フレイニャのブログ

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古文の勉強7:『源氏物語』第1帖「桐壺」その2

前回に引き続き,『源氏物語』第1帖「桐壺」の続きです。

一の皇子(第一皇子)は、右大臣の女御の御腹にて、寄せ(後見・後ろ盾;期待・信頼;ゆかり)重く、疑ひなき儲の君(皇太子,東宮と、世にもてかしづき(大切に育て)きこゆれ(申し上げ)ど、この光源氏の)にほひ(輝くような美しさ)には並びたまふべくもあらざりければ(並びようもなかったので+尊敬)、おほかた(普通;全体)のやむごとなき御思ひ(大切に思う気持ち)にて、この君光源氏をば、私物(わたくしもの)に思ほし(お思いになる)かしづき(傅き;大切に育て)たまふこと限りなし。

女御は天皇の妻(皇后,中宮に次ぐ位)なので,「右大臣の女御」は右大臣の妻ではなく,右大臣の娘で女御になっている人です。「弘徽殿女御(こきでんのにょうご)」と呼ばれている人ですね。女御に “定員はなく,複数の女御がいる場合は住まう殿舎の名を取って「承香殿女御」などと呼んだ”ウィキペディア「女御」より)

「儲の君,儲君」は「皇太子,お世継ぎ」です。「儲け」は古語では「金儲け」の意味はなく「準備,食べ物,ごちそう」であり,「天皇の後継として備えている人」ということですね。「備え」→「蓄え」→「金儲けの儲け」と発展したのでしょうかね。

ここの「きこゆ」は「もてかしずき」という動詞に付いている補助動詞で,「……し申し上げる」という謙譲語です。今回は「言う」の意味は消えています。

「にほひ」には「香り」のほか「色艶,美しさ」などの意味があり,さらにはこれは光源氏の美しさを言っています。小野老(小野朝臣老)に「あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり」という歌がありますが,「にほふ」は「美しく咲く・映える・輝く・染まる;香りが漂う」という意味です。菅原道真の「東風吹かばにほひおこせよ梅の花主なしとて春を忘るな[春な忘れそ]」の場合は「香り」の方ですかね。

「並びようもなかったので+尊敬」とテキトーに書いた「並びたまふべくもあらざりければ」は,「たまふ」が尊敬,「べく」が可能,「ざり」が打消,「けれ」が過去です。

「おほかたのやむごとなき御思ひ」は,帝の一の皇子への愛情は,普通の大切に思う気持ちであったということみたいですね。

一の皇子(光源氏の異母兄;後の朱雀帝)は普通に大切に思ったが,特別に愛情を注いだのは光源氏ということですね。

 

(桐壺更衣は)初めよりおしなべての(普通の)上宮仕へ天皇の側に仕えること)したまふべき際(身分)にはあらざりき。おぼえ(世間の評判;寵愛)いとやむごとなく、上衆めかし(身分の高い人っぽい)けれど、わりなく(ことわり=道理に合わないくらいやたらと)まつはさ(側にいさせ)せたまふあまりに、さるべき御遊び(ちゃんとした詩歌管弦の遊び)の折々、何事にもゆゑ(趣や風情)ある事のふしぶしには、まづ(第一に桐壺更衣を)()(のぼ)せたまふ。ある時には大殿籠もり過ぐ(お寝過ごしになる)して、やがて(そのまま)さぶらはせたまひなど、あながちに(強引に)御前去らずもてなさ(自分の前からいなくならないように取り計らう?)せたまひ(ここは尊敬+尊敬?)しほどに、おのづから(自然と)軽き(身分の低い)方にも見えしを、この御子光源氏生まれたまひて後は、いと心ことに(たいへん格別に)思ほしおきてたれば、「東宮=皇太子)にも、ようせずは(悪くすると,最悪の場合)、この御子の居たまふべきなめり光源氏が居座ってしまうはずのようだ)」と、一の皇子の女御(弘徽殿の女御)は思し疑へり。(弘徽殿の女御は)人より先に参り(他の妻たちよりも先に入内)たまひて、やむごとなき御思ひなべてならず(並々でなく)、皇女たちなどもおはしませば、この御方の御諌め(弘徽殿の女御の諫言=桐壺更衣を優遇するなということ?)をのみ、なほわづらはしう(悩ましく)心苦しう思ひきこえ(思い申し上げ,お思いし)させたまひける

「上衆(じょうず)」は「下衆」の逆と考えると分かりやすいですね。

「まつはさせたまふ」の「せ+たまふ」には(1)尊敬+尊敬と(2)使役+尊敬の可能性がありますが,前の「まつはさ(←まつはす)」が「側にいさせる」と,既に使役の意味を含んでいるので,今回は(1)でしょう。助動詞「る・らる・す・さす・しむ」は全部下二段型活用なので,助動詞「す」は[せ//す/する/すれ/せよ]です。サ変動詞「す」は[せ//す/する/すれ/せよ]です(下線部分に相違あり)

「参う上らせたまふ」「さぶらはせたまひ」の「せたまふ」は(2)使役+尊敬ですかね。

「おのづから軽き方にも見えしを」が「自然と身分の低い人に見えたが」なのはいいとして,何が「自然と」なのか? という問がヤフー知恵袋にあり,回答者は「余りにもしょっちゅう付き従えさせるので,まるで召使のように見えた」という回答を出しています。

「坊」が「東宮(皇太子)」の意味になるのは,「春宮坊(とうぐうぼう)東宮坊」という皇太子のための機関があったためですかね。

ja.wikipedia.org

「べきなめり」は「べき(推量べし)なる(断定なり)めり(推量めり)」→「べきなんめり」→「べきなめり」です。推量の「めり」は「目あり」から来ていることを押さえていれば,活用が「あり」のラ変型であることが覚えられます。同様に伝聞・推量の「なり」も「音あり」から来ており,ラ変型活用です。ただし断定の「なり」は形容動詞ナリ活用です。

「思ひきこえ」の「聞こゆ」は謙譲ですが,弘徽殿の女御相手だからだそうです。なお「申し上げる」といってもここは「思ひ」に付いている補助動詞なので,何かを申し上げる(言う)という意味ではなく「お~する」(お取りする)といった意味です。その後の「させたまひ」は尊敬+尊敬でしょう。

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~おまけの単語勉強~

「らうたし」(ク活用)かわいい,いとおしい。ウィクショナリーによると語源は「労甚(ろういた)し」

「らうがはし」(シク活用)騒々しい,乱雑だ,無作法だ。「乱がはし」

「敷島」:「日本」「大和」。「敷島の道」は「やまとうたの道」つまり「和歌の道」

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大意を取るならまだしも,品詞まで考えると難しいですね。次回は『更級日記』の可愛い猫にゃんが出てくる話に飛びつきます。

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