フレイニャのブログ

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古文の勉強4:『枕草子』第二段その2

『宇治拾遺物語』かいもちエピソードに続き,4です。枕草子に戻ります。

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十五日。節供節句まゐり(献上して)据ゑ(置き)、粥の木(粥をかきまわす棒,粥杖)ひき隠して、家の御たち・女房などの、うかがふを、「打たれじ」と用意して、常にうしろを心づかひしたるけしきも、いとをかしきに、いかにしたるにかあらむ(どのようにしたのであろうか)、うちあてたるは、いみじう興ありて、うち笑ひたるは、いとはえばえしインスタ映えな感じ)。「ねたし」(悔しい)と思ひたるも、ことわり(当然)なり。

この部分,最初全く分からず絶望したのですが,ウィキペディアによると粥の木(粥杖)で腰を叩くと子どもが生まれやすいという迷信があったらしく,この迷信を口実にして叩こうとしたり,狙われた相手も「叩かれるものですか」とか言ってふざけているのだと思われます。それで「うかがふ」(叩く機会を窺う),「打たれじ」(打たれまい),「常にうしろを心づかひ」(常に背後を警戒)が氷解しますね。分かるととても微笑ましいです。なお「粥」とは小豆粥,望粥,桜粥と呼ばれていたもののようで,粥の木は柳から作ることが多かったようです。

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「打たれじ」は「打つ」の未然形「打た」+受け身・尊敬・可能・自発の助動詞「る」の未然形「れ」+打消意志の助動詞「じ」

「る」の活用:れ/れ/る/るる/るれ/れよ(下二段活用)

※この「る」は四段活用,ラ変(あり),ナ変(死ぬ)活用の動詞に付く時に使う助動詞であり,「す」(サ変),「蹴る」(下一段)といった他の活用の動詞の場合は「らる」になる

「らる」の活用:られ/られ/らる/らるる/らるれ/られよ(下二段活用)

※例:「蹴られよ(×けれよ)」「せられよ(×せれよ)」「打たれよ(×打たられよ)」

「じ」の活用:○/○/じ/じ/じ/○(未然形に付き,意味は打消推量・打消意志)

「いかにしたるにかあらむ」は「どのようにしたのであろうか」という意味っぽいですが,難しいですね。まず「いかに」は副詞かと思ったのですが,「どのように」→「する」みたいな場合は形容動詞「いかなり」の連用形だそうです。

「したる」は動詞「す」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形

※完了の助動詞「たり」は連用形に付き,断定の助動詞「たり」は体言に付く

「にか」は断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「か」

「にか」には格助詞「に」+係助詞「か」の場合もある(いづれの御時にか)が,今回は「御時」のような体言ではなく,「したる」という活用語の連体形に付いてるから断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「か」ということか(断定の「なり」は体言か連体形に付く)

「あらむ(あらん)」は動詞「あり」の未然形+推量の助動詞「む」の連体形(連体形になるのは係助詞「か」があることによる係り結び)

「いかなり」:なら/なり・に/なり/なる/なれ/(なれ)(ナリ活用)

断定の助動詞「なり」:なら/なり・/なり/なる/なれ/なれ(ナリ活用)

「参り据う」:ゑ/ゑ/う/うる/うれ/ゑよ(下二段活用)

 

あたらしう通ふ婿の君(新たに通い婚してくるようになった婿殿)などの、内裏へ参るほど(時,あいだ)をも、心もとなう(叩こうとじれったくて)、ところにつけて、「われは(私は姫様を叩きますわよ)」と思ひたる女房の、のぞき、けしきばみ(様子や思いが外に現れる)、奥のかたに立たずまふ(立ち止まったままでいる)を、前にゐたる人は、心得て(分かって)笑ふを、「あなかま」(ああうるさい,静かにおし)とまねき制すれども、女はた(また?)、知らず顔にて、おほどか(大らか,おっとり)にてゐたまへり。

