ドイツ語版ウィキペディアで日本の戦国武将の記事を読み,ドイツ語の勉強をしていきます。「上杉謙信1」の続きです。
Nach dem Tode des Vaters folgte sein älterer Bruder Harukage auf ihn, aber da er schwächlich und auch krank war, zeigte er kaum Fähigkeiten zu regieren.
↓「来世」は英語で Afterlife,独語で Leben nach dem Tod「死後の生」
sein älterer Bruder の
Nach dem Tode des Vaters folgte sein älterer Bruder Harukage auf ihn
「父(為景)の死後,彼(謙信)の兄晴景が父の跡を継いだ」です。
er「彼は」は兄晴景を指します。war は初回で見た通り was でしたね。
schwächlich は「病弱」,krank は「病気」といった意味です。そう言えば医療ドラマで患者のことを「クランケ Kranke」と言っていますね。
よって
aber da er schwächlich und auch krank war
「しかし彼は虚弱であり,また病気だったから」です。
英語では「he was 病弱」となるべきところ,ここでは「he 病弱 was(er 病弱 war)」となっていますね。 これをもって「ドイツ語は珍妙な言語だ!」と言ってはなりません。日本語だって「彼はだった病気」とは言わないのですから。
zeigte er kaum Fähigkeiten zu regieren
「彼は統治能力をほとんど示さなかった」
もう一文頑張りましょう。
Kagetora, damals 11 Jahre alt, fühlte sich durch diesen Zustand so gestört, dass er um Erlaubnis bat, Mönch zu werden unter dem Namen Shūshimbō.
fühlte は fühlen「感じる」の過去形です。
sich は「自分自身(himself)」です。
gestört は「煩わされて」という意味のようです。つまり「彼はこの状態に自身が煩わされていると感じた」です。謙信(景虎)は兄が病弱で統治能力がなかったことにより,「よっしゃー俺が頑張ろう」ではなく「なんかめんどくさいなー」と感じたということです。映画『天と地と』では一度国を捨てて逃げ出していましたね。
さて,so ... dass は非常に重要で so ... that「余りにも……なので」です。「余りにも煩わしく感じたので」,どうしたのでしょうか。
werden は前回記事でも触れましたが「……になる」です。Mönch zu werden で「モンクになる(こと)」ですね笑 なおこの zu werden は前の Erlaubnis「許可」に掛かるのでしょう。「モンクになる許可を求めた」です。
unter は under であり unter dem Namen は「名の下」です。以上より
Kagetora, damals 11 Jahre alt, fühlte sich durch diesen Zustand so gestört, dass er um Erlaubnis bat, Mönch zu werden unter dem Namen Shūshimbō.
「景虎は当時11歳であったが,こうした状況に煩わしさを感じたので,宗心坊という名の下に僧になる許可を求めた」
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ドイツ語の発音アドバイス
v は英語の f の発音。英語の v の発音になるのは w
der Vater:「ファーター」(父)
das Wasser:「ヴァッサー」(水)
※der とか das とか込みで覚えておくと名詞の性を覚えられる
a は「アー」だが ä は「エー」のようになる
der Jäger:「イェーガー」(狩人)
※a の上の「¨」は「ウムラウト」で,e という文字の成れの果て。ウムラウトが打てない時は Jaeger で代用する
o は「オー」だが ö は「エー」のようになる
der Mönch:「メンヒ」
Köln:「ケルン」
※「オー」と「エー」の中間のような音 /œ/。ウムラウトが打てない時は Moench で代用する。「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」(川柳)
u は「ウー」だが ü は /y/(円唇前舌狭母音)になる
“日本人向けの書籍ではしばしば「唇をウの形にして,イと発音する」との説明がみられる”(ウィキペディア)
über:「ユーバー」
※「ユ・ュ」と表記しているが,上記の /y/ の発音。ウムラウトが打てない時は ueber で代用する
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単語リスト
aber「しかし」(but)
alt[比較級älter]「年を取った」(old)
auch「また」(also)
auf「……の上」(on)
bitten[過去bat]「求める,乞う」(ask, beg)
der Bruder「兄弟」(brother)
da「……だから」(since)
damals「当時」(at that time, then)
durch「……を通じて」(through)
die Erlaubnis「許可」(permission)
→um Erlaubnis bat+zu+動詞「……する許可を求めた」
fähig「能力のある」(able)
→die Fähigkeit「能力」(ability)
folgen[過去folgte]「ついて行く,継ぐ」(follow)
→folgen+auf+4格「……の後に続く」
fühlen[過去fühlte]「感じる」(feel)
ihn「er の格変化(4格)」(him)
das Jahr[複数Jahre]「年」(year)
kaum「ほとんど……ない」(hardly)
krank「病気の」(sick)
das Leben「生」(life)
der Mönch「僧」(monk)
nach「……の後」(after)
der Name「名前」(name)
regieren[過去regierte]「統治する」(reign)
schwach「弱い」→schwächlich「病弱な」
sein「彼の,それの」(his, its)
sich「自分自身に,自分自身を」(himself など)
so ... dass「余りに……なので」(so ... that)
stören[過去störte 過去分詞gestört]「煩わす」(disturb)
der Tod「死」(death)
unter「……の下」(under)
der Vater[2格はdes Vaters]「父」(father)
zeigen[過去zeigte]「示す」(show)
zu+動詞の原形「to+動詞の原形」
der Zustand「状態,状況」
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発展(あまり気にしないで OK)
Mönch は「モンク(僧)」ですが,Mönch zu werden「僧になる」の Mönch に冠詞 ein が無いですね。前回の ein Daimyō には ein があったのに。「ある職業である」とか「ある職業になる」と言う場合は省略できます(Ich bin Student.)。英語でも turn Buddhist「仏教徒になる」,be elected President「大統領に選出される」のように無冠詞でよい場合があります。
発展(気にしないで OK)
nach dem Tod ではなく nach dem Tode となっていませんか?
Wiktionary と引くと,古い形の Tode も使われうるそうです’(例えば seit seinem Tod の代わりに seit seinem Tode も使われるとのこと)
↓次回はこちら