フレイニャのブログ

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ギリシア・ローマ神話(9) ラートーナ(レートー)

ギリシア・ローマ神話(8)」の続きで,第5章に入ります。

Chapter V Apollo and King Admetus
There would have been but little trouble between Jupiter and his stately wife if no one but Minerva ever gave the watchful Juno cause for jealousy; but other goddesses, and even mortal maidens, found favor in the eyes of Jupiter, and for their sake he often left her side. From his throne in the high heavens the ruler of the world saw not only the goddesses, with their glory of immortal youth, but also the daughters of men endowed with that same beauty and grace which the gods themselves had bestowed upon the first woman.

ミネルウァ(アテナ)を除く誰もが,観察眼の鋭いユーノー(ヘーラー)に嫉妬の原因をもたらさなければ,ユピテル(ゼウス)とその堂々たる妻の間に問題は生じなかったろう。しかし他の女神たち,それどころか人間の少女たちすらもが,ユピテルの目に留まり,彼女らのために彼はしばしば妻のそばを離れた。空高くにあるその玉座から世界の支配者は不朽の若さという栄誉を持つ女神のみならず,神々自身が最初の女性に授けたのと同じ美しさと優美さを持つ人間の娘たちを観察していた。

mortal は「死ぬ運命にある(定命の),人間の」,immortal は「不死の,不朽の」です。

endowbestow も「与える,授ける」です。同じ単語を2回使えばいいのに敢えて変える(パラフレーズする)のが英語です。

 

Though Juno "of the snow-white arms" alone enjoyed the title of queen of heaven, she knew that she had many rivals for the love of Jupiter; and it was this jealousy of all loveliness in woman that made her ever watchful and revengeful. Perhaps it was the cause, too, of the very changeable temper that her husband accused her of possessing.

「雪のように白い腕をした」ユーノーだけが天の王妃の称号を享受したが,ユピテルからの愛に関しては数多くのライバルがいることを彼女は知っていた。そして女性が持つあらゆる愛らしさへのこうした嫉妬こそが,彼女を一層観察眼鋭くかつ復讐心深くしたのである。もしかするとこれがまた,余りに過ぎると夫が非難した彼女の機嫌の変わりやすさの原因なのかもしれなかった。

it is ... that ~の強調構文(分裂文)は,「~なのは……である」とか「……こそ~である」と訳せます。

 

Whoever won the affections of Jupiter was sure to be persecuted by "cruel Juno's unrelenting hate," as the poet Virgil says; but this did not hinder the ruler of the gods from leaving very often the marble halls of Olympus to wander, in some disguise, about the earth. It was after such an absence that the watchful Juno learned of Jupiter's love for fair-haired Latona, goddess of dark nights.

ユピテルの寵愛を勝ち取った者は誰もが,必ずや「残酷なユーノーの容赦なき憎悪」に責められた,とは詩人ウェルギリウスの言葉である。しかしだからと言って神々の支配者は度々オリュンポスの大理石の広間を離れて何者かに扮装し,地上を彷徨うことをやめなかった。ユピテルが闇夜の女神,美しい髪をしたラートーナを愛していることを観察眼の鋭いユーノーが察したのはそのように出かけた後の事だった。

whoever V は「V する者は誰でも」「誰が V しようとも」の意味があります。1つめの意味の場合は anyone who V,2つめの意味の場合は no matter who V とも言えます。

hate「憎む」の名詞形には hatred があるのですが,hate のままでも名詞になるようです。have a hate for...「……を憎む」

ウェルギリウスヴェルギリウス)は紀元前70年から紀元前19年の人です。カエサルの暗殺が紀元前44年,オクタウィアヌス(8月の語源であるアウグストゥス)の即位が紀元前27年であり,共和政ローマから帝政ローマへの移行期を生きた人ですね。英語ではヴァージルのような発音になります。ダンテの『神曲』でダンテに地獄を案内するのがウェルギリウスです。

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北欧神話オーディンは人間がどんなことに困っているか知るために度々地上を彷徨いましたが,ゼウスは女漁りのために地上を彷徨ったのでしょうか。これがゲルマンとラテンの違いなのでしょうか。

・ラートーナはギリシア神話ではレートーです。

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As this new rival was not a mortal maiden who could be punished with death, the wrathful queen was forced to be content with banishing the goddess forever from Olympus, and compelling her to live upon the earth. Not satisfied with this, she decreed that any one who took pity on the unhappy goddess, or gave her any help, would incur the lasting displeasure of Juno.