「『われは』と思ひたる女房の、のぞき」の部分は,まだ粥杖で叩こうと機を窺っているということ? となると前の「心もとなう」は「(姫君を叩きたくて)じれったくして」ですかね。「心許なし」には「心配・気がかり」のほか「かすかだ」や「じれったい」があるのです。心配していたり,じれったい気持ちである時,気持ちが落ち着きませんよね。英語でも anxious は「心配して」と「切望して」があります。

「あなかま」の「かま」は「やかましい」や「(かまびす)しい」の「かま」ですかね

こはちょっと難しいです。「女」には「ゐたまへり」という尊敬表現がついているのでこの家の貴族の姫君。「女房」は姫君に仕える女性で,後ろから姫君の腰を叩こうと狙っている。「前にゐたる人」は姫君の前に座っている人で,後ろから狙っている女房に気づいて笑う。それを「静かに」と手で制しているのが女房。狙われているのに気づかずおっとりしているのが姫君,ということでしょうか?

 

「ここなるもの取りはべらむ」(お取りしましょう)など、いひよりて、走り打ち(走って粥杖で打つ)て逃ぐれば、あるかぎり笑ふ。男君もにくからず(感じよく)うち笑み(にっこり笑う)たる(姫君の方は)ことに(特に)おどろかず、顔すこし赤みてゐたるこそ、をかしけれ

まだ粥杖叩きゲーム続いてましたね。「ことにおどろかず、顔すこし赤みてゐたる」のは男君ではなくて,叩かれた姫君ですかね。というのは接続助詞「を・・が・ど・ば」の前後で主語が変わる可能性が高い(絶対ではないが)と言われるからです。

「こそ」→「をかしけれ(已然形)」は係り結びですね

「逃ぐ」の活用:にげ,にげ,にぐ,にぐる,にぐれ,にげよ(下二段活用)

「をかし」の活用:(をかしく・)をかしから,をかしく・をかしかり,をかし,をかしき・をかしかる,をかしけれ,をかしかれ(シク活用)

 

また、かたみに(互に=互いに)打ちて、男をさへ打つめる(ようだ)。いかなる心にかあらむ、泣き腹立ちつつ、人をのろひ、まがまがしくいふ(忌々しく不吉なことを言う?)もあるこそ、をかしけれ。 内裏わたり(辺り)などの、やむごとなき(高貴な)も、今日はみな、乱れてかしこまりなし(畏れることがない)

「めり」は「ようだ」という意味の助動詞ですが,「ぞ」→「める」(連体形)という係り結びになっています。なお「めり」は「見えあり」から来ているらしく,視覚に基づく推量(見たところ~ようだ)のようです。伝聞・推定の「なり」(断定のなりとは違う)は「音あり」から来ているそうです。

「めり」:○,(めり),めり,める,めれ,○(終止形,ラ変の場合は連体形に付く)

伝聞推定「なり」:○/(なり)/なり/なる/なれ/○(終止形,ラ変の場合は連体形に付く)

断定「なり」:なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ(体言や活用語の連体形に付く)

※「鐘が鳴るなり法隆寺」の「なり」は,「鳴る」と言っているから伝聞推定の「なり」

「泣き腹立ち」「のろひ」「まがまがしくいふ」って,叩かれた人が半狂乱になって怒っているということ? なお粥杖で叩く風習のせいで「粥杖事件」(御深草院が近習の男達を動員して女房達を叩かせ,怒った女房達が御深草院に仕返しした?)が起こったというのが後深草院二条の『とはずがたり』巻二にあるそうです

 

除目の頃など、内裏わたり(辺り)、いとをかし。雪降り、いみじう凍りたるに、申文(もうしぶみ)(官位申請書?)持て歩く四位・五位、若やかに心地よげなるは、いとたのもしげなり。老いて頭白きなどが、人に案内いひ(事情を言って取り次がせる?)、女房の局などに寄りて(の所に寄って)、おのが身の賢き由など、心一つをやりて(一心不乱に?)説き聞かするを、若き人々は、まねをし笑へ、いかでか知らむ(本人は知りようもない)。「よきに奏し天皇上皇に申し上げ)給へ」「啓し(皇后や皇太子に申し上げ)給へ」などいひても、(官位を)得たるはいとよし、得ずなりぬる(得ないということになってしまう)こそ、いとあはれなれ。

