三國志英単語をやっていると,河北省は「冀」だとか河南省は「豫」だとか出てきて面白かったので,全省・自治区の略字を調べてみます。
黒竜江省「黒」
中国の最も東北部にある省で,ロシアに接しています
吉林省「吉」
黒竜江省の南にある省で,ロシアと少し,北朝鮮と多く接しています。
ウィキペディア「吉林市」によると “満洲語で川沿いの村を意味する「吉林烏拉(girin ula)」に由来する” 吉林省が置かれたのは清の時代です。
遼寧省「遼」
渤海に流れ込む遼河,そして遼東半島があります。遼という国もありましたね。盛京省,奉天省と呼ばれたこともありました
河北省「冀」
河北省は北京市,天津市を取り囲んでいる省です。渤海に面します
前漢武帝が紀元前106年に13州を設置した時,冀州が設置されました
省都は石家荘市
河南省「豫」
河北省と山西省の南にある内陸の省です。河北・河南とは黄河の北・南のことですが,河北省と河南省の境に黄河が流れているわけではなく,黄河は河南省を流れています。よって河南省にも黄河の北側があります
前漢武帝が紀元前106年に13州を設置した時,豫州が設置されました
山東省「魯」
河北省の南東にある省で,渤海と黄海に面しています。渤海と黄海を分けているのが,突き出た山東半島(その先端は膠東半島)です。黄河は渤海の方に流れ込みます
現在の山東省済寧市曲阜市を中心に「魯」の国が建国されました。山東省の辺りには「斉」という国もあり,こちらの方が隆盛しました。「斉」より「魯」が山東省の略称になったのは,魯に孔子が出たからでしょうか
省都は済南市(済)だが,最大都市は青島市(青)
山西省「晋」
河北省のだいたい西隣にある省です。山西省と山東省は隣接しておらず,河北省と河南省が間にあります
山西・山東の「山」とは,初め泰山(世界遺産)かな?と思い込んでいたのですが,正しくは太行山脈で,山西省と山東省が隣接していないため,この山脈は山西省と河北省の境になります。河北省省都石家荘市は太行山脈の麓にあります:“石家荘市の西には太行山脈がそびえ”(ウィキペディア「石家荘市」)
司馬炎の晋(西晋)が有名ですが,春秋時代に晋は建国されています “汾水の支流である晋水にちなんで国名を晋とした”(ウィキペディア)
省都は太原市(并)
陝西省「陝」「秦」
山西省と河南省の西にある省で,三国志的に言うと陝西省に長安(西安),河南省に洛陽があります
河南省の,陝西省との境に三門峡市があり(その東隣が洛陽市),三門峡市の陝州区には古代から陝塬と呼ばれる台地があって,そこより西が陝西と呼ばれた
陝西省には咸陽市があって(西安市の北隣),ここは秦の都があった。咸陽市には秦都区がある
甘粛省「甘」「隴」
陝西省の西,新疆ウイグル自治区の東にあるのが甘粛省で,かつて西涼と呼ばれたところです
隴は甘粛省のあたりの古くからの地名で,「隴を得て蜀を望む」(隴の地を得たら欲が生じて蜀まで欲しくなった)という故事成語がある。董卓は隴西郡臨洮県の出身
青海省「青」
甘粛省の西南に隣接している省です。羌(チベット系)や吐谷渾(鮮卑の慕容吐谷渾が建国)があった辺りですね
青海(西海,青海湖)より。なお北海はバイカル湖(漢代の呼び名),東海は東シナ海,南海は南シナ海
省都は西寧市
江蘇省「蘇」
山東省の南,上海市(直轄市)の北に隣接し,黄海に面する省です
蘇州は呉県・呉郡と呼ばれていたが,隋の時代から蘇州と呼ばれるようになった
安徽省「皖(かん/Wǎn)」
江蘇省の西にある内陸の省です
春秋時代に皖という国があり,漢の時代には廬江郡皖県がありました
浙江省「浙」
浙江(折江)は銭塘江の別名で,流路が蛇行していることからそう呼ばれた
福建省「閩(びん/Mǐn)」
