フレイニャのブログ

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古文の勉強5:『枕草子』第二段その3

「『枕草子』第二段その2」の続きです。

三月。三日は、うらうらとのどかに照りたる(照っているのがよい)。桃の花の、いま(たった今;新たに)咲きはじむる(始めるのがよい)。柳など、をかしきこそさらなれ(言うまでもない)。それも、まだ繭にこもりたるはをかし。ひろごりたる(広がっているの)は、うたて(異様,不快)ぞ見ゆる。おもしろく(素晴らしく,風流に)咲きたる桜を、長く折りて、大きなる瓶に挿したるこそをかしけれ。桜の直衣(なほし)(平常服)出だし(うちき)して、客人にもあれ、御兄の君達にても、そこ近くゐて、ものなどうちいひ(ちょっと言う)たる、いとをかし。

「三月三日」と言えば「桃の節句」ですが,雛祭りのことは言及されていませんね。ウィキペディアを調べると,雛人形を使った行事が普及するのは江戸時代のようです。そもそも宮中にいる人々が雛人形のような人達ですから,雛人形を使って真似事をする必要もないわけです。

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「照りたる」は「照りたり」の連体形「照りたる」で止めるというやつで,「春はあけぼの」の所の「たなびきたる(=棚引いているのが良い)」と同構造です。

「始むる」は慣れない形ですが,「始む」の連体形。ここも連体形で止めています。

「始む」(下二段):始め/始め/始む/始むる/始むれ/始めよ

「さらなり」(言うまでもない)は形容動詞で,「こそ」があるので係り結びで已然形「さらなれ」に変化しています。

「柳のまゆ」は柳の若葉の喩えらしいです。「劉備」と打とうとして誤変換して出てきてしまう「柳眉」は,この「柳のまゆ」のように細い眉のことです。「まゆにこもる」とは,まだ完全に葉が開いていないということでしょうか。

「広ごる」(四段活用)は「広がる」です。広がった柳の葉を,著者は好きではないようですね。

(うたて)」に関しては,「うたてし」(嫌だ,気の毒だ)という形容詞や「あなうたて(や)」(ああ嫌だ)という言い方もあります。

「桜の直衣」はウィキペディア「直衣」によると “表が白で裏が紫や赤系統の直衣” だそうです。 

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「出だし袿(出だし衣)」は正確にはよく分からなかったのですが,流行りのおしゃれな着方で,重ね着をした際に,下に着る服の一部分を(裾から?)覗かせる着方のようです。

最後の部分は,そういう流行りの着方をして,客人や兄弟とちょっと話をしている様子が風流だ,ということでしょうかね。

 

四月。祭り葵祭の頃、いとをかし。上達部(かんだちめ)(公卿)・殿上人も、表の衣の濃き淡きばかりのけぢめ(相違,区別)にて、白襲(しらがさね)(表も裏も白色)ども同じさまに、涼しげにをかし。木々の木の葉、まだいと繁うはあらで(繁ってはいなくて)、若やかに青みわたりたるに、霞も霧も隔てぬ空のけしきの、なにとなくすずろに(何ということもなく,思いがけず,やたらに)をかしきに、少し曇りたる夕つ方・夜など、しのびたる郭公(ほととぎす)の、とほく(遠く)「そら音(空耳,鳴きまね)か」とおぼゆばかり(思えるくらい)、たどたどしき(おぼつかない,はっきりしない)を聞きつけたらむは、なに心地かせむ(どんな気持ちがするだろうか)。

古文で「祭」と言えば「葵祭賀茂祭)」,「寺」と言えば「三井寺園城寺;近江)」なんて習いましたが,葵祭は旧暦四月,今は5月ですね。

公卿は三位以上,および四位の参議のようです。

「すずろに(漫ろに)」のニュアンスが難しいですが,「わけもなく」ということ?

「しのびたる郭公」について,ウィキペディアホトトギス」にこうあります。“夜に鳴く鳥として珍重され,その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を忍音(しのびね)といい,これも珍重した。『枕草子』ではホトトギスの初音を人より早く聞こうと夜を徹して待つ様が描かれる”

「ばかり」は「ほど,ぐらい」らしく,「おぼゆばかり」は「思えるくらい」ですね。

現代語では「どんな心地」となるべきところ,古語では「なに心地」で良いんですね。

 

祭り近くなりて、青朽葉(色の名前)二藍(ふたあい)(色の名前)の物どもおし巻きて(しっかり巻いて)、紙などに、けしきばかり(ほんのわずか)押し包みて、行き違ひ持て歩くこそ、をかしけれ。末濃すそご)(裾の方が濃い染め方)・むら濃(所々に濃淡がある)なども、常よりはをかしく見ゆ。童女の、頭ばかりを洗ひつくろひて、服装はみな、綻び絶え、乱れかかりたるもあるが、屐子(けいし)(下駄のようなもの)(くつ)(足先が覆われる履物)などに、「緒すげさせ(緒を通させて)」「裏おさせ」など、持て騒ぎて、いつしか(早く)その日(祭りの日)にならなむ(なってほしい)と、急ぎをし歩くも、いとをかしや。

「近くなりて」の「なり」は助動詞の「なり」(鐘が鳴るなりとか)ではなく,四段活用の「なる」です。下二段活用の「なる」は「慣る」つまり「慣れる」です。

「なる」(四段)なず/なて/な/なとき/なども/な

「慣る」(下二段)なず/なて/な/なるるとき/なるれども/なれよ

「青朽葉」についてはウィキペディア「朽葉」内に言及があります。“黄朽葉,赤朽葉,さらには青朽葉(あお味の残る落ち葉を模した,緑色系統)などの派生が「朽葉四十八色」と言われるほど存在した”

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「二藍」はウィキペディアに載っています。“アイとベニバナの二種の染料を使っての重ね染めで得られる色で,高価な紫根染めに頼らない紫として男女を問わず愛好された”

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「緒すげさせ」の「すぐ」は「挿ぐ」で,穴に通すことで糸や紐を付ける行為のようです。「鼻緒を下駄に付けさせて」と子どもが言っているようですね。「裏おさせ」はよく分かりませんが,「押す」には「押しあてる,貼り付ける」といった意味もあるようで,とりあえず「くつの裏」をしっかりした状態にする行為でしょうね。「靴底を貼る」ということでしょうか?

