英語の「多義語」というのに気をつける人は多いと思います。
当ブログでもbill(ビラ,紙幣,法案,請求書;くちばし)とflush(赤面する,水を流す)について取り上げましたし,多義語は美味しいネタなのでこれからも紹介しようと思っておりますが,英語の多義語は重要だけれども日本語は気にしなくていいというのは誤りです。
「ため(為)」は「目的」と「理由」がありますよね。
昔ある生徒が「日光見物」をsee the sunshineと訳してしまったという話がありました。「空気を読め」とか「読解力」とか曖昧な話にしないで,「『日光』は多義語だ」と認識すればよいのだと思います。
日本語の多義語(1)
「日光」
(1) sunshine, sunlight, sunray
(2) Nikko
これは半分冗談で(実例ですが),今回は「責任」を取り上げます。
日本語の多義語(2)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「責任」
(1) 不祥事・事故を防ぐべく今・これから負うべきもの:responsibility
(2) 起こってしまった不祥事・事故について,責められるべきであること:fault, blame, responsibility
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「誰のせいだ」の「せい」は(2)ですね。「責務,職責」といったらresponsibilityになります。
It is one's responsibility to-V. で「Vするのはoneの責任だ」と言えます。
ただし,responsibilityは今一度調べた上で,(2)にも書きました。なぜなら
S is responsible for O. と言った場合,
「Oという困った事態の責任がSにある」「Oという喜ばしい事態はSのおかげだ」という意味に使えるからです。たとえば
Is human development responsible for global warming?「人類の発展は地球温暖化の原因と言えるのか(=地球温暖化の原因として人類の発展は非難されるべきか)?」
といった言い方ができます。
faultも(2)ですが,重要なのは
It’s my fault.「これは私の責任です(=私が悪いのです)」
It’s not your fault.「これはあなたの責任ではない(=あなたが悪いのではない)」
blameも名詞用法がありますが,
動詞用法を紹介しておきます。
blame 事態 on 人=blame 人 for 事態「事態のことで人を非難する」
He blamed it on me.=He blamed me for it.「彼はそれを私のせいにした」
criticizeはblameの右側の用法が取れます。
He criticized me for it.「彼はそのことで私を非難した」
受け身も重要ですね。
I was criticized for it.「私はそのことで非難された」
I was criticized for being lazy.「私は怠け者だということで非難された」
accuseはforのところをofにします。
accuse 人 of 事態「事態のことで人を告発する・非難する」
『ウィズダム英和辞典』によると「告発する」といっても裁判所に訴えるという意味とは限らないそうです。
例えば世間に公表して訴える場合は法的告訴ではないですね。
最後に,in chargeを紹介しておきます。
S is in charge (of O).「Sが(Oを)任されている(管理する責任がある)」
Who is in charge?「誰が責任者か?」
私の大好きな『アメリカン・ギャングスター』の中で,バンピー・ジョンソンが家電量販店の中で倒れて,フランク・ルーカスが慌てて救急車を呼ぼうとし,
Nobody here!?「誰もいないのか!?」と叫ぶのに対し,バンピーが
Nobody is in charge.「責任者なんていないのさ」と呟くシーンが印象的でした。
総合索引はこちら!