのか?」ではおかしいからwithoutが正しい。
「勝手に決めずに人に聞く」
「勝手に決めるのか?人に聞くのか?」という問題だからinstead ofが正しい。
また,instead ofを「……しないで」と覚えずに「……するのではなく」「……する代わりに」と覚えておき,「……するのではなく」「……する代わりに」と言い換えられる場合instead of,言い換えられない場合withoutを使うというのも手です。
(練習)
「傘をささずに家を出る」→「傘をさすのではなく家を出る」とは言い換えられない→instead ofはおかしく,withoutが正しい。
「勝手に決めずに人に聞く」→「勝手に決めるのではなく人に聞く」と言い換えられるからinstead ofが正しい。
和英辞典やネット検索で字面だけを合わせるのは危険で,できれば用例まで見て自分が言おうとしているパターンに一致しているかを確認する癖をつけたいですね。もちろん時間かかかりますが,長い目で見ればそのパターン認識が身につくので近道となるでしょう。急がば回れです。