「いつしか」は「いつの時にか」の意味と,願望を表して「早く」の意味があるようです。「いつしかその日にならなむ」の「なむ」は未然形(ここでは「なら」)に付く終助詞で,他者への願望(~てほしい)を表します。

「をし歩く」は「おし歩く」のようですね。古文では「(あり)く」は「外出する,動き回る,~して回る」,「歩む」が「歩く」のようです。「勢いよく動き回る」ということ?

 

あやしう躍り歩く者どもの、装束き、仕立てつれば(晴れ着を着せられると)、いみじく「定者」などいふ法師のやうに、練りさまよふ。いかに心もとなからむ(どんなに不安なのだろう)ほどほどにつけて(身分に応じて,身分相応に)、母・姨の女(おば)・姉などの、供し(ついていき?)、つくろひて(着崩れを直し?)、率て歩くも、をかし。蔵人天皇の秘書的な官?)思ひしめたる(強く思っている)人の、ふとしもえならぬ(すぐにはなれない人)、その日、青色着たるこそ、やがて(そのまま)脱がせでもあらばや(着させておいてやりたい)と、おぼゆれ。綾(綾織物)ならぬは、わろき

「あやし」は「あやしい,不思議だ」という意味と「下賤だ,みすぼらしい」という意味があります。「あやしう躍り歩く者ども」は意味がよく分かりませんが,前に出て来た子どもたちのことのようで,はしゃぎまわっている様子ですかね。

「定者」は法会の時,僧の行列の先頭を歩いて,香炉を持って進む役(しかも小僧?)のようです。下賤な感じに(?)はしゃぎまわっている子らも,晴れ着を着せられれば,まるで定者のようだということ?

「程(ほど)」は「程度」ですが,「身分」の意味があるようです。「同じほど(=同じ身分),それより下臈(げろう)の更衣たちは」(『源氏物語』「桐壺」)

「供し(ともし?),つくろひて」の辺りは,はしゃぎまわっている子(女の子?)に親族の女性がついて行って身繕いし直してあげているさま?

「蔵人思ひしめたる」は「蔵人になりたいと強く思っている」という意味のようですね。「思ひしむ」は「思ひ染む」です

「ふとしも+打消」で「すぐには~ない」で,この「ふと」(素早く,不意に)は「ふと気づく」とかの「ふと」のようです

「えならぬ」の「え~ず」は「~できない」です。語源は「得・能」らしく,「~するを得ず」と同じこと? また「えならぬ」は「なれない」ということから「素晴らしい」という意味もあるようです

「脱がせでもあらばや」が難しかったですが,「脱がせで(脱が+使役の未然形せ+で)」が「未然形+で」で「脱がせないで」でしょうね(「大殿ごもらで」と同じ)。「ばや」は自己の願望(~したいものだ)です

 脱がせで→脱がせない

 大殿ごもらで→大殿ごもらない

「脱がせでもあらばや」の直前の「軈(やが)て」は「そのまま」と「すぐに」が重要です。「軈」は国字(日本独自の漢字)のようですね。

蔵人になりたい人が,蔵人になったら正式に着られる青色を着ているから,そのまま脱がさずに置いてやりたいということ? 「六位蔵人」の官位があり,「正六位」の記事には “六位層は袍が縹色であることから,後には青侍と呼ばれた” とあります(なお「青」は青・緑・藍をカバー)

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なぜ「おぼゆれ」と已然形になっているのかと思ったら,前に「こそ」がありました(係り結び)

最後の「わろき」がなぜ連体形かなのですが,連体形止めというやつ(余韻効果)? 英語にも体言止めはあり,「~といったらない・酷い・素晴らしい」という意味を含みます

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~おまけの勉強~

「清(さや)けし,明(さや)けし」(ク活用)明るい,清々(すがすが)しい,澄んでいる

「消息文(せうそこぶみ,しょうそこぶみ,しょうそくぶん)」:手紙(の文章)

格助詞「より」の即時の意味:「名を聞くより」=「名を聞くやいなや」。「より」は他に起点「から」・経由「を通って」・比較「より」・理由「のために」・手段方法「で」・限定「以外(……ない)」がある。手段方法は『徒然草』の仁和寺の話に「徒歩より詣でけり」がある。最後の限定は「……するより他にない」の「より」

接続助詞「を・に」:原因理由,単純接続,逆接。「が」は原因理由がなく,単純接続と逆接。これは前後関係を見て適切な訳を当てるしかない? 「が・に・を」全て連体形に付く。なお他に格助詞の「が・に・を」もある。

終助詞「ばや,(に)しが(な),(て)しが(な)」は自己の願望「……したいものだ」。「ばや」は未然形,「にしが」などは連用形に付く。ただし「ばや」には他にもあるみたい……

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今回は特に後ろがすごく難しかったです。次回は有名な『源氏物語』第1帖「桐壺」で勉強してみたいと思います。↓次回はこちら

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