中原から遠く離れており,野蛮人の棲む地というニュアンスで閩と呼ばれた(蛮や蜀にも虫の字がある。巴は蛇の形から生まれた)。よって元は蔑称であるが,自ら名乗ることもあり,五代十国時代の十国の一つに閩(王審知が建国;909年-945年)がある
省都は福州(福,榕)(2021年に842万人)だが,泉州(2017年に865万人)の方が人口が多いようだ
江西省「贛(かん/Gàn)」
福建省の西にある内陸の省です
江西省のほぼ真ん中を南から北に向かって流れ,同省北部にある鄱陽湖に流れ込む贛江より。江西省の大半が贛江流域である
省都は南昌市(洪,昌)だが,最大都市は贛州市
湖北省「
安徽省,河南省,陝西省,重慶市,湖南省,江西省に囲まれた内陸の省です
殷・周の諸侯国の一つに鄂(鄂侯)があった。楚のあたりは鄂と呼ばれた。楚は荊山の一帯に建国された
湖南省「湘」
湘江は湖南省最大の川で,洞庭湖に注ぐ。清末の曽国藩(1811年-1872年)は湖南省湘郷県出身で,湘軍という地方軍を結成した
広東省「粤(えつ/Yuè)」
福建省,江西省,湖南省の南にあり,南シナ海に面し,海南島にも近い省です
粤は呉越の越に同じで,このあたりの蛮族を指した(百越,百粤)
↓写真のナンバープレートには広東省を表す「粤」の字がある
海南省「瓊(琼)」
海南省北部に瓊山がある。唐代に崖州(海南島に置かれた)を分け,瓊州が置かれた。瓊は「玉のように美しい」の意で,安国寺恵瓊や水滸伝の瓊英,
省都は海口市
貴州省「黔(けん/Qián)」「貴」
貴州を通り重慶に流れる烏江は黔江とも呼ばれた。黔は「黒い」の意。楚は黔中郡を置いた。547年(北周),奉州が黔州に改称された
貴州の貴に関しては貴山という山があるらしい(ウィキペディア「貴陽市」)
四川省「川」「蜀」
陝西省,甘粛省,青海省,チベット自治区,雲南省,貴州省,重慶市に囲まれた内陸の省です
四川の由来は諸説あるらしく,一説に岷江,沱江,嘉陵江,烏江。その他の説はウィキペディア「四川盆地」をご参照下さい
雲南省「滇(てん/Diān)」「雲(云)」
四川省の南にあり,ベトナム,ラオス,ミャンマーに隣接する内陸の省です。南詔とか大理国が興った地域ですね
雲南省には滇池という淡水湖があり,前漢の時代に滇という国があった
雲は雲嶺という山脈より
ロシアとモンゴルに接します
寧夏回族自治区「寧(宁)」
ウィキペディア「寧夏省」によると “この地が寧夏と呼ばれるようになったのは1227年元朝により西夏が滅ぼされ,「西夏平定,永遠の安寧」の願いを込め寧夏行省が設置されたことに始まる” つまり安寧の寧と西夏の夏ですね
自治区首府は銀川市
新疆ウイグル自治区「新」
ウィキペディア「新疆の歴史」によると “その土地は「ムスリムの土地」を意味するホイセ・ジェチェン(Hoise jecen,回疆),もしくは「新しい土地」を意味するイチェ・ジェチェン(Ice jecen,新疆)と呼ばれた”
チベット自治区「蔵(藏)」
インド,ブータン,ネパールなどと接します
ツァン(蔵)は現在のチベットの一部を指していたが,チベットが西蔵と呼ばれるようになった
広西チワン族自治区「桂」
広東省の西にあり,雲南省と共にベトナムに接し,トンキン湾に面します
観光名所の桂林より
↓この記事のアイキャッチ画像は以下の記事にあります
自治区首府は南寧市(邕)
北京「京」
天津「津」
上海「滬(沪)」「申」
黄浦江の支流である呉淞江の下流が滬瀆(ことく)と呼ばれた
申は楚の春申君より(江東に封地があった)
重慶「渝」
重慶を流れる嘉陵江は閬水とか渝水と呼ばれた
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調べていくと太原市は「并」だとか貴陽市が「筑」だとか,都市にも略字があるものがあって奥が深いですね。いろいろ勉強になって面白かったです(・∀・)