オーディンがミーミルに泉の水を求めたAsgard Stories 7の続きです。
“And do you suppose that these things will buy wisdom?” said Mimir. “That can be gained only by bearing bravely, and giving up to others. Are you willing to give me a part of yourself? Will you give up one of your own eyes?”
「で,それらが知恵の代償に値するとお思いですか」とミーミルは言いました。「知恵は勇敢に耐え忍ぶこと,他人に身を投げ出すことで初めて得られるのです。あなたは御自身の一部を私に差し出すことを厭いませんか? 御自身の眼の1つを私に差し出せますか?」
・give up to othersは「他人に対して諦める・差し出す」ですが,目的語が書いていません。give yourself up to others「自らを他人に差し出す」と解します。
・be willing to-V「Vするのを厭わない」はbe ready to-V「喜んでVする」より少し積極性を下げた表現です。ただしbe ready to-Vは他に「Vする準備・覚悟ができている」「とかくVしがちである」もあります。
At this Odin looked very sad; but after a few moments of deep thought, he looked up with a bright smile, and answered, “Yes, I will even give you one of my eyes, and I will suffer whatever else is asked, in order to gain the wisdom that I need!” We cannot know all that Odin bravely suffered in that strange, bright valley, before he was rewarded with a drink from that wonderful fountain; but we may be quite sure that never once was the good Allfather sorry for anything he had given up, or any suffering he had borne, for the sake of others.
これを聞いてオーディンはとても悲しそうな顔をしました。しかし暫くの間深く考えたのち,明るく微笑んで顔を上げ,答えました。「いいだろう。眼の1つであってもお前に差し出してもよいし,求められれば他のどんなものでも受け入れよう,私に必要な知恵が得られるならば!」 この不思議な輝く谷で,オーディンが不思議な泉の水を飲ませてもらうために,オーディンが勇敢にも受け入れた事の全てを私達は知り得るわけではありませんが,父なるオーディンが他人のために手放したどの物についても,また耐え忍んだどんな苦しみについても,後悔したことは一度も無いということはまず間違いのないことでしょう。
・オーディンいいやつすぎひん?(´・ω・`)
・At thisのatはbe surprised atなどのatで,「……に対して(見て/聞いて)」→「ある反応をした」と言う時に使われるものです。
・「……ために」の意味でbeforeを使うことができます。実際辞書(私の場合ウィズダム英和辞典)にも載っていることです。
・never once was S sorry for... は〈否定語文頭倒置〉です。S was never once sorry for... からnever onceが強調のために文頭に回り,S was→was Sと倒置しました。
・ミーミルはのちヴァン神族によって首を切られてしまうのですが,オーディンはミーミルの首を保管してその後も助言を仰いだそうです。
以上がミーミルの泉のお話でした。次の話に移ります。
TYR AND THE WOLF — I
Odin, the Allfather, sat one day on his high air-throne, and looking around him, far and wide, saw three fierce monsters. They were the children of the mischievous fire-god Loki, and Odin began to feel anxious, for they had grown so fast and were getting so strong that he feared they might do harm to the sacred city of Asgard. The wise father knew Loki had given strength to these dreadful creatures, and he saw that all this danger had come upon the Æsir from Loki’s wickedness.
ある日,父なるオーディンが空中玉座に座って至る所を見回していると,3匹の獰猛な怪物が見えました。彼らは悪戯好きの火神ロキの子どもたちで,オーディンは不安になってきました。というのも彼らが余りにも急速に成長し,凶暴になっていくので,聖なるアースガルズの街に害をなすのではと恐れたからです。賢明な父オーディンはロキがこれらの恐ろしい生き物に力を与えたことを知っており,この危険の全てはロキの邪悪さによってエーシルに降りかかったことが分かっていました。
・mischievous「悪戯好きの,有害な」はmischief「悪戯,害」の形容詞形です。どちらもmisに強勢があり,chieのところは長音にしません。
・he saw that... は「……のを見た」ではなく「……のが分かっていた」です(cf. I see.)
・wicked(ness)は「ウィックト(ネス)」ではなく「ウィキッド(ネス)」ですね。
One of these monsters was a huge serpent, that Odin sent down into the ocean, where he grew so fast that his body was coiled around the whole world, and his tail grew into his own mouth. He was called the Midgard serpent. The second monster was sent to Niflheim, the home of darkness, and shut up there.
これらの怪物の1つは巨大な蛇で,オーディンが海洋に放ったものですが,そこで大蛇は急速に成長したので世界中を包むように蜷局を巻き,その尾は自身の口にまで届きました。大蛇はミズガルズの大蛇と呼ばれました。2つ目の怪物は闇の国ニヴルヘイムに送られ,そこに閉じ込められました。
・関係代名詞thatは直前にカンマを打つ〈非制限用法〉では使ってはならないとされます。直前にカンマを打つ場合は“, which...” “, who...”のようにwhich,whoを使います。しかしそれは現代英語のことで,古い英語では“, that...”は見ます。
・ミズガルズの大蛇(ミッドガルドの大蛇,ミドガルズオルム)はヨルムンガンドですね。ニヴルヘイムに追放されたのはヘルです。
The third, a fierce wolf, named Fenrir, was brought to Asgard, where Odin hoped he might be tamed by living among the Æsir, and seeing their good deeds, and hearing their kind words; but he grew more and more fierce, until only one of all the gods dared to feed him. This was the brave god, Tyr.
3つ目の怪物,フェンリルという名の獰猛な狼はアースガルズに連れてこられ,オーディンはそこでフェンリルがエーシルと交わって生活し,彼らの善行を見,彼らの優しい言葉を聞くことで飼いならされるだろうと期待しました。しかしフェンリルはますます凶暴になり,ついに彼に食べ物を与えようと進み出る者は全エーシルの中で1人しかいなくなりました。それが勇敢な神,テュールでした。
・1つ目も2つ目も遠くに追いやられたのに,なんでこんなヤバいのを本拠に連れてきたんですかね笑 考えてみると,犬は(狼ですが)man's best friendと言われ,溶け込めると思ったのでしょうか。
・deedはdoの名詞形です。似たものにfood(名詞)→feed(動詞),blood(名詞)→bleed(動詞)等ありますが,deedの場合は逆に名詞の方が“ee”ですね。
・until... は「……(する)までずっと」ですが,「そして(ついに)……する」と訳し下げることもあります。
・dare to-V「敢えてVする」はtoを使わない助動詞用法(dare V)もありますが,肯定では動詞用法を好みます(例外はI dare say「たぶん」)
次回,テュールとフェンリルのドタバタ劇(違)です。お楽しみに!
↓次回です