なんで反対の意味になってしまうのー(汗)という物を3つ紹介します。
(1)in the balance
balanceは「釣り合い,均衡」という意味ですね。強勢はbaにあります(/bǽ/)
lose one's balanceで「バランスを失う」,keep one's balanceで「バランスを保つ」です。分かり易いですね。off balanceはどうでしょう? offは「離れて」の意味があるので,off balanceは「バランスを失って」です。
では,be in the balanceはどうでしょうか? inには「……の状態にあって」の意味があります(in silence,in a line)から「バランスが取れている」でしょうか?
実は逆です。be in the balanceは「不安定な状態にある」という意味なのです。これは奇妙ですね。balanceは「天秤」という意味もあります。baは「2」を表す「バイ(bi)」(バイナリーbinaryとか,バイセクシャルbisexualのバイ)と同根で,「2つの物を皿に乗せて測る」ということで「天秤」です。「天秤」に乗せるとゆらゆらしますよね。そのゆらゆら状態にあるということで「不安定だ」ということなのです。「均衡」という意味と「不安定」という意味があるなんて困ったものですが,in the balanceを訳すときには特に注意しましょう。
(2)temper
temperは「気分,気質」という意味です。be in a bad temperは「不機嫌だ」,lose one's temperは「カッとなる,怒る」です。
では,be in a temperはどうでしょうか? lose one's temperすると「怒る」わけですから,temperは「平静な状態」ですよね。また,be in a bad temper「不機嫌だ」からbadが無くなっているので,「普通の気分のこと?」ってなりますよね。
実はbe in a temperは「怒っている」という意味です。「temperの中」にいても「怒っている」し,「temperを失って」も「怒る」という意味なのですから,訳がわかりませんね。be in a bad temper「不機嫌だ」から,badを「引き算」しても,やはり「怒っている」。このように数学的な論理性で測れないことがある点が,数学好きで英語が苦手な生徒がいる理由なのではないかと思います。言葉は日々変化するので,こういう奇妙なことも起こるわけですね。このtemperに関して言うと,結局この語は「怒っているかどうか」を言うのによく使われた結果,どのみち怒っているの意味に使われてしまうようになったのではないかと思います。
(3)defeat
defeatには「勝利」という意味と「敗北」という意味があります(汗)
defeat of Nは「Nを破ること」→「Nに対する勝利」
defeat against N,defeat by Nは「Nに敗れること」→「Nに対する敗北」
前置詞で区別できるとはいえ,なぜこのようになってしまうのか。しかしこれは,原則に基づいたまっとうな現象なんです。
これは「名詞構文」という,1回分の記事にすべき大きな話題に関連するのですが,動詞の名詞形には
(a)「……すること」
(b)「……されること」
(c)「……した・されたもの」
の意味があるのです。例えばrecognizeは「認める(承認する)」の意味がありますが,そこからrecognitionは(a)「認めること」,(b)「認められること」の意味があります。またselectの名詞selectionには「選択(すること・されること)」のほか(c)「選ばれたもの(セレクション)」もありますよね。defeatに戻ると,動詞のdefeatは「……を打ち破る」です。だから名詞defeatは(a)「打ち破ること=勝利」,(b)「打ち破られること=敗北」の両方の意味になり得るのです。
「えーなんでー(汗)」と思えることでも調べれば理由があるはずですから,辞書などはよく読むようにしましょうね。