除目(じもく)は任官式のようで,ウィキペディアによると春の除目は「正月11日からの三夜」だそうで,「県召(あがためし)の除目」「外官の除目」と呼ばれました。秋の除目は「司召(つかさめし)の除目」「内官の除目」です

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「申文」について,ウィキペディア「申文」にはこうあります。“除目や叙位が近づくと,文章に優れた人物に代筆を依頼する例や実際に完成した申文を天皇の側近や天皇の許に出入りする女官などに依頼して天皇への取次を求めることが行われた”

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「まねをし笑へ、いかでか知らむ」で,「ど」の前の「まねをし笑ふ」は「若き人々(若い女房たち)」,「ど」の後の「いかでか知らむ」は「まねをし笑」われている人です。ということで「を,に,が,ど,ば」の前後で主語が変わる実例になっています。いま古文を勉強している人は,接続助詞「を,に,が,ど,ば」の前後で主語が変わっているか一々確認する癖をつけるといいかもですね。

「奏す」「啓す」は「愛す」「念ず」などと同じく「す」の活用(サ変)ですが,「申す」は四段活用です

「念ず」(サ変)念ず/念て/念/念ずるとき/念ずれども/念ぜよ

「申す」(四段)申ず/申て/申/申とき/申ども/申

「得ずなりぬる」は「得ず」(得ない)+「なり」(なって)+「ぬる」(しまう)で正しいでしょうか?

完了強意「ぬ」の活用:な,に,ぬ,ぬる,ぬれ,ね(連用形に付く)

風と共に去りぬ」→「風と共に去ってしまった」(去りのような連用形に付く)

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~おまけで勉強~

(1)

助動詞は用言ではない:「活用するものが用言」だったら分かりやすいのですが,そうではなく,「活用し,単独で述語になれるものが用言」だそうです。用言は動詞・形容詞・形容動詞の3つであり,助動詞は活用するものの,単独では使えない(自立語ではない)ので用言とは言われません。

体言は簡単で,「活用せず,単独で主語になれるもの」が体言で,名詞(代名詞・数詞)です。

(2)「侍りしか」とは?

「侍り」に過去の助動詞「き」の已然形「しか」が付いた形

「しか」:せ/○/き/し/しか/○[基本的に連用形に付く]

「侍りしかば……」のように続いておらず,「侍りしか」で文が終わっている場合は,上に「こそ」があることによる係り結び(こそ……侍りしか)

(3)「ば」は未然形か已然形に付く

已然形の例として「ども」を付けることがあります。「思へども」「すれども」などです。「ども」の代わりに「ば」はどうでしょうか? 「ば」は未然形に付く場合と已然形に付く場合があるので,已然形の例として「ば」を使うとややこしくなります。

未然形に付く「ば」:「……ならば」(仮定)

已然形に付く「ば」:「……ので(原因理由)」「……と,……ところ(偶然条件)」「……と決まって(恒常条件)」

例.「吹かば」は「吹いたら」。「吹けば」は「吹くので」。「雪の降れれば」の「降れれば」は「降る」の已然形「降れ」+助動詞「り」の已然形「れ」+「ば」で,「降っているので,降ったので」(「り」はサ変の未然形と,四段の已然形or命令形に付く。サ未四已(さみしい)と覚えるらしい。「○○せり」「降れり」「知れり」)

なお「已然形」の「()」は「既に」の意味(蒼天已死=蒼天(すで)に死す)であり,ウィキペディアによると “已然とは「すでにそうした」「すでにそうなった」の意味であり,確定条件(~ので)を表す「ば」や「ども」をつけることでできる語形であるのでこの名がある。一方,口語において仮定形と名称を変えたのは,この語形をつくる「ば」の文法的機能が仮定条件を表すものに変化したからである。ちなみに文語において仮定条件を表す場合,「ば」の前は未然形であった”ウィキペディア「已然形」)

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枕草子,なかなか難しいですね。次回は三月や,四月の葵祭です。↓次回はこちら

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ファーストサマーウイカは『光る君へ』で清少納言を演じた

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