この新たなライバルは人間の少女ではないため罰として死を与えることはできず,怒った女王はこの女神を永久にオリュンポスから追放し,地上で暮らすことを強制することで満足せざるを得なかった。これに満足せず,ユーノーはこの不幸な女神を憐れんだり救いの手を差し伸べた者は永遠にユーノーの不興を買うと宣言した。

content は「中身,内容」という意味(コンテンツ)と,「満足して」という意味に大別されます。「中身があるので満足」ということです。「……で満足せざるを得なかった」なのに「これに満足せず(Not satisfied with this)」というのも変ですが……

banish は「追放する」,vanish は「消滅する」ですが,前者は ban「禁止する」,後者は vain「虚しい」と関連付けて区別しましょう。今回は文脈からして「追放する」の方だと分かりますけどね。

 

For days and nights Latona wandered, not daring to ask for food or shelter, since all men knew of Juno's decree. She slept at night in some spot where the trees offered protection from wind and rain, and her only food was the scanty store that she could gather by the way—berries, nuts, wild honey, and sometimes bits of bread dropped by children in their play.

皆がユーノーの宣言を知っていたので,ラートーナは食べ物や住まいを求めることもせずに昼も夜も彷徨った。彼女は夜は木々が雨風から守ってくれる場所で眠り,食べ物と言ったら道すがら集めたものを蓄えた僅かな物だった。木の実,ナッツ,天然の蜂蜜であり,時には遊んでいる子どもが落としたパンの欠片であった。

shelter は「住居,保護,避難場所」です。「衣食住」を food, clothing and shelter と言います。

scanty は「僅かな,乏しい;下着のスキャンティ」です。「乏しい」は scant とも言います。細かい違いとして scant は[通例限定]なので「乏しい……」は scant ... とも scanty ... とも言いますが,「……が乏しい」は△... is scant ではなく○... is scanty です。間違えるのが怖ければ常に scanty が無難ですかね。

 

One day, being very thirsty, she stopped beside a clear pool to drink; but some reapers who were passing by saw her, and hoping to gain favor with Juno they stepped into the pool and stirred up the water into such muddiness that poor Latona could not drink. Angered by such uncalled-for cruelty, the goddess prayed to Jupiter that these wicked men might never leave the spot where they were standing. Jupiter from his throne in the high heavens heard her prayer, and in answer he turned the reapers into ugly green frogs and bade them stay forever in the muddy pool. And ever afterward when men came upon slimy ponds, where rank weeds grew and the water oozed from muddy banks, there they found the blinking frogs—even as Jupiter had willed.

ある日,とても喉が渇いたので,澄んだ泉に立ち寄って飲もうとした。しかし通りすがりの収穫人が彼女を見かけ,ユーノーから褒めて貰おうと泉に立ち入り,泥に塗れるまでかき混ぜたので哀れなラートーナは飲むことができなかった。そのような意味のない冷酷さに怒りを覚え,女神はユピテルに対し,このような邪悪な男たちが今立っている場所から離れられないようにと祈った。ユピテルは空高くの玉座から彼女の祈りを聞き,その返答に男たちを醜い蛙に変え,永遠に泥まみれの泉に留まるよう命令した。その後人々が,水草が生い茂り,泥だらけの岸から水が滲み出るその泥っとした池を通りかかると,忌まわしい蛙たちが,まさにユピテルが望んだようにいたのであった。

stir (up) は「かき混ぜる,かき立てる」です。

call for... は「……を求める」ですから,uncalled-for は「望まれない,無用の」です。

turn A into B は「A を B に変える」です。

・この blinking はちょっと難しいのですが,「瞬きしている,明滅している」という通常の意味ではなく,「忌まわしい」という俗語の意味です。

・この willed は助動詞ではなく動詞の will ですね。will も would も動詞用法があります。

ウィキペディア「レートー」にはこのようにあります “ある時レートーはリュキアに立ち寄り,池の水を飲もうとすると,村人たちがそれを止めようとした。レートーは反論するが,村人たちは池に足を入れて泥を立たせ,水を飲ませまいとした。怒ったレートーは「この者たちがこの池から永遠に離れず,生涯をここで過ごすように」と願った。すると村人たちは蛙になり,泥沼に変わった池に住むようになった”

・リュキアは小アジア(現トルコ)にあります。こんな所まで来ていたのですね。“レートーの起源は小アジアのカーリア地方で崇拝されていた大女神ラーダーとされる”ウィキペディア「レートー」)

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まだラートーナの話は終わっておらず,そもそも本章はアポロンの話なのですが,やや長くなったのでここで切ります。次回,アポロン登場です。簡単に言っておくと,このラートーナ(レートー)がアポロ(アポロン)とディアーナ(アルテミス)を産むわけですね。

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