ドイツ語版ウィキペディアで日本の戦国武将の記事を読み,ドイツ語の勉強をしていきます。「上杉謙信3」の続きです。
1551 suchte Uesugi Norimasa (上杉憲正; 1523–1579), geschlagen von Hōjō Ujiyasu (北条氏康; 1515–1571), Schutz in der Burg seines starken Vasallen.
suchte は suchen「探し求める」の過去形です。
geschlagen は前回登場した「打ち負かされて」です。
Schutz は「保護」です。「保護を求めた」ということですね。
Burg は「城」です。なお Berg は「山」です。
sein(es) は「彼の」です。
stark は前回登場した「強い」です。
Vasall は「家臣」です。英語でも vassal「家臣」があり,『ローランの歌』英訳版で山ほど出て来ました。
以上より「1551年,上杉憲政が北条氏康に敗れて,彼の強い家臣の城に保護を求めた」です。「彼」は景虎を指しているようですが,彼の強い家臣とは誰でしょう。日本語版には,景虎が憲政を保護し,
Dieser stellte aber Bedingungen: Norimasa musste ihm sein Amt des Kantō-Kanryō abtreten, ihn als Sohn adoptieren und ihm den Titel Echigo no Kami (越後の上) verleihen.
dieser は「これ(this)」です。
stellte は stellen「立てる,(条件)を付ける」の過去形です。Bedingung が「条件」なので,コロンまでの意味は「しかしこれには条件が付いた」ですね。
musste は müssen「must」の過去形です。
ihm は er「彼」の3格で,「彼に」(him)です。
Amt は「官職,官庁」です。次に「関東管領」とあるので「官職」ですね。しかし「かんとうかんりょう」ではなく「かんとうかんれい」なので,ドイツ語版ウィキペディアの執筆者に教えてあげたい笑
abtreten は「譲り渡す」です。ここまでの訳は「憲政は景虎に関東管領の職を譲らねばならなかった」です。但し日本語版によると1561年に関東管領職を譲っており,保護されてすぐではありません。
ihn は er「彼」の4格で,「彼を」(him)です。
adoptieren は「採用する,養子に取る」で英語の adopt に相当します。「景虎を養子に取らねばならなかった」です。
verleihen は「与える,授ける,貸す」です。「彼に越後守の称号を授けなければならなかった」です。
もう少し行けそうですね。
Im folgenden Jahr schor Kagetora sein Haar und nannte sich von da ab Kenshin, unter welchem Namen er dann bekannt wurde.
folgen は以前登場しましたが follow です。そして動詞の語尾に d を付けることで現在分詞化します。folgend = following です。im folgenden Jahr = in the follwoing year「翌年に」です。folgend の後に更に en が付いていますね。im とは in dem のことなんですが,dem(3格)ということで en という活用語尾が付きます。作文や会話ではこういう活用語尾は大変ですが,読解時は気にしないで読めます。
schor は scheren「共有する(share);剃る(shave)」の過去形です。
Haar は hair なので「剃る」でしたね。「剃髪(出家)」したということです。
nannte は nennen「名付ける(name)」の過去形です。ネネンてなんか可愛いですね。
von da ab は「そこから離れて」という意味みたいですが,よく分からないので(景虎という名前から離れて?)無視すると,「翌年景虎は剃髪し謙信と名乗った」です。
welch は英語の which に相当し,unter welchen Namen = under which name = and under that name「そしてその名の下に」です。
bekannt は bekennen「認める」の過去分詞で,bekannt wurde で「認識されるようになった」です。「景虎より謙信の名で知られた」と言いたいのでしょう。
ただし日本語版によると「謙信」と名乗ったのは1570年のことで,相当あとです。1552年に名乗ったのは「宗心」(臨済宗)ですね。なお景虎は政虎(上杉憲政の政),輝虎(足利義輝の輝)と改名しています。武田晴信が信玄と名乗ったは1559年です。
Der Shōgun befahl ihm, nach Kyōto zu marschieren und dort die Hōjō zu bekämpfen.
befahl は befehlen「命ずる」の過去形です。ihm(er の3格)は「彼に」です。「彼に命じた」ということです。何を命じたかはカンマの後でしょう。
nach は以前「……の後」と言いましたが,今回は「……へ」ですね。「京都へ」です。
marchieren は辞書を引かなくても推測できる綴りですね。多分「マーチする(行進する。進軍する)」でしょう。
dort は there です。「そこで」です。
bekämpfen は「……と戦う」ですが,dort が奇妙ですね。北条は京都にはいませんから。dort は訳さずにおきます。
Der Shōgun befahl ihm, nach Kyōto zu marschieren und dort die Hōjō zu bekämpfen.
「将軍は謙信に,上洛することと北条と戦うことを命令した」
足利将軍が景虎に北条と戦うのを命じたのは,足利幕府の官職である関東管領の上杉憲政を北条がいじめたからですかね。
日本語版によるとこの謙信の上洛は1559年5月で,以前にも1552年9月に初上洛しています。上洛時の将軍は共に足利義輝です。
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今回は4文進めました。
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単語リスト
abtreten「譲り渡す」
adoptieren「採用する,養子に取る(adopt)」
das Amt「官職,官庁」
befehlen[過去befahl]「命ずる」
bekämpfen「……と戦う」
bekennen[過去分詞bekannt]「認める」
die Bedingung「条件」
die Burg「城」
dieser「これ(this)」
dort「そこで」
folgend「following」
das Haar「髪」
ihm「彼に(3格)」(him)
ihn「彼を(4格)」(him)
marchieren「行進する,進軍する」
müssen[過去musste]「must」
nach「……の後」「……へ」
nennen[過去nannte]「名付ける(name)」
scheren[過去schor]「共有する(share);剃る(shave)」
der Schutz「保護」
sein(es)「彼の」
stellen[過去stellte]「立てる,(条件)を付ける」
suchen[過去suchte]「探し求める」の過去形です。
der Vasall「家臣」
verleihen「与える,授ける,貸す」
welch「which」