『更級日記』かわいい猫にゃんの回に続き,今回は「ねんがんの げんじものがたりをてにいれたぞ!」を読んで勉強します。
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かくのみ思ひ屈じたる(ふさぎ込んでいるの)を、心も慰めむ(私の心を慰めよう)と心ぐるしがりて(気づかって)、母、物語などもとめて(探し求めて)(私に)見せ給ふに、實におのづから慰みゆく(自然と慰められていく)。紫のゆかり(源氏物語の紫に関するところ)を見つゝ、つゞきの見まほしく(続きを見たいと)覺ゆれど、人語らひなどもえせず(人に相談などできない)。されどいまだ京なれぬほどにて(京に慣れていない頃なので)、え見つけず(源氏物語を見つけられず)いみじく心もとなく(大変じれったく)、ゆかしく(見たいと)覺ゆるまゝに(思えるので)、この源氏物語一の卷(第一巻)よりして(からして)、みな見せ給へ、と心のうちにいのる。
・「屈ず,思ひ屈ず」は「ふさぎ込む」です。
・「えせず」「え見つけず」の「え~ず」は「~できない」です。「な~そ」(禁止)なんかもありますね。フランス語には ne ... pas で否定なんかもあります。
・「心許なし」には「気がかりだ」のほか「じれったい」が重要です。『枕草子』の粥杖で腰を叩くの回にも「心もとなう(叩こうとじれったくて)、ところにつけて、『われは(私は姫様を叩きますわよ)』と思ひたる女房の、のぞき、けしきばみ」の所で登場します。英語の anxious にも「心配」と「切望」の意味があります。
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・「ゆかし」には「見たい,知りたい,心惹かれる」の意味がありますが「行く」から来ていますので,「ゆかし」を見たら「行きたい」→「見たい」のように連想しましょう。
・「~ままに」は「~につれて」「~とすぐ」「~ので」などの意味があり,同時性を意味する as... に似ていますね。次の部分にも「まゝに」が出て来ます。
親の(親が)太秦(の広隆寺)に籠り給へるにも、こと事なく(異事=源氏物語以外の願い事はなく)、此事(この事=源氏物語の願い事)を申して出でむまゝに(広隆寺を出るとすぐに)、この物語見はてむ(最後まで見よう)と思へど見えず。いと口惜しく思ひなげかるゝ(思い嘆かれる)に、叔母なる人の田舍よりのぼりたる所に渡いたれば(訪ねに行くと?)、「いと美しうおひなりにけり」など、あはれがり(深く感動し)珍しがりて、かへるに(私が帰る時に)、「何をか奉らむ(何を差し上げようか)。まめまめしきものは(実用的なものは)、まさなかりなむ(きっと良くないでしょう)。ゆかしくし給ふ(貴女が見たいと思っていらっしゃる)なる(と聞いている)物を奉らむ」とて、源氏の五十餘卷、櫃(ひつ,はこ)に入りながら、在中將(在原業平→伊勢物語?)、とほぎみ、せり川、しらゝ、あさうづなどいふ物語ども、一袋とり入れてえて歸る心地の嬉しさぞいみじきや。はしるはしる(ワクワクして)僅に見つゝ(少し読みながら)、心もえず(心得ず=物語の内容がよく分からず)、心もとなく(じれったく)思ひ、源氏を一の卷よりして(から始めて)、人も交らず、几帳のうち(中)にうち臥して、ひき出で(引き出す,引っ張り出す)つゝ見る心地、后の位も何にかはせむ。
・太秦の広隆寺は推古天皇の時代に創建されたそうです。
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・「思ひ嘆かるる」の「るる」は〈自発の「る」〉の連体形でしょう。
・「いと美しうおひなりにけり」の「おひなり」は「生ひ成る」(成長する)です。
・「まさなかり」は「まさなし(正無し)」つまり「良くない」の連用形です。
・「ゆかしくし給ふなる」の「なる」は〈伝聞・推定の「なり」〉の連体形で,「なり」は終止形に付きます。
・この叔母さん,源氏物語を全部持ってて,全部くれたということ?
・「いみじきや」は「や」は詠嘆のようですね。
・「じれったい」の「心許なし」はかなり重要っぽいですね。「心配,気がかり」の「心許なし」まで「じれったい」と誤読する危険性があるくらいです。
晝は日ぐらし(一日中)、夜は目の覺めたるかぎり、火を近くともして、これを見るより外の事なければ、おのづから名などはそらに(暗記して)おぼえ浮ぶを、いみじき事(素晴らしい事)に思ふに、夢にいと清げなる僧の、黄なる地の袈裟著たるが來て、「法華經五卷を疾く習へ」といふと見れど、人にもかたらず、習はむとも思ひかけず、(源氏)物語のことをのみ心にしめて、我はこの比わろき(今は容貌見苦しい)ぞかし(~なことだよ)。さかり(最盛期)にならば、かたち(容姿)も限なくよく、髪もいみじく長くなりなむ(きっと大変長くなっているだろう)。光源氏の夕顔、宇治の大將の浮舟の女君のやうにこそあらめ(ようになるだろう)、と思ひける心、まづ(第一に)いとはかなく(虚しく)淺まし。
・「晝」は「書」ではなく「昼」です。
・「ひぐらし」「ひねもす」「日一日」は「一日中」です。「夜もすがら」は「一晩中」です。
・「心にしめて」は「心に占めて」かと思いましたが,「心に染めて」のようですね。
・「宇治の大将」は『源氏物語』宇治十帖に出てくる薫大将で,源氏の息子(ということになっている人)です。「浮舟」は薫と匂宮の間で板挟みになって自殺未遂をする女性です。彼女の話で物語が終わるという点で重要人物ですね。
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次回は有名な『徒然草』を読んでみたいと思います。
↓この記事のアイキャッチ画像は以下の記事にあります(千葉県市原市にある作者の像)
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