フレイニャのブログ

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ローランの歌(2)

ブランカンドランがサラセンのマルシル王に対し,カール大帝への降伏を勧めている「ローランの歌(1)」の続きです。

 

IV

  Says Blancandrins: "By my right hand, I say,
  And
by this beard, that in the wind doth sway,
  The Frankish host you'll see them all away;
  Franks will retire to France their own terrain.
  When they are gone, to each his fair domain,
  In his Chapelle at Aix will Charles stay,
  High festival will hold for Saint Michael.
  Time will go by, and pass the appointed day;
  Tidings of us no Frank will hear or say.
  Proud is that King, and cruel his courage;
  From th' hostage he'll slice their heads away.
  Better by far their heads be shorn away,
  Than that ourselves lose this clear land of Spain,
  Than that ourselves do suffer grief and pain."
  "That is well said.
So be it." the pagans say.

ブランカンドランは言う。「私の右手にかけて,言う。そして風に靡くこの髭にかけて。

フランク軍は皆去っていくだろう。フランク人達は彼ら自身の領土,フランスに帰還するだろう。

彼らがそれぞれの立派な領土に去って行けば,アーヘンの礼拝堂にシャルルは滞在するだろう。ミカエルの為の厳粛な祭りが催されるだろう。

時は経ち,約束の日を過ぎるだろう。フランク人は我々の便りを聞いたり言ったりしなくなるだろう。

かの王は誇り高い。そしてその武勇は容赦がない。王は人質の首を刈り取るだろう。

人質達の首が刈り取られたとしても,我々自身がこの美しいスペインの土地を失うより遥かに良い。我々自身が悲しみと苦痛に塗れるよりは」

「よく言った。それで致し方なかろう」異教徒達は言う。

By my right hand や by this beard の by は「……にかけて,誓って」という意味で,「……」には大切な物や神の名が来るのでしょう。「右手」は当然として「髭」も大切なんですね。スカイリムではよく「イスミールにかけて」と言っていました(イスミールはノルドから見たタロス)

So be it「それでいいさ」は断念や承知を表します。

 

V

  The council ends, and that King Marsilie
  Calleth aside
Clarun of Balaguee,
  
Estramarin and Eudropin his peer,
  And
Priamun and Guarlan of the beard,
  And
Machiner and his uncle Mahee,
  With
Jouner, Malbien from over sea,
  And Blancandrin, good reason to decree:
  Ten hath he called, were first in felony.
  "Gentle Barons, to Charlemagne go ye;
  He is in siege of Cordres the city.
  In your right hands bear olive-branches green
  Which signify Peace and Humility.
  If you by craft contrive to set me free,
  Silver and gold, you'll have your fill of me,
  Manors and
fiefs, I'll give you all your need."
  "We have enough," the pagans straight agree.
                      AOI.

話し合いは終わり,マルシル王は以下の者達を傍に呼ぶ。

バラゲーのクララン,エストラマランとその同輩ユードロパン,

プリアモンと顎髭のガーロン,更にマシネルとそのおじマエー,

更に海外からジョウネルとマルビヤン,そしてブランカンドラン,決定するもっともな理由のある者。

この十名を彼は呼んだ。獰猛な十人だった。

「卿たちよ,シャルルマーニュの下へ向かうのだ。彼はコルドレスの街を包囲しておる。

右手に緑色のオリーブの枝を携えよ。それは平和と謙虚を意味している。

もし卿たちがその狡知によって私を上手く解放するなら,

金も銀も,欲しいだけ与えよう。荘園も土地も,必要なだけ与えよう」

「もう十分持っています」と異教徒達は口を揃えて言う。

ブランカンドラン以外に9人の固有名詞が出てきて白目になりました。

・バラゲー(Balaguee)についてはスペインのバラゲー(Balaguer)でしょう。

ja.wikipedia.org

・Clarun については Google 検索で Clarin de Balaguer がヒットしました。

ユードロパンググる非常に興味深いページがヒットしました。土星の衛星イアペトゥスのクレーター名は,ローランの歌の登場人物に由来するというのです。このページにユードロパン,プリアモン(Priamon),ガーロン(Garlon)は載っていました。

ja.wikipedia.org

fief は「封土,領地,知行」です。

 

VI

  King Marsilies, his council finishing,
  Says to his men: "Go now, my lords, to him,
  Olive-branches in your right hands bearing;
  Bid ye for me that Charlemagne, the King,
  In his God's name to
shew me his mercy;
  
Ere this new moon wanes, I shall be with him;
  One thousand men shall be my following;
  I will receive the rite of christening,
  Will be his man, my love and faith swearing;
  Hostages too, he'll have, if so he will."
  Says Blancandrins: "Much good will come of this."
                      AOI.

マルシル王は,話し合いが終わると彼らに言う。

「さあ行け,卿らよ,彼の下へ。オリーブの枝を右手に携えて。シャルルマーニュが,王が,神の名の下に私に慈悲を示すように働いてくれ。

この新月が欠ける前に,私は彼の下にいよう。一千の兵を随行させよう。

私はキリスト教の儀式を受けよう。彼の配下になろう。愛と忠義を誓おう。

人質も出そう。彼がそう望むなら」

ブランカンドランは言う。「これで十分うまく行きましょう」

shew は show の古語です(shew - shewed - shewn)。これでも show と同じく「ショウ」と発音します。

ere...[エアー]は before... です。erst になると「かつて」です。

・「キリスト教の儀式を受ける」とは「キリスト教に改宗する」ということでしょう。

 

VII

  Ten snow-white mules then ordered Marsilie,
  Gifts of a King, the King of Suatilie.
  Bridled with gold, saddled in silver clear;
  Mounted them those that should the message speak,
  In their right hands were olive-branches green.
  Came they to Charle, that
holds all France in fee,
  Yet cannot guard himself from treachery.
                      AOI.

