フレイニャのブログ

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映画で英語のお勉強(1)アメリカン・ギャングスター(1)

映画のセリフの英語を紹介するというありがちなコーナーですが,「いつ使うんだよ」と思うような特殊なものではなく,少しでも役立ちそうなものを選んでいきます。とりわけ私は20年ほど受験業界に身を置いたので,受験でも役立ちそうな知識は積極的に取り上げていきたいと思います。

第一作目は大好きな映画である『アメリカン・ギャングスター』。主人公のギャングスター,フランク・ルーカス役のデンゼル・ワシントン以上に,仲間や対立するギャングスターたちが光っています。特にドン・カッターノ役のアーマンド・アサンテはこの映画でファンになりました。彼の英語の喋り方が渋すぎです!

 

gangster「(1人1人の)ギャング団員」

セリフを見る前に,まずタイトルにあるこの語を押さえておきましょう。ポイントは2つ。1点目は綴り。❌gangstar ではありません。「星(star)」ではないのです。

それ以上に重要なのが,a gang が日本語のように1人のギャングを意味する語ではないということです。a gang は「(1つの)ギャング団」という意味であり,その成員1人1人を a gangster と言うのです。

push out all the middlemen「中間業者をみな路頭に迷わす」

push out は「押し出す,突き出す」ですが「解雇する」の意味もあります。middleman は「仲買人,中間業者」。これを取り上げたのはこの映画の核心を示しているからです。シーンとしては,主人公フランク・ルーカスがボスのバンピィ・ジョンソンと街を歩いており,バンピィはディスカウント・ストアのような新しい商業形態を嫌っています(昔ながらの個人経営を好んでいる)。生産者から直接買い付けると,商品は安く売れて消費者は喜びますが,中間業者の仕事は無くなってしまう。こうした昨今の風潮をバンピィは嫌っているわけですが,バンピィの死後,あろうことか麻薬の分野でこれをやって大儲けするのが他ならぬフランク・ルーカスなのです。

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Sony this, Toshiba that.「二言めにはソニー東芝だとよ」

これは単純に面白いから選びました。『ランダムハウス英和大辞典』には A this and A that で「二言めにはAだ」「何かというとAだ」というのが載っています。

There is no one in charge.「責任者なんかいないんだよ」

charge の「管理責任」の意味は重要です。in charge of... で「……の責任者である,……を管理している」

Appreciate it.「ありがとう」/I appreciate that.「感謝します」

appreciate が「感謝する」の意味になる時は人を目的語にしないことは重要です。よって it, that, your kindness のようなものが目的語になります。なお Appreciate it. の方は『ランダムハウス英和大辞典』では(米南部・ミッドランド)とあり,最初の A が脱音することもあるとあります。そう言えば軍隊物で Attention!「気をつけ」の発音が「テーンション!」になっているのを聞いたことがあります(ション!だけになることも)。mend は amend からの頭音消失で生まれた語です。

on the rocks「ロックで」

「岩塊」の rock が「氷塊」の比喩となり,氷だけ入れて飲むのが「ロック」です。「ロック」とは「何も入れない」ということではなく「氷を入れる」ということなんですね。

want for nothing「何不自由なく暮らす」

That's the spirit.「その意気だ,その調子だ」

エルデンリング英単語 5』でゴストークが発したセリフとしても紹介しました。

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Class,「クラスの皆さん」

呼びかけです。突然ギャングらしからぬ表現が出てきましたが,ギャングを追い詰めるリッチー刑事(演ラッセル・クロウ)が司法学校に通っているのでした。

throw up「吐く,嘔吐する(vomit, puke)」

司法学校で,皆の前で意見陳述させられると緊張で吐きそうになるとリッチー刑事が言っています。

knowingly「故意に,分かっていながら」

accountant「会計係,会計士」

真面目な意味ですが,映画では turf accountant(bookmaker, bookie)「(賭博の)胴元」の意味で使われています。

Cops kill cops they can't trust.「サツは信頼できないサツを殺すんだよ」

関係代名詞目的格,及びその省略がとてもよく分かるセリフだと思いました。英語では文が修飾となる時,日本語のように前からではなく,後ろから掛かるんですよね。

Are you nuts?「頭おかしいのか?」

nuts は「夢中だ」という意味にもなり得ます。ここのシーン,背景を知らないとちょっと難しいと思いました。まずリッチー刑事が車のトランクから大金を見つけ,警察に届けようとするのですが,それを同僚が止めようとするのです。「自分のものにしろ」とアドバイスするのですが,その際「サツは信頼できないサツを殺すんだよ」という「アドバイス」も飛び出します。そこから察するに,賭博というものにギャングだけでなく警察官も絡んでいて,金を届けるとリッチー刑事が警察に恨まれるとアドバイスしたのでしょう。それは当時の警察がそれほど腐敗していたことを意味します。そしてその腐敗をリッチー刑事とフランク・ルーカスが暴くというのがこの映画の見所なのでした。

Sad about Bumpy.「バンピィのことは残念だ」

sad は about を取ることができます。

There has to be order.「秩序というものがなければならん」

「……がある」の There is... にも have to が使え,There has to be... は「……がなければならない」です。面倒なことに,... が複数なら There have to be... になりますね。

More important than one man's life, is order.「1人の命よりも大切なもの,それが秩序だよ」

SVCCVS に倒置したものです。Order is more important than one man's life. のことですが,一番言いたい order を最後に持ってきたい(焦点後置)ということで倒置しています。

Get a real job.「ちゃんとした仕事を見つけなよ」

ライバルのギャングスターのタンゴがフランクに対し,「バンピィも死んだことだし,麻薬なんか売ってないで真面目な仕事見つけろよ。俺の運転手なんかどうだ?」と挑発しています。

My man.(様々な意味)

この映画の見所の一つが,様々な場面で様々な意味でフランクが発する My man.(マ・メン)です。満足した時,「おいおい冗談だろ」と言いたい時,様々なニュアンスで使っています。そういえば『トレーニング・デイ』で同じデンゼル・ワシントンが My nigger.(おいおいやってくれるじゃないかみたいな意味だったかな)と言っていたのは面白かったです(相手は黒人じゃないのに)。相当のスラングだと思いますが……

Get yourself a new suit.「これでスーツでも新調しな」

エルデンリング英単語 5』のトープスのセリフでも紹介しましたが,この yourself は「自分でゲットしろ」ということではなく,「自分のためにゲットしろ」「自分用にゲットしろ」ということです(get の間接目的語)。普通は自分用に買うので,なくても成立するはずです。

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今回20表現取り上げました。物語はまだ始まったばかり! あと何回かに分けてこの映画を見て行きます。

 

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