前日2020/8/28の記事において,fly high「高く飛ぶ」ではhighは副詞用法だ,という話をしました。
しかし言葉を話す人は自由に話すのであり,品詞は後付けです。5文型だって5文型を学んでから話し出すのではなく,オニオンズという学者が英語を分析してわずか100年ほど前に後付けたのです。
「fly highと言えるのはhighが副詞になるから」と説明せず,あくまで形容詞highで説明することはできるのか。これが今回の話題です。
形容詞には補語になる用法(形容詞の叙述用法)があります。主格補語と目的格補語があり,今回は主格補語の話をします。
I am young.「私は若い」
この文のyoungは形容詞で,主格補語になっています。主格補語とは,主語とイコールの関係で置かれる名詞・形容詞です。主語はS,補語はCと略しますが,主格補語は[S=C]の関係になります。[I = young]です。
主格補語が使われる動詞の代表はbe(am,are,isなど)です。しかしbeだけでありません。
I became old.「私は年寄りになった」
「……になる」のbecomeも主格補語が取れます。「……に変化する」のturnもです。
The leaves turned red.「葉は紅葉した」
補語になる品詞の代表は形容詞です。名詞も補語になり得ますが,turnの場合は普通,
He turned into an eagle.「彼は鷲に変身した」
のように〈変化のinto〉を要します。turnの後に直接名詞が書けるのは
He turned Buddhist.「彼は仏教徒に転向した」
のように宗教や職業を転向する場合です(しかも無冠詞)
turnで脱線してしまいましたが,「……である」(be)や「……になる」(become,turn)だけが主格補語を取るのでしょうか。実は,
She married young.「彼女は若くして結婚した」
He died young.「彼は若くして死んだ」
のように,marry「結婚する」やdie「死ぬ」も補語が取れます。×younglyという副詞はなく,形容詞youngを補語の位置に置きます。なお補語であることは,動詞部分をbe動詞に変えて文が成立すれば確認できると習います。
She married young. ── She was young. (She = young;S=C)
He died young. ── He was young. (He = young;S=C)
このように動詞をbeに変えて成立すれば,補語だというわけですね。
さてこれで,be「……である」やbecome「……になる」だけでなくmarry「結婚する」やdie「死ぬ」まで補語が取れてしまいました。しかし「結婚する」も「死ぬ」もある意味変化を表す動詞ですよね。だから「……である」や,変化を表す動詞なら補語が取れるのでしょう。
ところが,さらに別の動詞でも補語が取れる例があります。
He came home tired.「彼は疲れて帰宅した」
He came home half dead (halfdead, half-dead).「彼は死ぬほど疲れて帰宅した」
よく「補語の特徴として,補語がないと文が成立しない」と言われます。ところがShe married young. の young は補語と言えるのに,She married. で文が成立します。「補語がなくても文が成立しているところへ,補語は付加できる」ということになります。
He came home tired. の例では,He came home. だけで「彼は帰宅した」という文が成立しているのですが,それに補語(tiredなど)をつけて,「どのような状態で帰宅したか」を表すことができるわけです。この「どのような状態で」に副詞を使う必要なく,主語の状態を述べるのであれば,形容詞を補語の位置に置けば良いわけです。He came home ×tiredly. としなくて良いんですね。
さて,be「……である」やbecome「……になる」,marry「結婚する」に加え,come「来る」も補語が取れることが分かりました。いよいよ本題です。
(1) The birds are high.「その鳥たちは高い」
(2) The birds fly high.「その鳥たちは高く飛ぶ」
(1)の文は意味は若干ヘンですが,文としては成り立ちます。だから(1)と(2)の関係からして,(2)のhighは副詞だと主張しなくても,主格補語の位置に置かれた形容詞と言えるのではないでしょうか。このことに気付かされたのはゴダイゴ(GODIEGO)のholy and brightという曲の歌詞でした。『西遊記パート2』のエンディングテーマですね。この中に
A star is shining so holy and bright.
という歌詞があります。これは「星がとても聖く(神々しく)明るく輝いている」という意味でしょう。「聖く」「明るく」には副詞を使っていません。形容詞のholy and brightを,主格補語の位置に置いているのです。
He came home so tired.
A star is shining so holy and bright.
この2つはS+V+C構文と言えるわけですね。
ということで「なんで副詞みたいな意味になっているのに,副詞でなく形容詞なんだろう?」と思った時は,この補語用法を思い出してください。