それでマルシルは雪のように白い十頭の騾馬を用意させた。

スアティリーの王からの贈り物だ。金の馬勒をつけ,明るい銀の鞍をつけた騾馬だ。

伝言を伝える彼らを乗せ,彼らの右手には緑のオリーブの枝があった。

彼らはフランス全土を制しているシャルルの下にやって来た。

しかし王は裏切りから身を守ることはできない。

hold ... in fee は「制する,我が物とする」です。fee は「料金」として有名ですが「封土(権)」の意味があり,先程の fief と同根です。

・最後の Yet cannot guard himself from treachery がよく分かりませんでした。himself は単数ですからカール大帝のことでしょう。「カール大帝は裏切りから自身を守ることはできない」とはどういうことでしょうか。ネタバレになるので詳しくは言いませんが,いずれ裏切られるということでしょうかね。

 

VIII

  Merry and bold is now that Emperour,
  Cordres he holds, the walls are tumbled down,
  His catapults have battered town and tow'r.
  Great good treasure his knights have placed in
pound,
  Silver and gold and many a jewelled gown.
  In that city there is no pagan now
  But he been slain, or takes the Christian vow.
  The Emperour is in a great orchard ground
  Where
Oliver and Rollant stand around,
  
Sansun the Duke and Anseis the proud,
  Gefreid
d'Anjou, that bears his gonfaloun;
  There too
Gerin and Geriers are found.
  Where they are found, is seen a mighty crowd,
  Fifteen thousand, come out of France the Douce.
  On white carpets those knights have sate them down,
  At the game-boards to pass an idle hour;—
  
Chequers the old, for wisdom most renowned,
  While fence the young and lusty bachelours.
  Beneath a pine, in eglantine embow'red,
  l Stands a fald-stool, fashioned of gold throughout;
  There sits the King, that holds Douce France in pow'r;
  White is his beard, and blossoming-white his crown,
  Shapely his limbs, his countenance is proud.
  Should any seek, no need to point him out.
  The messengers, on foot they get them down,
  And in salute full courteously they
lout.

さてかの皇帝は気分が良く気持ちも大きい。コルドレスを押さえ,市壁は取り壊された。彼の弩は街と塔を打ち壊した。

彼の騎士達は山のような宝物を保管庫に置いた。金銀や,宝石を埋め込んだ多くのガウンを。

その街にはもう異教徒はいない。殺されたか,キリスト教徒の誓いを立てた。

皇帝は広大な果樹園にいる。周りにはオリヴィエとローランが立っている。

サンソン公爵と誇り高きアンセイス,戦闘旗を持ったジョフロワ・ダンジュー,またジェランとジェリエもいる。

彼らがいる所には大勢の軍勢がいる。一万五千名,甘美なフランスからやって来た。

その騎士達は白いカーペットに座っている。暇な時間を過ごそうとゲームのボードに向かいながら。

年配者はチェッカーを,非常に評価される知恵をかけて。一方若者や精力盛んな独り者はフェンシングを。

エグランタインバラに囲まれた松の下に,全面を金で装飾された腰掛けがあり,そこに王が,甘美なフランスを手に押さえた王が座っている。その髭は白く,その王冠は花が咲いたように白い。均整の取れた四肢,誇りに満ちた表情。たとえ誰かが探しても,指さす必要もなく分かる。

使者たちは騾馬を降りて徒歩になり,慇懃丁寧な挨拶で身を屈める。

・この pound は「ポンド」でも「強く打つ,砕く」でもなく「保管庫」です。

カール大帝側の登場人物が立て続けに登場します。ローランは主人公,オリヴィエはその親友。Sansun については上で挙げた「イアペトゥスの地形一覧」にサムスンが載っていますが,取り敢えずサンソンとしておきます。Anseis については同ページにアンセイスが載っています。d'Anjou は「アンジュー(地名)の」という意味です。「ド・アンジュー」がつづまって「ダンジュー」になります。他にも例えば「ヨランド・ダラゴン」という歴史上の人物がいますが,「ダラゴン」は「(スペインの)アラゴンの」のことです。

gonfaloun は以下のような旗のことでしょう。「吹き流し」とも言うようです。更にフランク王国の軍旗はオリフラム(黄金の炎)と言うようです。

en.wikipedia.org

fr.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

Gerin「ゲリン」は「イアペトゥスの地形一覧」に載っていました。が,フランス語風のジェランとしました。

チェッカー(西洋碁,ドラフツ)は碁のようなチェスのようなゲームです。

ja.wikipedia.org

lout は「お辞儀する,腰をかがめる,屈服する;田舎者」です。

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次回,降伏の交渉開始でしょうか。次回をお楽しみに!

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Twitter 告知用あらすじ:マルシル王はブランカンドランの助言を容れ,シャルルマーニュに降伏することに。ブランカンドランら十名の臣はラバに乗り,オリーブの枝を携えて,シャルルの下に赴く。